グループホームの人件費率と収支差率の目安は?|月次で見る5つの経営指標を税理士が解説

グループホームの人件費率と収支差率の目安は?|月次で見る5つの経営指標を税理士が解説

「部屋は埋まっているのに、決算を締めるとほとんど利益が残らない」「うちの人件費率は高いのか低いのか、比べる物差しがない」。障害者グループホーム(共同生活援助)の経営者・管理者の方から、こうしたご相談をよくいただきます。

この記事では、厚生労働省の調査で公表されているグループホームの人件費率(人件費比率)・収支差率の平均値と、毎月の会計で追いかけたい5つの経営指標、数字が悪いときに手を付ける順番を整理します。

結論として、グループホームの人件費率は収入の6割強(62.9%)、収支差率は5%台(5.5%)が厚生労働省の令和7年経営概況調査の平均で、この水準を左右するのは「入居率」と「夜間の人員体制」の2つです。

目次

グループホームの人件費率・収支差率とは?|計算式と公的調査の平均値

グループホームの人件費率とは、収入に対して給与費(人件費)が占める割合のことで、収支差率とは、収入から支出を引いた残り(収支差)が収入に占める割合のことです。 どちらも、厚生労働省が報酬改定の基礎資料として行う「障害福祉サービス等経営概況調査」「障害福祉サービス等経営実態調査」で、サービスの種類ごとに平均値が公表されています。

  • 人件費率(調査での名称は「収入に対する給与費の割合」)= 給与費 ÷ 収入 × 100
  • 収支差率 =(収入 − 支出)÷ 収入 × 100

厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算・物価高騰対策関連補助金を含まない数値)によると、共同生活援助全体の人件費率は62.9%、収支差率は5.5%です。グループホームの3つの類型別では次のとおりです。

類型人件費率(令和6年度決算)収支差率(令和6年度決算)収支差率(令和5年度決算)
共同生活援助 全体62.9%5.5%5.2%
介護サービス包括型61.7%6.9%5.0%
日中サービス支援型66.1%5.1%6.8%
外部サービス利用型57.0%2.4%1.4%
(参考)全サービス単純平均66.4%4.6%5.0%

(出典:厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」各障害福祉サービス等の収支差率及び給与費割合)

この論点でお困りではありませんか?

グループホームの人件費率や収支差率の見方に迷う場合は、障害福祉専門の税理士にご相談ください。

同じ調査では、介護サービス包括型の収支差率は平均値が6.9%であるのに対し、中央値は5.3%です。回答事業所の半数は収支差率が5.3%以下ということですから、「6.9%に届かないから不調」とは言い切れません。また、調査の数値は回答事業所の平均であり、年度によって動きます。自事業所と比べるときは、最新の調査結果をあわせてご確認ください。

サービス種別を横断した人件費比率の考え方は「障害福祉事業所の人件費比率|黒字経営のための目安と改善策」で解説しています。

グループホームの収入は何で構成される?|給付費が約8割・利用料が15〜17%

グループホームの収入は、国保連から入る給付費(基本報酬と加算)が約8割、利用者から受け取る家賃・食材料費などの利用料が15〜17%(類型により14.5〜17.0%)という構成が平均的な姿です。 令和7年経営概況調査の介護サービス包括型(第17表)では、収入に占める割合が「自立支援費等収益79.4%・利用料収益17.0%・補助事業等収益1.7%」となっています。

この構成は、人件費率を計算するときの落とし穴になります。公的調査の人件費率は、利用料収益を含めた収入全体を分母にしています。自事業所の試算表で給付費だけを分母にして計算すると、人件費率は調査の平均より高く出ます。比べるときは分母をそろえてください。食材料費や光熱水費を実費精算の預り金として処理し、収益に計上していない事業所は、調査より分母が小さくなる分だけ人件費率が高めに出る点にも注意してください。

家賃・光熱水費の会計処理と消費税は「グループホームの家賃・光熱費の会計処理」、利用者の小遣いなどの預り金は事業所の収入ではないため損益に入れず別管理します(「グループホームの利用者預り金管理」参照)。

夜間支援体制と世話人の配置は人件費率にどう響く?

