障害福祉事業の税務調査|調査官が必ず確認する5つのポイントと日頃の備えを税理士が解説

障害福祉事業の税務調査|調査官が必ず確認する5つのポイントと日頃の備えを税理士が解説

「障害福祉は非課税だから、税務調査は関係ない」――そう思っていませんか。実は、障害福祉事業にも税務調査は入ります。法人税・所得税・源泉所得税、そして生産活動があれば消費税と、確認される税目はいくつもあります。「実地指導(運営指導)の準備はしていたけれど、税務調査は想定していなかった」という事業者の方も少なくありません。

この記事では、障害福祉事業の税務調査で調査官が必ず確認する5つのポイントと、日頃からできる備えを、大阪・柏原市の障害福祉専門税理士がわかりやすく解説します。慌てないための「予習」としてお読みください。

目次

税務調査と実地指導は別物|まず違いを押さえる

最初に押さえておきたいのが、税務調査と実地指導(運営指導)はまったくの別物だということです。混同している方が多いので、整理しておきましょう。

項目税務調査実地指導(運営指導)
実施する機関税務署(国税)都道府県・市町村(指定権者)
目的税金が正しく計算・納付されているかの確認報酬の算定や運営基準が適正かの確認
主に見る書類帳簿・請求書・領収書・給与・契約書など個別支援計画・支援記録・人員配置・加算の根拠など
指摘されると修正申告・追徴課税(過少申告加算税など)報酬の返還・指定の取消など

両者は見る視点も担当機関も異なります。実地指導の対策をしていても、税務面の備えは別途必要だと考えておきましょう。

ポイント①売上(給付費)の計上時期|国保連入金との対応

調査官がまず確認するのが、売上(給付費)の計上時期です。障害福祉サービスの報酬は、国保連(国民健康保険団体連合会)から約2か月遅れて入金されます。

ここで問題になりやすいのが、「入金された月に売上を計上していないか」という点です。会計のルールでは、サービスを提供した月(=報酬が確定した月)に売上を計上する(発生主義)のが原則です。入金ベースで処理していると、決算をまたぐ部分で売上の計上時期がずれ、所得が過少だと指摘される可能性があります。サービス提供月と入金月の対応が正しく取れているかは、必ず確認されるポイントです。

ポイント②人件費|役員報酬・親族給与・処遇改善加算の支給

障害福祉事業は人件費の割合が高いため、人件費の中身も重点的に見られます。とくに次の点に注意が必要です。

  • 役員報酬 — 期の途中で勝手に増減していないか(原則は期首から一定期間内に決めた額を継続して支給する必要があります)
  • 親族への給与 — 実際の勤務実態に見合った金額か。働いていない家族に給与を払っていないか
  • 処遇改善加算の支給 — 加算として受け取った収入が、給与・賞与として職員に正しく支給され、源泉徴収されているか

人件費は金額が大きいだけに、ここでの指摘は追徴税額も大きくなりがちです。勤務実態・支給根拠・源泉徴収を、記録とともに整えておきましょう。

ポイント③外注費と給与の区分

送迎やスポット的な支援、清掃などを外部の個人に依頼している場合、その支払いが「外注費」なのか「給与」なのかも確認されます。

実態として雇用に近い働き方(指揮命令を受け、時間も拘束されている)であれば、外注費として処理していても給与と認定されることがあります。給与と認定されると、源泉徴収もれや消費税の仕入税額控除の否認につながります。契約書の有無や働き方の実態を踏まえて、正しく区分しておくことが大切です。

ポイント④現金管理|利用者預り金・実費徴収・小口現金

障害福祉の現場では、利用者からの預り金や実費徴収(食費・教材費・日用品費など)、小口現金を扱う場面が多くあります。調査官は、これらの現金の流れが帳簿と一致しているかを確認します。

  • 利用者預り金が事業の収入と混ざっていないか
  • 実費徴収したお金が、収入として正しく管理されているか
  • 小口現金の出納記録と残高が合っているか

現金は「証拠が残りにくい」分、管理がずさんだと疑念を持たれやすい部分です。預り金は事業のお金と明確に分け、出納帳と領収書をきちんと残しておきましょう。

ポイント⑤消費税|非課税と課税(生産活動)の区分

就労継続支援などで生産活動を行っている場合は、消費税も確認対象になります。サービス報酬は非課税ですが、自主製品の販売や受託作業による生産活動の収入は課税取引です。

