障害福祉事業所の1月の3つの手続き|償却資産申告・法定調書・給与支払報告書を税理士が解説
「年末調整が終わったと思ったら、市役所から償却資産の申告書が届いた」「法定調書と給与支払報告書は何が違うの?」——12月から1月にかけて、障害福祉事業所の経営者や経理担当の方からこうしたご相談をよくいただきます。年末調整のあとに続く1月の手続きは、提出先が市町村と税務署に分かれ、対象の考え方もそれぞれ違うため、毎年迷いやすいところです。
この記事では、1月が期限の3つの手続き(償却資産申告・法定調書・給与支払報告書)について、障害福祉事業所で対象になるもの・ならないものを整理します。年末調整の手順そのものは「障害福祉事業所の年末調整で気をつける5つのこと」で解説しています。
結論として、3つの手続きはいずれも本来の期限が1月31日で、令和9年(2027年)は1月31日が日曜日のため、期限は2月1日(月)になります。
1月期限の3つの手続きとは?|令和9年(2027年)の期限は2月1日(月)
障害福祉事業所の1月期限の3つの手続きとは、市町村に出す「償却資産申告」と「給与支払報告書」、税務署に出す「法定調書(支払調書と合計表)」のことで、いずれも法律上の期限は1月31日です。 令和9年は1月31日が日曜日にあたるため、国税は国税通則法10条2項、地方税は地方税法20条の5第2項により、期限は翌日の2月1日(月)になります。
| 手続き | 根拠 | 提出先 | 何を出すか | 令和9年の期限 |
|---|---|---|---|---|
| 償却資産申告 | 地方税法383条 | 資産がある市町村 | 1月1日時点で持っている事業用の資産 | 2月1日(月) |
| 法定調書と合計表 | 所得税法225条・226条など | 事業所を所轄する税務署 | 税理士報酬・家賃などの支払調書と、その合計表 | 2月1日(月) |
| 給与支払報告書 | 地方税法317条の6 | 職員の住所地の市町村 | 1月1日に在籍する全員と前年の退職者(年30万円超)の給与 | 2月1日(月) |
令和8年(2026年)も1月31日が土曜日だったため、柏原市・大阪市の償却資産申告の期限は2月2日(月)でした(両市の令和8年度の申告の手引き)。期限が延びるのは曜日の巡りによるもので、毎年同じではありません。実際の期限は、その年の各市町村・国税庁の案内で確認してください。
なお、源泉所得税の納期の特例を受けている事業所は、7〜12月分の源泉所得税の納付期限が1月20日です(所得税法216条。令和9年1月20日は水曜日)。1月はこの納付と3つの手続きが重なります。
この論点でお困りではありませんか?
償却資産申告や法定調書の対象に迷う場合は、障害福祉専門の税理士にご相談ください。
手続き1:償却資産申告とは?|障害福祉事業所で対象になる資産・ならない資産
償却資産申告とは、毎年1月1日時点で所有している事業用の資産(土地・建物を除く)を、その所在地の市町村へ申告する手続きで、市町村はこの申告をもとに固定資産税を課税します(地方税法383条)。 障害福祉事業所では、パソコン・複合機・エアコン・厨房機器・作業用機械・療育用の備品や、借りた物件に自社で施工した内装などが対象になります。
迷いやすいのは、法人税で一度に経費にした資産の扱いです。国税でどの処理を選んだかによって、申告の対象かどうかが分かれます(地方税法施行令49条、柏原市・大阪市の申告の手引き)。
| 国税(法人税)での処理 | 償却資産申告 |
|---|---|
| 取得価額10万円未満で全額を損金にした資産 | 対象外 |
| 取得価額20万円未満で一括償却資産(3年均等)にした資産 | 対象外 |
| 中小企業者等の少額減価償却資産の特例で全額を損金にした資産(令和8年4月1日以後の取得等は40万円未満、それより前は30万円未満) | 対象 |
| 通常どおり減価償却している資産(償却が終わった資産も含む) | 対象 |
少額減価償却資産の特例は国税だけの制度なので、この特例で一度に経費にした資産も償却資産申告には載せます。 「全額経費にしたから申告しなくてよい」という誤解が、障害福祉事業所でもっとも多いところです。柏原市・大阪市の令和8年度の申告の手引きは改正前の「30万円未満」で書かれていますが、金額にかかわらず、この特例を使った資産は申告の対象です。特例の要件と金額の区切りは「障害福祉事業所の減価償却と耐用年数」で整理しています。
ほかに、障害福祉事業所で判断に迷いやすい資産は次のとおりです。
