障害福祉法人の設立後に出す届出は?|税務署・府・市への8つの書類と期限を税理士が解説
「設立登記は終わったけれど、税務署には何を出せばいいの?」「指定申請の準備で手一杯で、税金の届出まで手が回らない」——障害福祉事業のために法人を設立した直後の方から、こうしたご相談をよくいただきます。設立から指定取得までの数か月は、物件・人員・指定申請の準備が重なり、期限のある税務の届出が後回しになりがちです。
この記事では、障害福祉の法人を設立したあとに税務署・府税事務所・市町村へ出す8つの届出を一覧にし、期限の数え方、出し忘れると損をする届出、役員報酬と消費税の判断のしかたを整理します。
結論として、設立後の届出は「必ず出すもの」と「出さないと損をするもの」に分かれ、最初の3か月で青色申告の承認申請と役員報酬の決定まで済ませることが最も大切です。
設立後の税務の届出とは?|提出先は税務署・府税事務所・市町村の3か所
設立後の税務の届出とは、法人を設立したことや給与の支払を始めたことを税務署・都道府県・市町村に知らせ、青色申告などの選択を申し出る手続きの総称です。 法人税・源泉所得税・消費税は税務署へ、法人府民税・法人事業税は府税事務所(大阪府以外では都道府県税事務所)へ、法人市町村民税は市町村へ、それぞれ別に提出します。
株式会社・合同会社で障害福祉事業を始める法人が設立後に出す主な届出は、次の8つです(国税庁 No.5100「新設法人の届出書類」、大阪府「Q1回答(法人府民税、法人事業税)」ほか)。NPO法人や非営利型の一般社団法人は法人税法上の公益法人等にあたるため、税務署への法人設立届出書は不要で、収益事業を始めたときに「収益事業開始届出書」を出すなど扱いが異なります(国税庁 No.5100)。
| # | 届出 | 提出先 | 期限の目安 | 区分 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 法人設立届出書 | 税務署 | 設立の日(登記日)以後2か月以内 | 必須 |
| 2 | 青色申告の承認申請書 | 税務署 | 設立の日以後3か月を経過した日と第1期の事業年度終了日のいずれか早い日の前日まで | 実質必須 |
| 3 | 給与支払事務所等の開設届出書 | 税務署 | 給与の支払事務を扱う事務所を開設した日から1か月以内 | 必須(役員報酬だけでも) |
| 4 | 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 税務署 | 期限なし(出した翌月の源泉徴収分から適用) | 任意(給与の支給人員が常時10人未満) |
| 5 | 減価償却資産の償却方法・棚卸資産の評価方法の届出書 | 税務署 | 第1期の確定申告書の提出期限まで | 任意 |
| 6 | 消費税の届出(課税事業者選択届出書・インボイスの登録申請書) | 税務署 | 判断したうえで第1期中に | 任意(取引先次第) |
| 7 | 法人設立等申告書(大阪府) | 府税事務所 | 設立の日から2か月以内 | 必須 |
| 8 | 法人設立・開設届出書 | 市町村 | 各市町村の条例と案内で確認 | 必須 |
国税と地方税の届出は、e-Tax・eLTAXで電子提出できるほか、マイナポータルの「法人設立ワンストップサービス」でまとめて提出することもできます。
この論点でお困りではありませんか?
設立後の届出の期限や要否に迷う場合は、障害福祉専門の税理士にご相談ください。
届出の期限はどう数える?|設立日(登記日)が起点で、土日祝は翌日に延びる
設立後の届出の期限は、設立登記をした日を起点に数え、期限の日が土曜日・日曜日・祝日・年末(12月29日〜31日)にあたるときは翌日(休日明けの日)が期限になります(国税通則法10条2項、地方税法20条の5第2項)。 指定申請の書類に書く事業開始日や、利用者の受入れを始めた日ではない点に注意してください。
設立日が令和9年(2027年)4月1日、事業年度が4月1日〜3月31日の法人を例にすると、期限は次のようになります。
| 届出・手続き | 期限(例) |
|---|---|
| 法人設立届出書(税務署)・法人設立等申告書(大阪府) | 令和9年5月31日(月) |
| 青色申告の承認申請書 | 令和9年6月30日(水) |
| 役員報酬(定期同額給与)の金額の決定 | 令和9年6月30日(水)までが目安 |
| 減価償却資産の償却方法・棚卸資産の評価方法の届出書 | 令和10年5月31日(水)(第1期の確定申告期限) |
給与支払事務所等の開設届出書は、設立日ではなく「給与の支払事務を扱う事務所を開設した日」から1か月以内が期限です。役員報酬などの支払をいつから始めるかで開設日の考え方が変わるため、迷う場合は早めに出しておくと安心です。期限の細部は国税庁・大阪府・市町村の最新の案内で確認してください。
