生活介護の食費は消費税がかかる?|実費徴収の会計処理と食事提供体制加算を税理士が解説
「利用者の方からいただいている食費に、消費税はかかるのだろうか」「食費はいくらまで請求してよいのか」「食事提供体制加算はいつまで算定できるのか」——生活介護を運営されている方から、食事にまつわるお金のご相談をよくいただきます。給付費と違い、食費は事業所が自分で金額を決めて請求するお金だからです。この記事では、生活介護で利用者から受け取る食費について、徴収できる範囲、消費税の区分、帳簿上の処理、そして食事提供体制加算の要件と期限を整理します。結論として、生活介護の食費は「指定生活介護において提供される便宜に要する費用」であり、消費税は非課税と整理するのが基本です。そして徴収できる金額には告示で上限の考え方が定められています。
生活介護の食費(実費徴収)とは?|指定生活介護で提供される便宜に要する費用
生活介護の食費(実費徴収)とは、指定生活介護において提供される便宜に要する費用のうち「食事の提供に要する費用」として、給付費や利用者負担額とは別に、事業者が利用者から受け取ることができる費用のことです。 根拠は指定障害福祉サービス基準(平成18年厚生労働省令第171号)第82条第3項第1号で、事業者が受け取れる費用は次の4つに限定されています。
この論点でお困りではありませんか?
生活介護の食費の設定や消費税の区分に迷う場合は、障害福祉専門の税理士にご相談ください。
| 受け取れる費用(基準第82条第3項) | 内容 |
|---|---|
| (1)食事の提供に要する費用 | 食材料費と調理等に係る費用。金額の考え方は厚生労働大臣が定める指針による(同条第4項) |
| (2)創作的活動に係る材料費 | 創作活動で使う材料の実費 |
| (3)日用品費 | 利用者が日常生活で使う日用品の実費 |
| (4)日常生活においても通常必要となるものに係る費用 | 利用者に負担させることが適当と認められるもの |
(出典:e-Gov法令検索 指定障害福祉サービス基準 第82条)
ここで重要なのは、厚生労働省の解釈通知が「介護給付費等の対象となっているサービスと明確に区分されない曖昧な名目による費用の支払を受けることは認めない」と明示していることです(「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」)。「管理費」「サービス料」といった中身の説明できない名目で徴収することはできません。
手続面も告示で決められています。平成18年厚生労働省告示第545号は、(ア)契約時に利用者またはその家族へ文書で事前に説明、(イ)文書で同意を得る、(ウ)利用料の内容・金額の設定と変更を運営規程に記載し見やすい場所に掲示、を求めています。加えて基準第82条第5項は領収証の交付を求めています。実地指導(運営指導)では、この「説明・同意・掲示・領収証」の4点を確認されます。
生活介護の食費に消費税はかかる?|利用者から受け取る食費は非課税が基本
生活介護で利用者から受け取る食費は、社会福祉事業として行われる資産の譲渡等に含まれるものとして、消費税は非課税と整理するのが基本です。 根拠は次の3つが重なっている点にあります。
- 消費税法別表第二第七号ロは、社会福祉法に規定する社会福祉事業として行われる資産の譲渡等を非課税としています。生活介護を行う障害福祉サービス事業は社会福祉事業(第二種)です。
- 同号ロが非課税から外しているのは「生産活動としての作業に基づき行われるもの」と、消費税法施行令第14条の2第4項が定める「同号イ(介護保険)に該当する資産の譲渡等」の2つだけです。介護保険(同号イ)には「特別な食事の提供」を非課税から外す規定がありますが、障害福祉(同号ロ)にはその種の除外規定がありません。
- 消費税法基本通達6-7-6(1)のなお書きは、「要援護者に対する給食又は入浴等の便宜供与等は生産活動には該当しない」としています。つまり食事の提供は「生産活動」の除外にも当たりません。
国税庁の消費税法基本通達6-7-5(2)チも、別表第二第七号ロによる非課税範囲の第二種社会福祉事業として「障害福祉サービス事業……を経営する事業(生活介護等において生産活動としての作業に基づき行われる資産の譲渡等を除く。)」を挙げており、除かれるのは生産活動の部分だけです。
| 生活介護のお金 | 消費税の区分 | 根拠・考え方 |
|---|---|---|
| 給付費(介護給付費・食事提供体制加算を含む) | 非課税 | 社会福祉事業として行われる資産の譲渡等(消法別表第二七ロ) |
| 利用者から受け取る食費 | 非課税 | 指定生活介護において提供される便宜に要する費用。給食は生産活動に該当しない(消基通6-7-6(1)) |