グループホームの人件費率は、夜間の人員体制と、基準を超えて配置する世話人・生活支援員の人数でほぼ決まります。 通所系サービスと違い、グループホームは夜間・早朝・休日にも職員を置くため、利用者数が少なくても一定の人件費が固定的に発生するからです。

報酬の仕組みもこの構造に対応しています。

  • 基本報酬:令和6年度報酬改定で、世話人の配置(4:1・5:1・6:1)ごとに分かれていた基本報酬区分が「世話人の配置6:1以上」に一本化されました(厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」)。
  • 人員配置体制加算:基準を超えて世話人等を加配している事業所は、令和6年度改定で新設された人員配置体制加算で評価されます。介護サービス包括型では、特定従業者数換算方法で12:1以上または30:1以上の加配が要件です。
  • 夜間支援等体制加算:介護サービス包括型と外部サービス利用型で、夜勤・宿直の職員配置や夜間の連絡体制を評価する加算です。(Ⅰ)から(Ⅵ)まであり、夜勤(Ⅰ)・宿直(Ⅱ)の区分では、夜間支援の対象利用者数が多いほど利用者1人あたりの単位数は小さくなります。日中サービス支援型は夜間の職員配置が基本報酬の前提に含まれるため、この加算ではなく基本報酬と夜間の人件費を並べて確認します。

つまり、職員を手厚く置いているのに対応する加算を届け出ていない事業所は、人件費だけが先に増えて人件費率が悪化します。 逆に、加算は算定しているのに勤務実績が要件を満たしていなければ、実地指導で返還を求められます。加算の単位数や細かい要件は改定で見直されることがあるため、最新の報酬告示と指定権者の案内でご確認ください。

夜勤を宿直として処理していると、割増賃金の未払いが後から人件費として表面化します。夜勤と宿直の違いと割増賃金の計算は「グループホームの給与計算|世話人・生活支援員の夜勤と宿直の違い」で解説しています。

グループホームで月次で見るべき5つの経営指標は?

グループホームで毎月確認したい経営指標は、入居率・人件費率・利用者1人1日あたりの報酬単価・夜間の人件費・住居別の収支差の5つです。 年1回の決算だけで見ていると、空室や残業の増加に気づくまでに半年以上かかってしまいます。

指標計算のしかた何がわかるか
(1)入居率(稼働率)延べ利用日数 ÷(定員 × 暦日数)空室・入院・外泊による収入の取りこぼし
(2)人件費率給与費 ÷ 収入(利用料を含む)公的調査の平均(6割強)との差
(3)利用者1人1日あたり報酬単価給付費収入 ÷ 延べ利用日数障害支援区分の構成と加算の取得状況
(4)夜間の人件費夜勤・宿直にかかる給与費 と 夜間支援等体制加算の収入(日中サービス支援型は基本報酬)を並べる夜間体制が報酬で賄えているか
(5)住居別の収支差住居(ユニット)ごとの収入 − 直接費どの住居が利益を出し、どの住居が赤字か

(1)入居率

入居率は、グループホームの収支を最も大きく動かす指標です。令和7年経営概況調査(第17表)では、介護サービス包括型の定員1人あたり収入は年2,482千円で、月に直すとおよそ20万円です。平均的な事業所でも、定員1人分の空室が1か月続くと少なくとも20万円前後の収入が消える一方、夜間の人件費は減りません。 退去の予兆、入院・長期外泊の日数もあわせて記録します。

(2)人件費率

人件費率は、給与・賞与だけでなく法定福利費(社会保険料の事業主負担)も含めて計算し、毎月同じ範囲で比べます。福祉・介護職員等処遇改善加算(以下、処遇改善加算)は収入と人件費の両方に入るため、加算の入金月と賃金改善の支給月がずれると、月ごとの人件費率が大きく振れます。3か月移動平均でも見ておくと判断を誤りません。

(3)利用者1人1日あたり報酬単価

基本報酬は障害支援区分によって変わるため、同じ入居率でも利用者の区分構成で収入が変わります。単価が前月から下がったときは、区分の変更、加算の算定漏れ、請求の返戻のどれかが起きています。

(4)夜間の人件費

夜勤・宿直にかかる給与費を月次で切り出し、介護サービス包括型・外部サービス利用型は夜間支援等体制加算の収入と、日中サービス支援型は基本報酬の収入と並べます。夜間の人件費と対応する報酬収入の差額が毎月いくらなのかを把握していないと、夜間体制の見直しや住居を増やす判断ができません。

(5)住居別の収支差

複数の住居を運営している場合は、会計ソフトの部門設定で住居ごとに収入と直接費(人件費・家賃・水道光熱費)を分けます。法人全体では黒字でも、1つの住居の赤字をほかの住居が埋めている形は珍しくありません。

グループホームの数字が悪いとき、どの順番で手を打つ?