- 送迎車・福祉車両:ナンバーの付いた自動車(大型特殊自動車を除く)は自動車税・軽自動車税の対象なので、償却資産申告には含めません(地方税法341条4号ただし書)。
- 借りた物件に自社で施工した内装・設備:テナント(借りている側)が自費で施工した内装・造作・建築設備は、テナントの償却資産として申告します(地方税法343条10項と各市の条例。柏原市・大阪市とも同じ取扱い)。グループホームで事業者が設置した自動火災報知設備やスプリンクラー、ルームエアコンも、大阪市の「家屋と償却資産の区分表」では、家屋の所有者と設置者が異なる場合は償却資産です。内装工事の税務上の区分は「事業所の改修・設備投資は修繕費?資本的支出?」で解説しています。
- 補助金で購入し圧縮記帳した資産:固定資産税では圧縮前の取得価額で申告します(柏原市の申告の手引き)。
- ソフトウェアと開業費・創立費:ソフトウェア(無形の資産)や開業費・創立費(繰延資産)は対象外です。
課税標準額の合計が150万円未満なら固定資産税はかかりません(免税点・地方税法351条。大阪市は区ごとに判定)。ただし、税額がかからない見込みでも申告書の提出を求める市町村が一般的で、柏原市の手引きは前年から増減がない場合や該当資産がない場合も、その旨を書いて提出するよう求めています。
社会福祉法人の非課税は株式会社・合同会社には使えない
社会福祉事業の用に供する固定資産の非課税(地方税法348条2項10号の6・10号の7など)は、社会福祉法人などに限られた制度で、株式会社・合同会社が運営する障害福祉事業所には適用されません。 同じ放課後等デイサービスやグループホームでも、運営主体が株式会社・合同会社なら、資産は通常どおり課税されます。NPO法人や一般社団法人も原則として対象外で、例外に当たるかどうかは市町村に確認が必要です。
大阪府内の提出先(柏原市・大阪市の例)
- 柏原市:財務部 課税課 資産税家屋係(償却資産担当)。窓口・郵送のほか、eLTAX(地方税ポータルシステム)でも申告できます。様式は市のホームページ「ダウンロード用各申請書(課税課)」から入手できます。
- 大阪市:大阪市船場法人市税事務所。事業所が2つ以上の区にある場合は、区ごとに申告書を作ります。
ほかの市町村も、事業所や資産がある市町村ごとに申告します。複数の市町村に事業所がある法人は、それぞれに提出が必要です。
手続き2:法定調書と合計表は何を出す?|税理士報酬と事業所の家賃に注意
法定調書とは、税理士報酬や家賃、給与などの支払内容を税務署へ報告する書類で、前年1年分を事業所の所轄税務署に1月31日までに提出します(所得税法225条・226条)。 法定調書合計表は、提出する法定調書の枚数と金額をまとめた集計表です。障害福祉事業所で提出することが多いのは次の2種類です。
| 法定調書 | 提出が必要な範囲 | 障害福祉事業所でよくある例 |
|---|---|---|
| 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書 | 税理士・弁護士・社会保険労務士などへの報酬や講演料で、同じ相手に年5万円を超えるもの(国税庁 No.7431) | 顧問税理士・社労士への報酬、研修講師への謝礼 |
| 不動産の使用料等の支払調書 | 同じ相手に年15万円を超える家賃など。法人の大家に家賃だけを払っている場合は不要で、権利金・更新料などは対象(国税庁 No.7441) | 個人の大家さんから借りている事業所やグループホームの住居の家賃 |
令和9年1月からは、市町村へ給与支払報告書を提出すれば、税務署に給与所得の源泉徴収票を提出したものとみなされます(源泉徴収票のみなし提出の特例・令和8年分から)。 給与の源泉徴収票しか出すものがない事業所は、合計表の提出も不要になります。一方、上の表の支払調書や退職所得の源泉徴収票を出す事業所は、引き続き合計表が必要で、合計表には実際に税務署へ出す調書の分だけを書きます(国税庁「源泉徴収票のみなし提出の特例に関するQ&A」)。
グループホームは、個人の大家さんから戸建てやアパートを借りて住居にしていることが多く、家賃の支払調書が毎年必要になる事業所が少なくありません。 支払調書には相手のマイナンバーまたは法人番号を書くため、大家さんへの依頼は12月中に始めておくと安心です。
