障害福祉の備品はいくらまで一括経費?|10万・20万・40万円の3ラインを税理士が解説
「タブレットを10台購入したけれど、消耗品費でいい?」「30万円未満なら全額経費になると聞いたけれど、条件は?」——障害福祉事業所の備品購入では、こうしたご相談をよくいただきます。備品の税務処理は、知っているかどうかで節税効果が大きく変わる分野です。結論として、判定のラインは10万円未満・20万円未満・40万円未満の3つで、少額減価償却資産の特例は令和8年4月1日以後に取得等をする資産から30万円未満が40万円未満に引き上げられました。
障害福祉事業所の備品はいくらまで一括で経費にできる?|3つのライン
備品を買ったときの処理は、1つあたりの取得価額に応じて「10万円未満・20万円未満・40万円未満」の3つのラインで決まります。 全体像は次のとおりです。
| 1つあたりの取得価額 | 処理方法 | 経費になるスピード | 償却資産税 |
|---|---|---|---|
| 10万円未満 | 消耗品費などとして全額経費 | 購入年に全額 | 対象外 |
| 10万円以上20万円未満 | 一括償却資産(3年均等償却)※選択制 | 3年で均等 | 対象外 |
| 40万円未満 | 少額減価償却資産の特例(青色申告の中小企業者等・年300万円まで) | 購入年に全額 | 対象 |
| 上記に当てはまらないもの | 固定資産として法定耐用年数で減価償却 | 耐用年数にわたって | 対象 |
「10万円」「20万円」「40万円」の判定は、税抜経理をしている場合は税抜金額、税込経理をしている場合は税込金額で行います。 インボイス登録をして税抜経理をしている事業所であれば、税抜43万円の備品でも税抜金額が40万円以上のため特例は使えませんが、税抜39万円(税込42.9万円)なら特例の対象になります。判定の入口で消費税の経理方式を確認してください。消費税の考え方は「障害福祉サービスの報酬は消費税非課税?」もご覧ください。
少額減価償却資産の特例は40万円未満に引き上げ|いつから変わった?
中小企業者等の少額減価償却資産の特例とは、青色申告をしている中小企業者等が一定額未満の減価償却資産を購入した年に全額を経費(損金)にできる制度です。令和8年4月1日以後に取得等をする資産から、取得価額の基準が30万円未満から40万円未満に引き上げられました(国税庁「令和8年度 法人税関係法令の改正の概要」)。
改正で何が変わり、何が変わらなかったかを整理します。
| 項目 | 令和8年3月31日までの取得等 | 令和8年4月1日以後の取得等 |
|---|---|---|
| 取得価額の基準 | 30万円未満 | 40万円未満 |
| 対象法人(従業員数) | 常時使用する従業員数が500人を超える法人は対象外 | 常時使用する従業員数が400人を超える法人は対象外 |
| 年間の合計限度額 | 年300万円 | 年300万円(据置き) |
| 適用期限 | 令和8年3月31日まで | 3年延長(令和11年3月31日まで) |
出典:国税庁「令和8年度 法人税関係法令の改正の概要」(措法67の5第1項、改正法附則65、措令39の28第1項第1号、改正措令附則20)。改正後の租税特別措置法第67条の5第1項は「平成十八年四月一日から令和十一年三月三十一日までの間に取得し…その取得価額が四十万円未満であるもの」と定めています(e-Gov法令検索)。 個人事業主については、財務省「令和8年度税制改正の大綱」で「所得税についても同様とする」とされています。
判定は「取得等をする日」で行います。 国税庁の資料には、施行日である令和8年4月1日をまたぐ場合は「取得等をする日で、取得価額基準及び対象法人について判定」すると明記されています。事業年度がいつ始まるかは関係ありません。 3月決算でも12月決算でも、令和8年4月1日以後に買った備品は40万円未満で判定し、3月末までに買ったものは30万円未満で判定します。
特例を使うための要件は?|青色申告・中小企業者等・従業員400人以下
少額減価償却資産の特例を使えるのは、青色申告をしている中小企業者等(資本金1億円以下など)で、令和8年4月1日以後の取得等については常時使用する従業員数が400人以下である法人・個人事業主です。
従来は「常時使用する従業員数が500人を超える法人は対象外」でしたが、令和8年4月1日以後の取得等からは400人を超える法人が除外されました。障害福祉事業所の規模でこの人数を超えることは多くありませんが、複数事業所を運営する法人や、社会福祉法人・医療法人グループでは確認が必要です。
年間合計300万円という上限は変わっていません。 基準額が30万円未満から40万円未満に上がったぶん、同じ台数を買っても枠を使い切るのが早くなります。たとえば38万円のタブレット端末を8台購入すると304万円となり、300万円を超える分は通常の減価償却が必要です。期の途中で残り枠を把握しておくことが、これまで以上に重要になりました。
障害福祉事業所でよく買う備品はどのラインに当てはまる?