| 利用者から受け取る創作的活動の材料費・日用品費 | 非課税 | 同上 |
| 生産活動(自主製品の販売など)の収入 | 課税 | 別表第二七ロの括弧書きで明文除外 |
| 職員や来客に有償で提供する食事代 | 課税 | 従業員から徴収する食事代金は課税資産の譲渡等の対価(国税庁 No.6471) |
| 食材料費・給食委託費の支払 | 課税仕入れ | 事業者が仕入れる側の取引 |
つまずきやすいのは、同じ厨房で作った同じ食事でも、利用者に提供する分は非課税、職員に有償で提供する分は課税になる点です。職員食を実費で徴収している事業所は、帳簿上で分けておく必要があります。なお、契約書・請求書の書き方によって判断が変わる場面もあり得ますので、迷う場合は所轄の税務署または顧問税理士にご確認ください。
生活介護の食費はいくらまで徴収できる?|低所得者等は食材料費相当額まで
生活介護の食費として徴収できる金額は、原則として「食材料費及び調理等に係る費用に相当する額」を基本とし、通所している低所得者等については「食材料費に相当する額」までとされています。 これは平成18年厚生労働省告示第545号「食事の提供に要する費用、光熱水費及び居室の提供に要する費用に係る利用料等に関する指針」の二のイに定められたルールです。
| 利用者の区分 | 徴収できる食費の考え方 |
|---|---|
| 一般(下記以外の利用者) | 食材料費 + 調理等に係る費用に相当する額を基本とする |
| 低所得者等(通所の利用者。施設入所支援を受ける者を除く) | 食材料費に相当する額とする |
(出典:平成18年厚生労働省告示第545号 二 イ)
ここでいう「低所得者等」とは、生活保護を受給している世帯、市町村民税非課税世帯、そして市町村民税所得割の合算額が16万円未満の世帯を指します。低所得者等の方については、調理員の人件費など「調理等に係る費用」を食費に上乗せして請求することはできません。 その分を報酬側で評価するのが、次に説明する食事提供体制加算です。
⚠️ 16万円と28万円を取り違えないでください。 告示の条文は「所得割の合算額が28万円未満(特定支給決定障害者にあっては16万円未満)」と書かれていますが、生活介護に通う利用者は入所施設・療養介護の利用者を除いた障害者にあたり、原則としてこの「特定支給決定障害者」に該当します(障害者総合支援法施行令第17条第4号)。生活介護で当てはめる数字は16万円未満で、28万円は障害児や20歳未満の入所者向けです。該当・非該当は受給者証の負担上限月額の区分でご確認ください。
実務で大切なのは、根拠を説明できる形で単価を組み立て、定期的に見直すことです。仕入価格が上がっているのに徴収額を据え置けば差額は事業所の持ち出しになり、実費とかけ離れて高ければ実地指導で説明ができません。徴収額を変えるときは、運営規程の変更・掲示の差し替え・利用者への説明と同意の取り直しがセットで必要です。
なお、共同生活援助(グループホーム)の解釈通知には「あらかじめ徴収した食材料費に残額が生じた場合は精算して利用者に返還する等、適正に取り扱う必要がある」という規定がありますが、生活介護(基準第82条)の解釈通知には同じ文言は置かれていません。とはいえ、告示が「食材料費に相当する額」と定めている以上、実費と大きく離れた金額を取り続けることは説明が難しくなります。収支の記録を残しておくことをおすすめします。
生活介護の食費の会計処理はどうする?|収益に計上し、預り金にはしない
生活介護の食費は利用者への食事の提供という役務の対価ですので、預り金ではなく事業収益として、食事を提供した月に発生主義で計上します。 給付費が国保連から約2か月遅れで入金されるのと同じで、食費についても「請求した月」ではなく「提供した月」に売上を立てるのが原則です。
会計処理でおさえたいのは次の4点です。
| 論点 | 処理のしかた |
|---|---|
| 収益計上 | 「利用者負担金収入」など給付費とは別の科目を立て、食費・創作的活動材料費・日用品費を混ぜない |
| 預り金との違い | 食費は事業所が受け取る対価であり、利用者の年金や工賃を管理する預り金とは性質が違う。同じ通帳・同じ科目で扱わない |
| 食材料費・給食委託費 | 課税仕入れになるが、非課税売上(食費)に対応する課税仕入れ。課税事業者が個別対応方式を採る場合、「非課税売上げにのみ要する課税仕入れ」は仕入税額控除の対象になりません(国税庁 No.6401) |
| 課税売上割合への影響 | 食費は非課税売上なので、課税売上割合の計算では分母にだけ入る。生活介護の生産活動や、就労継続支援B型などとの多機能型で生産活動の売上がある事業所は、課税売上割合が下がる要因になる |