グループホームの人件費率や収支差率が悪いときは、「入居率→加算の届出→シフトと配置→固定費」の順に確認します。 人件費を削る前に、同じ人員体制のまま収入を増やせる余地がないかを先に見るのが原則です。

  1. 入居率の回復:空室の原因(退去・入院・体験利用の不足)を特定し、相談支援事業所や医療機関との連携、体験利用の受け入れを進めます。
  2. 加算の届出の点検:実際の配置で算定できる加算(人員配置体制加算、処遇改善加算の上位区分、介護サービス包括型・外部サービス利用型では夜間支援等体制加算など)を届け出ているかを確認します。
  3. シフトと配置の見直し:基準と加算要件を満たす範囲で、夜勤・宿直の組み方、常勤と非常勤のバランス、住居間の兼務を見直します。
  4. 固定費の見直し:借上げ物件の家賃、水道光熱費、委託費を点検します。利用者負担額の設定が実費に見合っているかもここで確認します。

なお、令和8年度報酬改定(令和8年6月施行)では、共同生活援助(介護サービス包括型・日中サービス支援型)が「収支差率が高く、事業所が急増しているサービス類型」とされ、令和9年度報酬改定までの間の措置として、令和8年6月1日以降に新規指定される事業所に限り、基本報酬を所定単位数の1000分の972とする応急的な報酬単価が設けられました(厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について」)。既存の事業所は従前どおりで、重度障害者の受け入れ等には配慮措置があります。新しく別の事業所として指定を受けて住居を増やす計画がある法人は、収支計画の前提として指定権者に確認してください。

税理士は月次でグループホームのどこを見る?|明日からできる3つの準備

税理士がグループホームの月次で見るのは、給付費の計上月・住居別の部門損益・夜間の人件費の3点です。 次の準備をしておくと、月次の数字が経営判断に使える形になります。

  1. 給付費をサービス提供月に計上する:国保連からの入金は約2か月遅れます。入金月で計上すると、入居率と収入の月がずれて指標が読めなくなります。
  2. 会計ソフトに住居別の部門を作る:収入・人件費・家賃・水道光熱費を住居ごとに集計できるようにします。
  3. 勤怠データから夜勤・宿直の時間数を毎月集計する:給与計算と加算要件の確認、夜間の人件費の把握を同じデータで行います。

グループホームの税務・会計をまとめて相談できる先をお探しの方は「障害者グループホームの税理士」で、Hands On会計事務所の対応内容をご覧いただけます。

まとめ

  1. グループホームの人件費率は62.9%、収支差率は5.5%が公的調査の平均です(厚生労働省 令和7年経営概況調査・令和6年度決算)。類型別では介護サービス包括型が61.7%・6.9%、日中サービス支援型が66.1%・5.1%、外部サービス利用型が57.0%・2.4%です。
  2. 公的調査の人件費率は利用料収益を含めた収入全体が分母です。給付費だけを分母にすると高く出るため、比べるときは分母をそろえます。
  3. 人件費率を左右するのは夜間の人員体制と世話人等の加配で、人員配置体制加算・夜間支援等体制加算の届出が実態と合っているかが分かれ目になります。
  4. 月次では入居率・人件費率・1人1日あたり報酬単価・夜間の人件費・住居別の収支差の5つを確認します。
  5. 数字が悪いときは入居率→加算の届出→シフトと配置→固定費の順に手を打ちます。

適正な水準は、類型・利用者の障害支援区分・住居の数や規模によって変わります。自事業所の数字の読み方に迷うときは、障害福祉に詳しい税理士にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

Q. 障害者グループホームの人件費率の目安は何%ですか?

A. 障害者グループホーム(共同生活援助)の人件費率は、収入の6割強が目安です。厚生労働省の令和7年障害福祉サービス等経営概況調査(令和6年度決算)では、共同生活援助全体で62.9%、介護サービス包括型61.7%、日中サービス支援型66.1%、外部サービス利用型57.0%でした。数値は年度で動きます。