障害福祉事業所で購入頻度の高い備品を3つのラインに当てはめると、次のようになります。
| 備品の例 | 価格帯の目安 | 当てはまるライン |
|---|---|---|
| 送迎用ドライブレコーダー | 2万円〜5万円 | 10万円未満(消耗品費) |
| 記録用タブレット端末 | 5万円〜15万円 | 10万円未満、または一括償却資産/少額特例 |
| 事務用パソコン | 12万円〜25万円 | 一括償却資産、または少額特例 |
| コピー機・複合機 | 20万円〜35万円 | 少額特例(改正前は30万円未満のため一部は対象外) |
| 業務用エアコン | 25万円〜38万円 | 改正で新たに少額特例の対象になりやすい価格帯 |
| 訓練用機器・福祉用具 | 10万円〜40万円 | 金額に応じて一括償却資産または少額特例 |
| 送迎車両 | 100万円以上 | 通常の減価償却(新車の普通自動車は6年) |
とくに影響が大きいのは、30万円台の備品です。 業務用エアコンやコピー機、訓練用機器はこの価格帯に入ることが多く、改正前は6年から15年かけて償却するしかありませんでした。令和8年4月1日以後の取得であれば、その年に全額を経費にできます。設備の耐用年数と減価償却の考え方は「障害福祉事業所の減価償却と耐用年数」で解説しています。
一括償却資産(20万円未満)と少額特例はどちらが有利?
取得価額が10万円以上20万円未満の資産は、一括償却資産(3年均等償却)と少額減価償却資産の特例のどちらも選べます。この20万円というラインは今回の改正で変更されていません。
判断の軸は次の2つです。
- その年の利益が大きいなら少額特例:購入年に全額を経費にでき、その年の納税額を抑えられます。
- 償却資産税を抑えたいなら一括償却資産:一括償却資産は償却資産税(固定資産税の一種)の対象外です。少額特例で処理した資産は課税対象になるため、備品が多い事業所では差が出ます。
赤字の年に少額特例で一括経費にしても節税効果は薄く、むしろ翌年以降に経費として残しておいたほうが有利な場合もあります。「使えるから使う」ではなく、その年の利益と翌年以降の見込みで選ぶのが基本です。判断に迷う場合は障害福祉に強い税理士にご相談ください。
備品を買う前に確認したい3つのこと
- 取得日が令和8年4月1日以後になるかを確認する:40万円未満で判定できるのは令和8年4月1日以後の取得等だけです。納品や事業供用の時期がまたぐ場合は、契約前にスケジュールを確認します。
- 年300万円の枠の残りを確認する:基準額が上がったぶん、枠を使い切りやすくなっています。期末にまとめ買いをする前に、その期にすでに特例を使った金額を集計します。
- 税抜経理か税込経理かを確認する:判定金額が変わります。とくに40万円前後の備品では、経理方式の違いで特例が使えるかどうかが分かれます。
年度末に利益が多く出ている場合は、40万円未満の備品購入を前倒しすることで節税につながります。ただし、必要のない備品を買っても現金は出ていきます。決算前の確認事項は「障害福祉事業所の決算で税理士がチェックする5つのポイント」もご覧ください。
まとめ
障害福祉事業所の備品・消耗品費のポイントは、次の5点です。
- 判定のラインは10万円未満・20万円未満・40万円未満の3つです。
- 少額減価償却資産の特例は、令和8年4月1日以後に取得等をする資産から40万円未満に引き上げられました(改正前は30万円未満)。
- 判定は「取得等をする日」で行い、事業年度の開始日は関係ありません。
- 年間合計300万円の上限は据置き、対象法人からは常時使用する従業員数が400人を超える法人が除外されました。適用期限は3年延長されています。
- 一括償却資産(10万円以上20万円未満・3年均等)は変更なしで、償却資産税がかからない利点があるため、少額特例との選択は利益状況で判断します。
金額の区切りが変わった直後は判定を誤りやすい時期です。備品の購入計画がある場合は、購入前にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 障害福祉事業所の備品はいくらまで一括で経費にできますか?