また、令和9年1月以後に提出する法定調書は、前々年(令和7年)に提出すべきだった枚数が種類ごとに30枚以上だと、e-Taxなどの電子的な方法での提出が義務になります(従来は100枚以上。国税庁 No.7455)。給与所得の源泉徴収票がこの基準に当たる場合は、給与支払報告書もeLTAXなどで出す必要があります。源泉徴収票の枚数は職員数ではなく、改正前の提出範囲(年末調整をした職員は年500万円超、役員は150万円超など)で数える点に注意してください(国税庁「源泉徴収票のみなし提出の特例に関するQ&A」問9)。
手続き3:給与支払報告書は誰の分を出す?|役員報酬もパートも対象
給与支払報告書とは、前年1年間に支払った給与の内容を、職員ごとに1月1日時点の住所地の市町村へ報告する書類で、提出期限は1月31日です(地方税法317条の6)。 1月1日に在籍している全員が対象で、代表者や役員の役員報酬、パート・アルバイトの給与も含みます。前年中に退職した人は、その年の給与が30万円を超える場合に、退職時の住所地の市町村へ提出します。
市町村はこの報告書をもとに職員の住民税を計算し、6月から給与天引き(特別徴収)する税額を事業所に通知します。職員の住所が複数の市町村にまたがる障害福祉事業所では、市町村ごとに総括表を付けて出す作業が負担になりやすいため、提出先を自動で振り分けて一括送信できるeLTAXが便利です。
給与支払報告書を出しても、職員本人への源泉徴収票の交付は省略できません。 令和9年1月からの「みなし提出」で不要になるのは税務署へ出す分だけで、職員に渡す源泉徴収票は引き続き1月31日までに交付が必要です(国税庁 No.7411)。源泉徴収票の金額は年末調整の結果で確定するため、年末調整の進め方とあわせて準備します。
設立1年目の法人は「初めての1月」に何を準備する?
設立1年目の法人は、市町村から償却資産申告書や給与支払報告書の様式が届かないことがあるため、自分で様式を入手して期限内に提出する必要があります。 申告書が届かないことは、申告しなくてよい理由になりません。開業準備で購入した備品や内装工事は、1月1日時点で持っていれば最初の償却資産申告の対象です。
設立1年目に特に見落としやすいのは、次の3点です。
- 開業時に買った備品・内装の洗い出し:指定申請の前後に購入したパソコン、家具、エアコン、療育用品、内装工事を固定資産台帳と突き合わせ、取得価額と国税での処理(10万円未満・一括償却・少額特例・通常償却)を確認します。
- 代表者1人の役員報酬も給与支払報告書の対象:職員がまだ少なくても、役員報酬を払っていれば提出が必要です。
- 支払調書の相手の確認:設立登記を依頼した司法書士、顧問税理士、社労士、個人の大家さんなど、1年目は支払先が多くなりがちです。
設立直後に税務署・府税事務所・市役所へ出す届出と、その期限は「障害福祉法人の設立後に出す届出は?」で整理しています。
12月中にやっておく5つの準備
1月を慌てずに迎えるため、12月中に次の5つを進めておきましょう。
- 資産の一覧を作る:1年間に購入した10万円以上の資産を抜き出し、少額減価償却資産の特例を使った資産にも印を付ける(償却資産申告の対象)。
- 借りている物件の工事を確認する:自社で施工した内装・造作・消防設備・エアコンを洗い出す。
- 支払調書の相手を確認する:税理士・社労士・講師・個人の大家さんへの年間支払額を集計し、マイナンバーまたは法人番号をそろえる。
- 在籍者と退職者の住所を確認する:1月1日時点の住所と、前年中の退職者の退職時の住所を年末調整の書類と照らし合わせる。
- 提出方法を決める:前々年の枚数で電子的な提出の義務がないかを確認し、eLTAXの利用届出を済ませておく。
まとめ
- 1月期限の手続きは償却資産申告・法定調書・給与支払報告書の3つで、令和9年は1月31日が日曜日のため期限は2月1日(月)です。
- 少額減価償却資産の特例で経費にした資産は償却資産申告の対象で、10万円未満の資産と一括償却資産は対象外です。送迎車などナンバー付きの自動車は含めません。
- 株式会社・合同会社の障害福祉事業所には社会福祉法人のような固定資産税の非課税はなく、借りた物件に自社で施工した内装や設備も申告します。
- 法定調書は税理士報酬と個人の大家さんへの家賃が典型で、令和9年1月からは給与支払報告書を出せば源泉徴収票の税務署提出は不要になります。
- 給与支払報告書は役員・パートを含む1月1日在籍の全員分を住所地の市町村へ出し、職員への源泉徴収票の交付も忘れないようにします。
資産の区分や支払調書の要否は、事業所の状況によって判断が分かれます。迷う場合は早めに専門家へご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 令和9年(2027年)の償却資産申告の期限はいつですか?
