処遇改善手当は非課税?税金はいくら引かれる?|早見表つきで税理士が解説

処遇改善手当は非課税?税金はいくら引かれる?|早見表つきで税理士が解説

「処遇改善手当が支給されたのに、思ったより手取りが増えていない」「加算分は非課税だと聞いたけれど本当?」——処遇改善手当をめぐっては、支給を受けた職員の方からも、説明する立場の管理者の方からも、こうした疑問をよくいただきます。この記事では、処遇改善手当が課税対象なのか非課税なのか、額面からいくら引かれて手取りがいくらになるのかを、額面別の早見表つきで整理します。結論として、処遇改善手当は非課税ではなく通常の給与と同じ「給与所得」で、額面10万円なら手取りはおおむね8万円前後になります。

なお、事業所として加算の経理処理・源泉事務・売上計上のしかたを知りたい方は、「処遇改善加算を支給する事業所の経理」をご覧ください。この記事は手当を受け取る側から見た税金と手取りに絞った内容です。

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目次

処遇改善手当は非課税ではないの?

処遇改善手当は非課税ではありません。処遇改善手当とは、福祉・介護職員等処遇改善加算(以下、処遇改善加算)で事業所が受け取った加算額を原資として職員に支給する手当のことであり、受け取る職員にとっては通常の給与と同じ給与所得です。

この論点でお困りではありませんか?

手当を支給する事業所の方へ。毎月の上乗せにするか一時金にするかの設計と、職員の方へ配る説明資料づくりを、支給する側の立場でお手伝いします。

「加算分だから非課税」「国からの補助金だから所得税はかからない」ということは一切ありません。名目が「処遇改善手当」「福祉手当」「賃金改善手当」のいずれであっても、給与として支払われる以上、次の控除がすべて発生します。

  • 源泉所得税(毎月の給与から天引き)
  • 住民税(翌年6月からの特別徴収額に反映)
  • 健康保険料・介護保険料(40歳以上)・厚生年金保険料
  • 雇用保険料

非課税とされる手当は、通勤手当のうち一定額以下の部分や出張旅費など、所得税法で明確に定められたものに限られます。処遇改善手当はそのいずれにも当たりません。

処遇改善手当は課税対象になる?

処遇改善手当は課税対象です。所得税・住民税の課税対象になるだけでなく、健康保険・厚生年金・雇用保険の保険料を計算する報酬にも含まれます。 事業所が受け取る処遇改善加算そのものは介護給付費等の「報酬」ですが、それを原資に職員へ支払った時点で給与になり、源泉徴収の対象になります。

課税対象になるかどうかは、次のように整理すると迷いません。

場面誰のお金か税務上の扱い
国保連から事業所へ加算が入金される事業所の収入事業所の売上(給付費)。社会福祉事業として行うものは消費税は原則非課税
事業所が職員へ手当・一時金として支給する職員の収入給与所得として課税。所得税・住民税・社会保険料の対象
事業所が「補助金だから」と非課税で渡すそのような取扱いは認められない

職員から「処遇改善手当は非課税ですか?」と聞かれたときに、「給与と同じ扱いで課税対象です」とその場で説明できるようにしておくと、支給後のトラブルを防げます。

処遇改善手当から税金はいくら引かれる?|額面別の手取り早見表

処遇改善手当は、額面のおよそ2割が社会保険料と所得税として引かれ、手取りは額面の8割前後になるのが目安です。額面10万円の手当なら、手取りは約8万900円です。 額面別の目安は次のとおりです。

手当の額面社会保険料(本人負担・概算)源泉所得税(概算)手取りの概算翌年の住民税(概算)
3万円約4,400円約1,300円約2万4,300円約2,600円
5万円約7,400円約2,200円約4万400円約4,300円
10万円約1万4,800円約4,300円約8万900円約8,500円
15万円約2万2,200円約6,500円約12万1,300円約1万2,800円
20万円約2万9,700円約8,700円約16万1,600円約1万7,000円
30万円約4万4,500円約1万3,000円約24万2,500円約2万5,600円

※前提:大阪府の協会けんぽ加入・40歳未満・扶養親族なし・源泉所得税率5%(復興特別所得税込みで5.105%)の職員を想定した概算です。社会保険料率は、健康保険10.13%(全国健康保険協会 大阪支部・令和8年度)、子ども・子育て支援金0.23%(令和8年4月から・全国一律)、厚生年金保険18.3%(日本年金機構・平成29年9月以降固定)、雇用保険の労働者負担5/1000(厚生労働省・令和8年度・一般の事業)をもとに、健康保険・子ども・子育て支援金・厚生年金は労使折半で計算しています。住民税は所得割約10%で概算し、翌年6月以降に別途かかります。保険料率は年度ごとに改定されるため、最新の料率は各機関の公表資料でご確認ください。