A. 1つあたり10万円未満の備品は消耗品費などとして全額その年の経費にできます。さらに青色申告をしている中小企業者等であれば、少額減価償却資産の特例により、令和8年4月1日以後に取得等をする40万円未満の備品を購入年に全額経費にできます(年間合計300万円まで)。
Q. 少額減価償却資産の特例は30万円未満ではないのですか?
A. 令和8年度税制改正により、令和8年4月1日以後に取得等をする減価償却資産から40万円未満に引き上げられました。令和8年3月31日までに取得等をしたものは従来どおり30万円未満で判定します。国税庁のタックスアンサーには改正前の内容が残っている場合があるため、「令和8年度 法人税関係法令の改正の概要」でご確認ください。
Q. 決算期の途中で改正日をまたぐ場合、どちらの金額で判定しますか?
A. 資産を取得等した日で判定します。事業年度の開始日ではありません。たとえば3月決算の法人が令和8年5月に35万円のエアコンを購入した場合、取得日が令和8年4月1日以後のため40万円未満の基準が適用され、その年に全額経費にできます。
Q. 一括償却資産の20万円未満というラインも40万円に変わりましたか?
A. 変わっていません。取得価額が10万円以上20万円未満の資産を3年間で均等に償却する一括償却資産の制度は、今回の改正の対象外です。一括償却資産は償却資産税の対象にならないため、少額減価償却資産の特例と有利なほうを選べます。
Q. 従業員数の要件はありますか?
A. あります。令和8年4月1日以後に取得等をする場合、常時使用する従業員数が400人を超える法人は少額減価償却資産の特例の対象から除外されます(改正前は500人を超える法人が対象外)。あわせて、青色申告をしている資本金1億円以下などの中小企業者等であることも要件です。
参考資料
- 国税庁|令和8年度 法人税関係法令の改正の概要(PDF)
- 財務省|令和8年度税制改正の大綱(中小企業・農林水産業)
- 国税庁|No.2100 減価償却のあらまし
- 国税庁|No.5403 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示
備品購入の税務処理や少額特例の使い方でお悩みなら、専門の税理士にご相談ください
Hands On会計事務所は、大阪府柏原市を拠点に、障害福祉事業者(就労継続支援A型・B型、放課後等デイサービス、児童発達支援、グループホームなど)を専門にサポートしている税理士事務所です。備品・設備の金額判定(10万・20万・40万円のライン)、令和8年4月1日から40万円未満に引き上げられた少額減価償却資産の特例の活用、年300万円の枠の管理、一括償却資産との有利判定、償却資産税を含めた設備投資の設計まで、現場を知る税理士が一気通貫でお手伝いします。支援員としての現場経験をもとに、専門用語をかみくだいてご説明しますので、税務が苦手な方もご安心ください。個別支援計画AIや予約管理システムといったITツールは顧問先に無償でご提供しており、事務負担の軽減にもつながります。柏原市・八尾市・東大阪市・藤井寺市・羽曳野市・松原市・大阪市・堺市をはじめ大阪府全域に対応し、初回相談は無料です。まずはお気軽にお問い合わせください。
執筆・監修:税理士 栗谷川 雄介(登録番号 第157826号)/Hands On会計事務所(税理士事務所・大阪府柏原市)
障害福祉事業者(就労継続支援A型・B型、放課後等デイサービス、児童発達支援、グループホームなど)の税務・会計・加算を専門に支援する税理士事務所です。最終更新日:2026年7月25日
