処遇改善加算の実績報告書の書き方|賃金改善額の計算と提出時の注意点を大阪の税理士が解説
「処遇改善加算はもらっているけれど、年に一度の実績報告書の出し方がよくわからない」「賃金改善額の計算が合っているか不安」——就労継続支援や放課後等デイサービス、グループホームを運営されている方から、毎年この時期になるとよくいただくご相談です。実績報告書は、受け取った加算をきちんと職員の賃金改善に使ったことを証明する大切な書類で、提出を怠ると加算の返還につながることもあります。この記事では、実績報告書の中身と賃金改善額の考え方、提出時の注意点を、障害福祉専門の税理士がわかりやすく解説します。
そもそも処遇改善加算の実績報告書とは
福祉・介護職員等処遇改善加算は、職員の賃金を引き上げるために国から事業所へ支給される加算です。令和6年度の報酬改定で、それまでの「福祉・介護職員処遇改善加算」「特定処遇改善加算」「ベースアップ等支援加算」の3つが「福祉・介護職員等処遇改善加算」に一本化され、加算率に応じてⅠ〜Ⅳの区分に整理されました。
この加算には、「受け取った加算額以上を、実際に職員の賃金改善に使う」という大原則があります。本当にその通りに使ったかを年度終了後に行政へ報告するのが実績報告書です。つまり、年度のはじめに出す「計画書」とセットになっており、計画どおり賃金改善を行えたかを事後に証明する位置づけになります。
報告を提出しなかったり、賃金改善額が加算額に届いていなかったりすると、加算の一部または全部を返還しなければならないことがあります。「もらって終わり」ではない点が、処遇改善加算のもっとも注意すべきところです。
提出期限と提出先
実績報告書の提出期限は、原則として年度終了後の7月末です。大阪府の場合、令和6年度分の提出期限は令和7年7月31日とされていました。年度ごとに期限が設定されるため、毎年7月末を一つの目安にしておくとよいでしょう。
提出先と提出方法は、事業所の指定権者によって異なります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提出先 | 大阪府/中核市(東大阪市・八尾市・堺市など)の指定権者 |
| 提出方法 | 大阪府は行政オンラインシステム(電子申請)が原則 |
| 提出時期 | 原則として年度終了後の7月末まで |
| 主な様式 | 別紙様式3(加算を算定した事業所用)など |
東大阪市や八尾市のように市が指定権者となる中核市では、提出先や細かい様式が大阪府と異なる場合があります。必ず自社の指定権者のホームページで最新の様式と期限を確認してください。郵送や持ち込みを廃止し、オンライン申請のみとしている自治体も増えています。
実績報告書で最も大切な「賃金改善額」の考え方
実績報告書の核心は、「賃金改善所要額(実際に賃金を増やした額)が、受け取った加算総額以上になっているか」という点です。考え方はシンプルで、次の関係が成り立っていれば原則として問題ありません。
賃金改善所要額 ≧ 加算として受け取った総額
賃金改善額に含められるもの
賃金改善額は、基準となる年度(前年度など)と比べて、職員の賃金がいくら増えたかで計算します。次のものが含められます。
- 基本給・各種手当の引き上げ分
- 賞与・一時金の増額分
- ベースアップ(基本給そのものの底上げ)分
- 賃金を引き上げたことに伴って増えた法定福利費の事業主負担分(社会保険料・労働保険料の増加分)
特に最後の法定福利費の事業主負担増加分は計上を忘れやすいポイントです。賃金を上げると社会保険料の会社負担も増えるため、その増加分も賃金改善額に算入できます。
賃金改善額に含められないもの
一方で、次のようなものは賃金改善額として認められません。
- 加算とは関係なく、もともと予定していた定期昇給分(自治体の取扱いによる)
- 役員や対象外の職種への支給(加算の対象職員かどうかの確認が必要)
- 賃金以外の福利厚生費や備品購入費など
「人を増やしたから人件費総額は増えた」というのは賃金改善ではありません。あくまで一人ひとりの賃金が改善されたかで判断される点に注意が必要です。
税理士が実績報告で必ず確認する3つのポイント
私たちが顧問先の実績報告をサポートするとき、特に次の3点を重視しています。
①加算収入と賃金改善額の差額が出ていないか
受け取った加算額より賃金改善額が少ないと、その差額は返還対象になります。年度の途中で「このペースだと加算を使い切れない」とわかれば、賞与や一時金で配分するなど早めの対応が可能です。実績報告の段階で初めて気づくと手遅れになりがちなので、期中から加算収入と賃金改善のバランスを月次で把握しておくことが大切です。
②賃金台帳と報告内容が一致しているか
実績報告書の数字は、給与計算の結果である賃金台帳と一致していなければなりません。手当の名称や支給対象者がずれていると、行政からの問い合わせや指摘につながります。会計・給与のデータと報告書を突き合わせて検証します。
③配分ルール(職種間の要件)を満たしているか
一本化後の加算でも、職種間の配分に関するルールが設けられています。対象となる職員に適切に配分されているか、特定の職種に偏りすぎていないかを確認します。要件は改定で見直されることがあるため、最新の通知に沿っているかのチェックが欠かせません。
まとめ
処遇改善加算の実績報告書について、ポイントを整理します。
- 実績報告書は、受け取った加算を賃金改善に使ったことを証明する書類
- 提出期限は原則として年度終了後の7月末、提出先・様式は指定権者ごとに確認
- 核心は「賃金改善所要額 ≧ 加算総額」を満たすこと
- 賃金改善額には法定福利費の事業主負担増加分も含められる
- 期中から加算収入と賃金改善のバランスを把握し、使い残しによる返還を防ぐ
処遇改善加算は職員の待遇を支える大切な制度ですが、報告と管理を誤ると返還リスクが生じます。毎月の給与計算・会計と一体で管理しておくことが、安心して加算を活用する近道です。
制度を確認できる公的機関のリンク
- 福祉・介護職員の処遇改善(厚生労働省)
- 介護職員等処遇改善加算 申請方法・申請様式(厚生労働省)
- 令和6年度 福祉・介護職員等処遇改善加算(大阪府)
- 令和6年度 福祉・介護職員処遇改善実績報告書の提出について(大阪府)
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