実際の金額は、本人の所得・扶養状況・年齢(40歳以上は介護保険料が加わり、本人負担はおおむね0.8ポイント増えます)で変わります。所得が高く所得税率が10%以上の区分に入る職員は、引かれる割合がさらに大きくなります。

このように、額面がそのまま手取りになるわけではありません。支給の前に「額面と手取りは違う」ことを伝えておくだけで、「増えた実感がない」という不満をかなり抑えられます。

現場から見ると|支援員だったときは自分で計算していました

私自身、支援員として働いていたころは、処遇改善手当から何がいくら引かれるのかを自分で計算して把握していました。とはいえ、これは職員全員に求められることではありません。

税理士として関与している事業所では、給与明細で内訳がきちんと示されているため、「手当が出たのに手取りが増えない」というご質問を受けたことはほとんどありません。逆に多いのは、年末調整の時期に「去年より還付額が少ないのはなぜか」というご質問です。手当の支給額が増えれば、その年に納める所得税も増えるため、月々の源泉徴収額との差である還付額は小さくなります。

手当の金額そのものより、明細で内訳が見えているかどうかが、職員の方の納得感を大きく左右します。

何がいくら引かれる?|社会保険料・所得税・住民税の内訳

処遇改善手当から引かれるのは、社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険、40歳以上は介護保険)、源泉所得税、そして翌年の住民税の3種類です。 額面10万円の手当を例にすると、内訳は次のようになります。

項目料率(本人負担分)額面10万円の場合差し引かれるタイミング
健康保険料約5.07%(大阪府10.13%の折半)約5,070円支給月の給与
子ども・子育て支援金0.115%(全国一律0.23%の折半)約120円支給月の給与
厚生年金保険料9.15%(18.3%の折半)約9,150円支給月の給与
雇用保険料0.5%(労働者負担5/1000)約500円支給月の給与
源泉所得税5.105%(税率5%の区分)約4,300円支給月の給与
住民税所得割 約10%約8,500円翌年6月以降

出典:全国健康保険協会(令和8年度 都道府県毎の保険料率)、日本年金機構(厚生年金保険料額表)、厚生労働省(令和8年度の雇用保険料率)、国税庁。子ども・子育て支援金(全国一律0.23%・労使折半)は令和8年4月分から加わるもので、介護保険料と違って年齢の要件がなく、40歳未満の職員にも発生します。 40歳以上65歳未満の職員は、これに加えて介護保険料(全国一律1.62%の折半)が加わります。

注意していただきたいのは、住民税は「翌年」に効いてくるという点です。今年たくさん手当を受け取ると、翌年6月からの住民税が上がります。年度をまたいで手取りが変動する理由を先に伝えておくと、翌年の問い合わせが減ります。

処遇改善手当で社会保険料は上がる?

処遇改善手当を毎月の給与に上乗せして受け取ると、標準報酬月額の等級が上がり、翌年以降の健康保険料・厚生年金保険料が継続的に増えることがあります。一方、賞与(一時金)でまとめて受け取る場合は標準報酬月額に影響しません。 手当そのものから保険料が引かれるだけでなく、「その後の保険料水準まで変わる」点が見落とされがちです。

とくに影響が大きいのが4月・5月・6月です。この3か月の支給額の平均で9月以降1年間の標準報酬月額が決まる(定時決定)ため、この時期に大きな手当が集中すると、その後1年間の社会保険料が上がります。

月給25万円の職員が年間60万円を受け取る場合で、支給方法を比べてみます。

項目毎月に上乗せ(月5万円×12回)賞与でまとめて(年2回・各30万円)
額面の増加+60万円+60万円
本人の社会保険料 増(概算)約9万円約9万円
所得税 増(税率5%・概算)約2.5万円約2.5万円
その年の手取り増(概算)約48万円約48万円
標準報酬月額への影響上がりやすい(翌年以降の社会保険料が継続的に増える)影響しない
事業所側の手続き通常の給与処理支給のつど「賞与支払届」を年金事務所へ提出

1年単位で見た手取りはどちらもほとんど変わりませんが、翌年以降の社会保険料への影響が異なります。ただし厚生年金の保険料が増えれば将来受け取る年金額も増えるため、一概にどちらが得とは言えません。誰にどの方法で配るかの考え方は「処遇改善加算の配分方法」で詳しく解説しています。

なお、事業所側も同じだけ社会保険料を折半で負担します。事業主負担分をどこから出すかの設計は「処遇改善加算を支給する事業所の経理」にまとめています。

処遇改善手当で扶養から外れることはある?