免税事業者の判定については、食費は非課税売上ですので、基準期間の課税売上高(1,000万円の判定)には含めません。生産活動の売上などほかに課税売上がない法人であれば、食費をいくら受け取っても課税事業者にはならないのが通常です。障害福祉事業全体の消費税の考え方は「障害福祉事業の消費税まるわかり」で解説しています。
食事提供体制加算とは?|生活介護は1日30単位・令和9年3月31日までの経過措置
食事提供体制加算とは、生活保護受給世帯・市町村民税非課税世帯・市町村民税所得割16万円未満の世帯といった低所得者等の利用者に対して、事業所の責任で食事提供の体制を整えて食事を提供した場合に、1日につき所定単位数を算定できる加算です。 生活介護の場合は1日につき30単位で、令和9年3月31日までの経過措置とされています(令和6年こども家庭庁・厚生労働省告示第3号/厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 単位数 | 生活介護など通所系は1日30単位、短期入所・宿泊型自立訓練は1日48単位 |
| 対象サービス | 生活介護、短期入所、自立訓練(機能訓練・生活訓練)、就労選択支援、就労移行支援、就労継続支援A型・B型 |
| 対象となる利用者 | 低所得者等(生活保護受給世帯・市町村民税非課税世帯・市町村民税所得割16万円未満の世帯)に限られ、利用者全員ではありません。 告示の「28万円未満」は障害児や20歳未満の入所者に適用される数字で、生活介護の通所利用者には当てはめません |
| 期限 | 令和9年3月31日までの経過措置(令和6年度改定で令和6年3月31日から3年延長) |
| 算定できない日 | 利用者が施設入所支援を利用している日(補足給付が支給されるため) |
令和6年度改定で、従来の要件に次の3つが追加されました。この3つにすべて適合している必要があります。
- 事業所の従業者として、または外部との連携により、管理栄養士または栄養士が食事の提供に係る献立を確認していること。
- 食事の提供を行った場合に、利用者ごとの摂食量を記録していること。
- 利用者ごとの体重またはBMIをおおむね6か月に1回記録していること。
管理栄養士等は常勤・専従である必要はなく、法人内や法人外部(都道府県栄養士会の栄養ケア・ステーション、保健所等)の管理栄養士等が献立の作成・確認を行う形でも差し支えありません。外部に調理業務を委託している場合は、委託先の管理栄養士等が関わっていれば要件を満たします。また、確認の頻度は「年に1回以上は行うこと」とされています(以上、留意事項通知・生活介護「食事提供体制加算の取扱いについて」㈠)。確認する献立は提供するすべてではなく、事業所が定める一定期間の献立(サイクルメニュー)を確認してもらうことで足りるとされています(令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.5 問1)。
調理の場所についても定めがあります。原則は施設内の調理室で調理して提供したものが対象で、食事提供に関する業務を事業所の最終的な責任のもとで第三者に委託することは差し支えありません。クックチル・クックフリーズ・真空調理・クックサーブなど、運搬手段等について衛生上適切な措置がなされている場合は施設外調理・搬入も認められますが、出前の方法や市販の弁当を購入して提供する方法は加算の対象になりません。
なお、加算の単位数・要件・経過措置の期限は報酬改定で見直されることがあります。令和8年度の報酬改定(令和8年6月施行)の改定事項資料には食事提供体制加算の見直しは示されていませんが、算定にあたっては最新の告示と指定権者の通知でご確認ください。
生活介護の食費まわりで明日から点検できる5つのこと
食費は毎日発生し、利用者全員に関係するお金です。次の5点は、今日の資料だけで確認できます。
- 徴収している食費の内訳が説明できるか——食材料費と調理等に係る費用に分解し、低所得者等(所得割16万円未満など)の方については食材料費相当額にとどまっているかを確認する。
- 運営規程の金額と、実際に請求している金額が一致しているか——単価を変更したのに運営規程と掲示が古いままになっていないかを見る。
- 説明・同意の文書と領収証が残っているか——契約時の説明文書、同意書、領収証の控えを利用者ごとに確認する。
- 職員食を利用者分と分けて記帳しているか——職員から徴収する食事代は課税売上になるため、非課税の利用者食費と同じ科目に混ぜない。