Q. 障害者グループホームの収支差率(利益率)の平均はどのくらいですか?

A. 障害者グループホーム(共同生活援助)の収支差率の平均は5.5%です(厚生労働省 令和7年障害福祉サービス等経営概況調査・令和6年度決算)。類型別では介護サービス包括型6.9%、日中サービス支援型5.1%、外部サービス利用型2.4%で、全サービスの単純平均は4.6%でした。

Q. グループホームの人件費率を計算するとき、利用者から受け取る家賃や食材料費は収入に含めますか?

A. 厚生労働省の経営概況調査と比べる場合は、家賃や食材料費などの利用料収益を収入に含めて計算します。同調査の人件費率(収入に対する給与費の割合)は、給付費・利用料・補助金等を合計した収入を分母にしているためです。一方、利用者の小遣いなどの預り金は事業所の収入ではないため、分母に含めません。

Q. グループホームの会計で毎月見るべき数字は何ですか?

A. グループホームの会計で毎月見るべき数字は、入居率、人件費率、利用者1人1日あたりの報酬単価、夜間の人件費、住居別の収支差の5つです。給付費をサービス提供月に計上し、会計ソフトで住居別の部門を設定しておくと、5つの指標を毎月同じ基準で比べられます。

Q. グループホームの経営数値は税理士に相談できますか?

A. 相談できます。障害福祉に詳しい税理士であれば、月次決算をもとに入居率や人件費率を公的調査の平均と比べ、加算の届出状況や夜勤・宿直の給与計算とあわせて改善の順番を提案できます。Hands On会計事務所は、大阪府全域のグループホームの月次決算と経営数値の確認に対応しています。


参考資料


グループホームの人件費率・収支差率の確認や月次決算の整備なら、専門の税理士にご相談ください

Hands On会計事務所は、大阪府柏原市を拠点に、障害福祉事業者(就労継続支援A型・B型、放課後等デイサービス、児童発達支援、グループホームなど)を専門にサポートしている税理士事務所です。入居率・人件費率・住居別の収支差といった月次指標の整備から、公的調査の平均との比較、人員配置体制加算や夜間支援等体制加算を踏まえた収支の見直し、夜勤・宿直の給与計算まで、現場を知る税理士が一気通貫でお手伝いします。支援員としての現場経験をもとに、専門用語をかみくだいてご説明しますので、税務が苦手な方もご安心ください。個別支援計画AIや予約管理システムといったITツールは顧問先に無償でご提供しており、事務負担の軽減にもつながります。柏原市・八尾市・東大阪市・藤井寺市・羽曳野市・松原市・大阪市・堺市をはじめ大阪府全域に対応し、初回相談は無料です。まずはお気軽にお問い合わせください。

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執筆・監修:税理士 栗谷川 雄介(登録番号 第157826号)/Hands On会計事務所(税理士事務所・大阪府柏原市/認定経営革新等支援機関 ID:109927003701)

障害福祉事業者(就労継続支援A型・B型、放課後等デイサービス、児童発達支援、グループホームなど)の税務・会計・加算を専門に支援する税理士事務所です。国の認定を受けた認定経営革新等支援機関として、事業計画の策定や融資・補助金の申請支援にも対応しています。最終更新日:2026年9月19日

執筆者:税理士 栗谷川 雄介(登録番号 第157826号)/Hands On会計事務所

障害福祉に携わって通算10年。障害福祉を専門とする税理士法人で6年間、事業所の税務・会計を担当したのち、就労継続支援B型・生活介護の多機能型事業所に4年間勤務しました。目標工賃達成指導員として支援記録の整備・国保連への請求・実地指導対応・経理を担当し、見守り支援や利用者の送迎にも携わっています。2025年10月にHands On会計事務所を開業しました。

国保連への請求が現場でどう回っているのか、実地指導の当日までに何が起きるのか、経営者や職員がどう動いているのか——税務を担当していたときには見えなかったことを、内側から4年間経験しています。制度の解説だけでなく、現場で実際に何が起きているかを踏まえてお答えできるのが強みです。

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