就労継続支援B型の経営数値ベンチマーク|売上・利益率・人件費率の目安と改善策
「うちのB型事業所、他と比べてどうなんだろう?」「利益率が低い気がするけど、これが普通なの?」――就労継続支援B型を運営する経営者からよくいただく質問です。B型は基本報酬の単価が低く、利用者の体調変動で出席率も読みにくいため、安定した黒字経営には数値の見える化が欠かせません。
本記事では、就労継続支援B型事業所の経営数値ベンチマーク(業界目安)と、赤字傾向の事業所が見直すべき改善ポイントを、大阪の障害福祉専門税理士が解説します。
就労継続支援B型の経営数値ベンチマーク
定員20名の単独事業所をモデルケースとして、目安となる経営数値をまとめます(顧問先の傾向・公的統計を参考にした目安)。
| 項目 | 目安(健全水準) | 赤字傾向の事業所 |
|---|---|---|
| 月間売上(給付費+加算) | 250万〜350万円 | 200万円以下 |
| 営業利益率 | 5〜15% | 赤字〜0% |
| 人件費率(売上比) | 60〜70% | 75%超 |
| 家賃比率(売上比) | 5〜10% | 15%超 |
| 月間利用率(出席率) | 75〜90% | 65%未満 |
| 1人あたり平均工賃(月額) | 16,000〜25,000円 | 10,000円未満 |
※工賃は厚生労働省「就労継続支援B型事業所における工賃の状況」の全国平均(直近公表値で月額約17,000円)を参考にしています。
月間売上の構造|基本報酬+加算+生産活動収入
B型事業所の売上は、大きく3つに分かれます。
- 基本報酬:定員規模・職員配置の状況・平均工賃月額区分により決定
- 各種加算:処遇改善加算・就労移行支援体制加算・目標工賃達成指導員配置加算など
- 生産活動収入:作業所として受託・自主製作した商品・サービスの売上
令和6年度報酬改定で基本報酬の算定区分が見直され、平均工賃月額が高い事業所ほど基本報酬が高くなる仕組みは継続されています。工賃向上は加算の獲得だけでなく、基本報酬そのものを引き上げる効果があります。
人件費率が高すぎる事業所の共通点
赤字傾向のB型事業所で最もよく見られるのが、人件費率75%超のケースです。原因は次の3つに集約されます。
① 利用率が低く、売上が伸びていない
人件費は固定費に近いため、利用率が下がると人件費率が一気に悪化します。利用率65%未満が続く場合、利用者開拓・送迎エリア拡大・新規プログラムの導入を検討します。
② 配置基準を超える人員を抱えている
「手厚い支援を提供したい」という思いから、配置基準を大きく超える職員を雇用しているケースもあります。配置基準+αの人員配置は加算で評価される一方、加算で得られる収入より人件費の方が大きければ収支は悪化します。
③ 常勤比率が高すぎる
常勤職員ばかりだと固定費が高くなります。常勤2割+非常勤8割など、利用ピークに合わせた柔軟な体制を作ることで人件費率を下げられます。
人件費率の詳細な考え方は、障害福祉事業の人件費比率と黒字経営の目安もあわせてご覧ください。
利益率を改善する5つのチェックポイント
| チェック項目 | 具体策 |
|---|---|
| ① 加算の取りこぼし | 福祉専門職員配置等加算・送迎加算・目標工賃達成指導員配置加算など算定可能な加算を全洗い出し |
| ② 基本報酬の区分 | 平均工賃月額の区分を1つ上げる工夫(受注先開拓・単価交渉) |
| ③ 利用率の改善 | 送迎エリアの見直し・体験利用受入・相談支援事業所への営業 |
| ④ 人件費の最適化 | 常勤/非常勤比率の見直し・配置基準+αの根拠確認 |
| ⑤ 固定費の見直し | 家賃・水道光熱費・リース料の年1回再交渉 |
生産活動収支の赤字に注意
B型事業所には生産活動収支を赤字にしてはいけないという基本ルールがあります。生産活動収入から原材料費等の必要経費を差し引いた額が、利用者の工賃に充てられる原資となるためです。生産活動収支がマイナスだと、給付費から工賃を補填することになり、行政から指導を受けることがあります。
生産活動収支の管理は、就労継続支援A型の生産活動収支|赤字回避のための税務的視点でA型の事例を解説しています。B型でも基本的な考え方は同じです。
月次で見るべき5つの指標
毎月の経営会議で必ず確認すべき指標を5つに絞ってお伝えします。
- 月間延べ利用人数(実績)/定員×開所日数(理論値)=利用率
- 給付費収入+加算収入の合計(処遇改善加算の入金タイムラグに注意)
- 人件費(賃金・賞与・法定福利費)の売上比率
- 平均工賃月額(前年同月比)
- 営業利益(売上-原価-販管費)
これらを月次決算でタイムリーに把握できる体制を整えることが、赤字を未然に防ぐ最大のポイントです。月次決算の組み方は、障害福祉事業所の月次決算の組み方でも詳しく解説しています。
まとめ
- 定員20名のB型事業所の月間売上目安は250〜350万円、人件費率60〜70%が健全水準
- 赤字傾向の事業所は利用率の低さ・人員過多・固定費高止まりの3点が共通
- 平均工賃月額の引き上げは基本報酬の区分を押し上げる効果がある
- 生産活動収支は赤字にしないのがB型運営の絶対ルール
- 毎月5つの指標(利用率・売上・人件費率・工賃・利益)を確認することが黒字化への近道
参考資料
就労継続支援B型の経営でお悩みの方へ
Hands On会計事務所では、初回相談を無料で承っております。経営数値の現状診断・加算の取りこぼしチェックなど、大阪府全域の障がい福祉事業者様からのご相談をお待ちしております。