配偶者の扶養の範囲で働くパート職員が処遇改善手当を受け取ると、年収によっては社会保険の扶養から外れたり、本人に所得税が発生したりします。 いわゆる「年収の壁」は2025年から2026年にかけて大きく見直されているため、古い基準のまま説明しないよう注意が必要です。

年収のめやす誰に効く壁か何が起きるか
106万円社会保険(本人)一定の要件(週の所定労働時間20時間以上、従業員51人超の企業、学生でないことなど)を満たすと、本人が勤務先の社会保険に加入する。月額8.8万円(年約106万円)の賃金要件は、年金制度改正法により2026年10月に撤廃される予定
130万円社会保険(本人)配偶者などの被扶養者から外れ、自分で社会保険に加入する(60歳以上・障害者は180万円)
160万円所得税(本人)本人に所得税が発生し始める。令和7年度税制改正で基礎控除(最大95万円・国税庁 No.1199)と給与所得控除(最低65万円・国税庁 No.1410)が引き上げられ、従来の「103万円の壁」から上昇した
160万円所得税(配偶者側)配偶者の給与収入がこれ以下なら、扶養する側(合計所得金額900万円以下の場合)が満額38万円の配偶者特別控除を受けられる
約201万円所得税(配偶者側)配偶者の給与収入がこれを超えると、配偶者特別控除がゼロになる

出典:所得税の基準は国税庁(No.1199 基礎控除・No.1410 給与所得控除・No.1195 配偶者特別控除)、106万円・130万円は厚生労働省・日本年金機構。制度改正が続いているため、最新の基準は必ず公的機関の資料でご確認ください。

実務上とくに影響が大きいのは130万円の壁(社会保険の被扶養者)です。年間の見込み年収が130万円に近いパート職員がいる場合は、支給前に本人の意向を確認し、扶養内に収めたいのであれば勤務時間や支給方法の調整を検討しましょう。

年末調整では何を精算する?

処遇改善手当を含む給与・賞与は、12月の年末調整でその年の給与すべてと合算し、所得税を精算します。 年度の途中で加算区分が変わるなどして給与が大きく増えた職員は、追徴・還付の金額が大きくなりがちです。

  • 賞与で一括支給を受けた職員は、毎月の源泉徴収だけでは税額が不足しがちで、年末調整で追徴になりやすい
  • 産休・育休などで賞与の支給時に在籍していなかった職員は、還付が出やすい
  • 令和8年6月施行の報酬改定で加算の原資が増えた事業所では、前年より支給額が増え、差額が拡大しやすい

令和8年6月施行の報酬改定では加算の対象職員が障害福祉従事者全体へ拡大しているため、これまで手当の対象外だった職種の方も対象になっている可能性があります。改定の全体像は「令和8年度の障害福祉報酬改定」をご覧ください。

ここまでは手当を受け取る職員の側から見た精算の話ですが、事業所として年末調整の実務をどう進めるか——障害者控除・扶養控除の適用もれ、中途入社の職員の前職分の合算、書類をいつまでに集めるか——は、障害福祉事業所の年末調整で気をつける5つのことに手順としてまとめています。

「手取りが増えない」と言われないための3つの備え

支給後の不満やトラブルは、事前の準備でほとんど防げます。次の3つを実行してください。

  1. 支給前に「額面と手取りの目安」を文書で示す:上の早見表のような形で、額面いくらならおよそいくら手元に残るのかを配布資料に載せます。口頭説明だけだと後で食い違いが生じます。
  2. 扶養内で働く職員には個別に事前確認する:年間の見込み収入を本人と一緒に計算し、130万円・160万円の基準を超えるかどうかを支給前に確認します。
  3. 住民税と年末調整のタイミングを説明しておく:住民税は翌年6月から上がること、年末調整で追徴が出る可能性があることを、支給の案内に1行添えます。

支給方法(毎月か賞与か)の設計は、職員の手取り・事業所の社会保険料負担・加算の実績報告のすべてに影響します。判断に迷う場合は、障害福祉に強い税理士に相談しながら決めると安心です。

まとめ

処遇改善手当と税金・手取りのポイントは、次の5点です。

  1. 処遇改善手当は非課税ではなく給与所得で、所得税・住民税・社会保険料・雇用保険料がすべて発生します。
  2. 額面のおよそ2割が引かれ、手取りは額面の8割前後です(額面10万円なら手取り約8万900円)。
  3. 住民税は翌年6月から上がるため、支給した年と翌年で手取りの変化が生じます。
  4. 毎月の上乗せは標準報酬月額に影響し、翌年以降の社会保険料が本人・事業所ともに増えます。とくに4月から6月の支給設計に注意が必要です。
  5. 扶養内のパート職員は年収の壁(とくに130万円)を超えないか事前に確認します。所得税の壁は令和7年度税制改正で160万円に引き上げられています。