  • 非課税の報酬と課税の生産活動収入を、区分して記帳しているか
  • 課税売上が1,000万円を超え、課税事業者になっているのに申告していない、ということはないか

非課税と課税が混在する障害福祉事業では、この区分の誤りが指摘されやすいポイントです。日頃から区分経理を徹底しておきましょう。

日頃からできる3つの備え

税務調査は、いつ来てもおかしくありません。慌てないために、日頃から次の3つを意識しておきましょう。

  1. 帳簿・証憑をきちんと保存する — 請求書・領収書・契約書・給与関係書類などは、法定の保存期間にわたって整理して保管します。
  2. 発生主義で正しく記帳する — 報酬はサービス提供月に計上し、入金とのズレを管理しておきます。
  3. 顧問税理士と定期的に確認する — 月次や決算のタイミングで処理をチェックしておけば、調査の連絡が来ても落ち着いて対応できます。

日々の積み重ねがそのまま備えになります。「調査が来てから慌てる」のではなく、ふだんから整えておくことが何よりの対策です。

まとめ

  1. 税務調査と実地指導は別物。税務面の備えは別途必要です。
  2. 調査官が見る5つのポイントは、①売上の計上時期(国保連入金との対応)②人件費(役員報酬・親族給与・処遇改善)③外注費と給与の区分現金管理(利用者預り金・実費徴収)⑤消費税(非課税と課税の区分)。
  3. 日頃の備えは、帳簿・証憑の保存/発生主義での記帳/税理士との定期確認の3つ。
  4. 現金や人件費など、障害福祉ならではの論点を押さえておけば、調査の連絡が来ても落ち着いて対応できます。

税務調査への対応は、個別の事情で変わります。不安がある場合は、障害福祉に詳しい税理士に早めにご相談ください。

よくある質問(FAQ)

Q. 障害福祉事業にも税務調査は入りますか?

A. 入ります。サービス報酬が非課税でも、法人税・所得税・源泉所得税、生産活動があれば消費税が調査の対象です。実地指導(運営指導)とは別物なので、税務面の備えは別に必要です。

Q. 税務調査と実地指導(運営指導)はどう違いますか?

A. 税務調査は税務署が税金の計算・納付の正しさを確認するもの、実地指導は都道府県・市町村が報酬の算定や運営基準を確認するものです。担当する機関も、見る書類も、指摘されたときの影響も異なります。

Q. 税務調査で調査官が必ず確認するポイントは何ですか?

A. ①売上(給付費)の計上時期(国保連入金との対応)②人件費(役員報酬・親族給与・処遇改善の支給)③外注費と給与の区分④現金管理(利用者預り金・実費徴収)⑤消費税(非課税と課税の区分)の5つです。

Q. 給付費はいつ売上に計上すればよいですか?

A. 入金時ではなく、サービスを提供した月(報酬が確定した月)に計上するのが原則です(発生主義)。国保連からの入金は約2か月遅れるため、入金ベースで処理していると決算をまたぐ部分で計上時期がずれ、指摘されることがあります。

Q. 税務調査に備えて日頃からできることは何ですか?

A. ①帳簿・証憑を法定の保存期間にわたってきちんと保存する②発生主義で正しく記帳する③顧問税理士と月次・決算のタイミングで定期的に確認する、の3つです。


参考資料


障害福祉事業の税務調査対策なら、専門の税理士にご相談ください

Hands On会計事務所は、大阪府柏原市を拠点に、障害福祉事業者(就労継続支援A型・B型、放課後等デイサービス、児童発達支援、グループホームなど)を専門にサポートしている税理士事務所です。日々の記帳・月次チェックから、売上の計上時期・人件費・現金管理・消費税の整備、そして税務調査の立会いまで、現場を知る税理士が一気通貫でお手伝いします。支援員としての現場経験をもとに、専門用語をかみくだいてご説明しますので、税務が苦手な方もご安心ください。個別支援計画AIや予約管理システムといったITツールは顧問先に無償でご提供しており、事務負担の軽減にもつながります。柏原市・八尾市・東大阪市・藤井寺市・羽曳野市・松原市・大阪市・堺市をはじめ大阪府全域に対応し、初回相談は無料です。まずはお気軽にお問い合わせください。


執筆・監修:Hands On会計事務所(税理士事務所/大阪府柏原市)

障害福祉事業者(就労継続支援A型・B型、放課後等デイサービス、児童発達支援、グループホームなど)の税務・会計・加算を専門に支援する税理士事務所です。最終更新日:2026年6月16日

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