- 食事提供体制加算の3要件の記録が残っているか——管理栄養士等による献立の確認記録、利用者ごとの摂食量の記録、おおむね6か月に1回の体重またはBMIの記録がそろっているかを点検する。
生活介護の経営数値全体の見方は「生活介護の経営は何で決まる?人件費率・報酬の仕組み・黒字化の目安」で解説しています。食費以外も含めた税務・会計のご相談先をお探しの方は「生活介護事業所の税理士」をご覧ください。
まとめ
- 生活介護の食費は「指定生活介護において提供される便宜に要する費用」として、給付費とは別に受け取れる費用です(基準第82条第3項第1号)。曖昧な名目での徴収は認められません。
- 利用者から受け取る食費の消費税は非課税と整理するのが基本です。障害福祉(消法別表第二七号ロ)には介護保険のような「特別な食事の提供」の除外規定がなく、給食は生産活動にも該当しません。一方、職員に有償で提供する食事代は課税です。
- 徴収できる金額は、原則が食材料費+調理等に係る費用、通所の低所得者等(所得割16万円未満など)は食材料費相当額までです(平成18年厚生労働省告示第545号)。
- 食費は預り金ではなく収益で、提供した月に計上します。食材料費は非課税売上に対応する課税仕入れになるため、課税事業者が個別対応方式を採る場合は仕入税額控除の対象になりません。
- 食事提供体制加算は生活介護で1日30単位、令和9年3月31日までの経過措置です。対象は所得割16万円未満などの低所得者等に限られ(28万円は生活介護の通所利用者には当てはめません)、管理栄養士等による献立確認・摂食量の記録・体重またはBMIの記録の3要件が必要です。
食費の単価の組み立て方や職員食の扱いは事業所ごとに事情が違います。まずは現在の運営規程と請求書の状況をお聞かせください。
よくある質問(FAQ)
Q. 生活介護で利用者から受け取る食費に消費税はかかりますか?
A. 生活介護で利用者から受け取る食費は、指定生活介護において提供される便宜に要する費用として、消費税は非課税と整理するのが基本です。障害福祉サービスを含む社会福祉事業として行われる資産の譲渡等は消費税法別表第二第七号ロで非課税とされており、同号ロには介護保険にあるような「特別な食事の提供」を課税とする除外規定がないためです。
Q. 生活介護の食費はいくらまで徴収できますか?
A. 生活介護の食費は、原則として食材料費と調理等に係る費用に相当する額を基本としますが、生活保護受給世帯・市町村民税非課税世帯・市町村民税所得割16万円未満の世帯といった低所得者等の利用者については、食材料費に相当する額までとされています(平成18年厚生労働省告示第545号)。金額を変更するときは、運営規程への記載と掲示の差し替え、利用者への説明と同意の取り直しが必要です。
Q. 食事提供体制加算はいつまで算定できますか?
A. 食事提供体制加算は令和9年3月31日までの経過措置とされています。令和6年度報酬改定で従来の令和6年3月31日から3年延長されたもので、あわせて管理栄養士または栄養士による献立の確認、利用者ごとの摂食量の記録、おおむね6か月に1回の体重またはBMIの記録という3つの要件が追加されました。
Q. 職員に食事を提供して代金を受け取った場合はどう処理しますか?
A. 職員から徴収する食事代金は課税資産の譲渡等の対価に該当し、消費税の課税の対象になります(国税庁 No.6471)。利用者から受け取る食費は非課税ですので、同じ厨房で作った食事でも、利用者分と職員分は帳簿上で科目や補助科目を分けて記帳してください。
Q. 生活介護の食材料費は消費税の仕入税額控除の対象になりますか?
A. 食材料費や給食委託費の支払は課税仕入れですが、対応する売上である食費が非課税売上であるため、課税事業者が個別対応方式によって計算する場合は「非課税売上げにのみ要する課税仕入れ」として仕入税額控除の対象になりません(国税庁 No.6401)。なお、生産活動による売上などの課税売上がなく免税事業者である法人の場合は、仕入税額控除の計算自体が生じません。
参考資料
- e-Gov法令検索|障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)
- 厚生労働省|食事の提供に要する費用、光熱水費及び居室の提供に要する費用に係る利用料等に関する指針(平成18年厚生労働省告示第545号)
- 厚生労働省|令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要
- 国税庁|消費税法基本通達 第6章第7節 社会福祉事業等関係(6-7-5・6-7-6)
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