手取りや社会保険料への影響は、支給方法と本人の状況で大きく変わります。個別の設計に迷う場合は、障害福祉に強い税理士にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

Q. 処遇改善手当は非課税ですか?

A. 処遇改善手当は非課税ではありません。処遇改善手当は職員にとって給与所得であり、所得税・住民税・社会保険料・雇用保険料のすべてが対象になります。「加算分だから」「補助金だから」といった理由で非課税になることはありません。

Q. 処遇改善手当から税金はいくら引かれますか?

A. 処遇改善手当は、額面のおよそ2割が社会保険料と所得税として引かれ、手取りは額面の8割前後が目安です。額面10万円の処遇改善手当なら、手取りはおおむね8万900円程度です。所得が高い職員ほど所得税率が上がり、引かれる割合は大きくなります。

Q. 処遇改善手当は課税対象ですか?

A. 処遇改善手当は課税対象です。事業所が受け取る処遇改善加算そのものは介護給付費等の報酬ですが、職員に支給した時点で給与所得となり、源泉徴収の対象になります。補助金として非課税で渡す方法はありません。

Q. 処遇改善手当をもらうと社会保険料は上がりますか?

A. 毎月の給与に上乗せして処遇改善手当を受け取る場合は、標準報酬月額の等級が上がり、翌年以降の健康保険料・厚生年金保険料が継続的に増えることがあります。とくに4月から6月の支給額は9月以降1年間の保険料を左右します。賞与でまとめて受け取る場合は標準報酬月額には影響しません。

Q. パート職員に処遇改善手当を払うと扶養から外れますか?

A. 年収によっては外れます。社会保険の被扶養者は年収130万円(60歳以上・障害者は180万円)が目安です。所得税の壁は令和7年度税制改正で従来の103万円から160万円に引き上げられました。扶養する側が満額38万円の配偶者特別控除を受けられるのは、その方の合計所得金額が900万円以下の場合です。最新の基準は国税庁の資料でご確認ください。


参考資料


処遇改善手当の支給方法や職員への説明でお悩みなら、専門の税理士にご相談ください

Hands On会計事務所は、大阪府柏原市を拠点に、障害福祉事業者(就労継続支援A型・B型、放課後等デイサービス、児童発達支援、グループホームなど)を専門にサポートしている税理士事務所です。処遇改善手当の支給方法の設計(毎月の上乗せか賞与か)、額面と手取りの試算、職員向け説明資料の作成、扶養内パート職員への影響確認、事業主負担分を含めた原資の配分計画、賃金改善計画書・実績報告書の作成支援まで、現場を知る税理士が一気通貫でお手伝いします。支援員としての現場経験をもとに、専門用語をかみくだいてご説明しますので、税務が苦手な方もご安心ください。個別支援計画AIや予約管理システムといったITツールは顧問先に無償でご提供しており、事務負担の軽減にもつながります。柏原市・八尾市・東大阪市・藤井寺市・羽曳野市・松原市・大阪市・堺市をはじめ大阪府全域に対応し、初回相談は無料です。まずはお気軽にお問い合わせください。

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執筆・監修:税理士 栗谷川 雄介(登録番号 第157826号)/Hands On会計事務所(税理士事務所・大阪府柏原市)

障害福祉事業者(就労継続支援A型・B型、放課後等デイサービス、児童発達支援、グループホームなど)の税務・会計・加算を専門に支援する税理士事務所です。最終更新日:2026年8月8日

執筆者:税理士 栗谷川 雄介(登録番号 第157826号)/Hands On会計事務所

障害福祉に携わって通算10年。障害福祉を専門とする税理士法人で6年間、事業所の税務・会計を担当したのち、就労継続支援B型・生活介護の多機能型事業所に4年間勤務しました。目標工賃達成指導員として支援記録の整備・国保連への請求・実地指導対応・経理を担当し、見守り支援や利用者の送迎にも携わっています。2025年10月にHands On会計事務所を開業しました。

国保連への請求が現場でどう回っているのか、実地指導の当日までに何が起きるのか、経営者や職員がどう動いているのか——税務を担当していたときには見えなかったことを、内側から4年間経験しています。制度の解説だけでなく、現場で実際に何が起きているかを踏まえてお答えできるのが強みです。

大阪府柏原市を拠点に、就労継続支援・放課後等デイサービス・児童発達支援・グループホームの税務・会計・加算を専門に支援しています。大阪府全域対応/初回相談は無料です。障害福祉専門の税理士事務所についてご相談はこちら

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