A. 令和9年の償却資産申告の期限は2月1日(月)です。償却資産申告の法律上の期限は1月31日ですが(地方税法383条)、令和9年は1月31日が日曜日のため、地方税法20条の5第2項により翌日の2月1日が期限になります。法定調書と給与支払報告書も同じく2月1日(月)が期限です。
Q. 少額減価償却資産の特例で全額経費にしたパソコンも償却資産申告が必要ですか?
A. 少額減価償却資産の特例で全額経費にしたパソコンも、償却資産申告の対象です。この特例は国税だけの制度で、固定資産税では申告が必要とされています。一方、取得価額10万円未満で全額を経費にした資産と、20万円未満で一括償却資産として3年で経費にした資産は申告の対象外です。
Q. 送迎車や福祉車両は償却資産申告に含めますか?
A. 送迎車や福祉車両のようにナンバーの付いた自動車は、償却資産申告に含めません。自動車税または軽自動車税の対象となる自動車は、地方税法341条4号ただし書で償却資産から除かれているためです。フォークリフトなど一部の大型特殊自動車は申告の対象になります。
Q. 給与支払報告書を出せば、源泉徴収票は税務署に出さなくてよいですか?
A. 令和9年1月以後に提出する令和8年分からは、給与支払報告書を市町村に出せば、給与所得の源泉徴収票は税務署に提出したものとみなされます。ただし、職員本人への源泉徴収票の交付は引き続き必要です。税理士報酬や家賃の支払調書を税務署に出す場合は、法定調書合計表の提出も必要です。
Q. 株式会社の放課後等デイサービスも固定資産税が非課税になりますか?
A. 株式会社や合同会社が運営する放課後等デイサービスの資産は、固定資産税の非課税の対象になりません。社会福祉事業の用に供する固定資産の非課税(地方税法348条2項)は、社会福祉法人などの限られた運営主体に適用される制度です。株式会社・合同会社の事業所は、通常どおり償却資産申告を行います。
参考資料
- 国税庁|源泉徴収票のみなし提出の特例 特設ページ
- 国税庁|No.7441 「不動産の使用料等の支払調書」の提出範囲等
- 柏原市|ダウンロード用各申請書(課税課)(固定資産税(償却資産)申告の手引き)
- 大阪市|償却資産(固定資産税)の申告の手引
償却資産申告・法定調書・給与支払報告書の準備なら、専門の税理士にご相談ください
Hands On会計事務所は、大阪府柏原市を拠点に、障害福祉事業者(就労継続支援A型・B型、放課後等デイサービス、児童発達支援、グループホームなど)を専門にサポートしている税理士事務所です。固定資産台帳の整備と償却資産申告、税理士報酬・家賃の支払調書と法定調書合計表の作成、給与支払報告書の作成とeLTAXでの提出、年末調整から源泉徴収票の交付まで、現場を知る税理士が一気通貫でお手伝いします。支援員としての現場経験をもとに、専門用語をかみくだいてご説明しますので、税務が苦手な方もご安心ください。個別支援計画AIや予約管理システムといったITツールは顧問先に無償でご提供しており、事務負担の軽減にもつながります。柏原市・八尾市・東大阪市・藤井寺市・羽曳野市・松原市・大阪市・堺市をはじめ大阪府全域に訪問とオンラインで、大阪府外の事業所さまにも全国オンラインで対応しています。初回相談は無料です。まずはお気軽にお問い合わせください。
お電話でも承ります:080-1439-1087(平日10:00〜18:00)
執筆・監修:税理士 栗谷川 雄介(登録番号 第157826号)/Hands On会計事務所(税理士事務所・大阪府柏原市/認定経営革新等支援機関 ID:109927003701)
障害福祉事業者(就労継続支援A型・B型、放課後等デイサービス、児童発達支援、グループホームなど)の税務・会計・加算を専門に支援する税理士事務所です。国の認定を受けた認定経営革新等支援機関として、事業計画の策定や融資・補助金の申請支援にも対応しています。最終更新日:2026年10月19日