必ず出す届出は?|法人設立届出書・給与支払事務所等の開設届出書・地方税の設立届
法人設立届出書、給与支払事務所等の開設届出書、府と市町村への設立届の4つは、株式会社・合同会社で障害福祉事業を始める法人なら必ず出す届出です(表の#1・#3・#7・#8)。 提出先は税務署・府・市町村で分かれており、原則としてそれぞれに提出が必要で、1か所に出しただけでは足りません。
- 法人設立届出書(#1):設立の日以後2か月以内に、定款の写しを添えて本店所在地の税務署へ出します(法人税法148条)。
- 給与支払事務所等の開設届出書(#3):給与の支払事務を扱う事務所を開設した日から1か月以内に提出します(所得税法230条)。職員を雇う前でも、代表者に役員報酬を払う法人は提出が必要です。
- 法人設立等申告書(#7):大阪府では、設立の日から2か月以内に、登記事項証明書の写しと定款を添えて、事務所の所在地を担当する府税事務所へ出します。
- 市町村の設立届(#8):柏原市は課税課の市民税係が「法人(設立・開設・異動)届出書」を受け付け、大阪市は船場法人市税事務所が担当しています。事業所を別の市町村に開設したときも、その市町村へ届け出ます。
出し忘れると損をする届出は?|青色申告・納期の特例・償却方法
青色申告の承認申請書は任意の届出ですが、出し忘れると設立1期目の赤字を翌期以降に繰り越せず、少額減価償却資産の特例も使えないため、障害福祉の法人では実質的に必須の届出です(表の#2)。 障害福祉事業は国保連からの入金が約2か月遅れ、開業準備の費用も先に出ていくため、1期目は赤字になりやすいからです。
- 青色申告の承認申請書(#2):期限は「設立の日以後3か月を経過した日」と「第1期の事業年度終了の日」のいずれか早い日の前日です(法人税法122条2項1号)。第1期が3か月より短い場合は、この期限が先に来ます。期限を過ぎると、その事業年度は青色申告になりません。
- 源泉所得税の納期の特例(#4):給与の支給人員が常時10人未満なら、毎月10日の源泉所得税の納付を、1〜6月分は7月10日、7〜12月分は翌年1月20日の年2回にまとめられます(所得税法216条)。申請した翌月末までに却下の通知がなければ承認されたものとみなされ、申請した翌月に源泉徴収する分から適用されます(国税庁 No.2505)。職員が10人以上になったら、要件に該当しなくなった旨の届出が必要です。
- 償却方法・評価方法の届出(#5):届け出なければ、器具備品や車両は定率法、就労継続支援の生産活動の在庫(棚卸資産)は最終仕入原価法で計算することになります(法人税法施行令53条・31条)。送迎車などを毎年同じ額で償却したい場合は、定額法を選ぶ届出を第1期の確定申告期限までに出します。
消費税の届出はどう判断する?|資本金1,000万円未満なら原則2年免税
資本金1,000万円未満で設立した法人は、設立1期目と2期目は基準期間がないため、原則として消費税の納税義務が免除されます(消費税法9条1項・12条の2)。 ただし、1期目の開始から6か月間の課税売上高と給与の支払額がどちらも1,000万円を超えると、2期目から課税事業者になります(消費税法9条の2)。障害福祉サービスの報酬(給付費)の多くは消費税が非課税で、課税売上高の判定にも含めないため、3期目以降も免税事業者のままでいる法人が少なくありません。なお、課税売上高が5億円を超える会社などのグループで設立した法人は、資本金1,000万円未満でも1期目から課税事業者になる場合があります(消費税法12条の3)。
届出が必要になるのは、次のように「あえて課税事業者になる」ときです。
- インボイスの登録申請書:就労継続支援の生産活動で企業に商品や役務を売るなど、取引先からインボイス(適格請求書)を求められる場合に検討します。設立した課税期間中に登録申請書を出せば、設立日にさかのぼって登録を受けられます(国税庁「新たに事業を開始した事業者(新規開業者)のインボイス登録に関するFAQ」)。
- 課税事業者選択届出書:生産活動の設備投資など、課税売上に対応する多額の課税仕入れがあり、消費税の還付を受けたい場合などに検討します。障害福祉サービス(非課税)のための仕入れにかかった消費税は控除できないため、還付はそれほど出ないのが一般的です。いったん課税事業者を選ぶと、原則として一定期間は免税事業者に戻れません。
資本金1,000万円以上で設立した法人は、届出をしなくても1期目から課税事業者です。インボイス登録をした小規模事業者の負担軽減措置(2割特例)は令和8年9月30日を含む課税期間までの経過措置のため、令和8年10月1日以後に設立した法人は使えません。消費税の判定の全体像は「障害福祉事業の消費税まるわかり」で解説しています。
役員報酬はいつまでに決める?|設立日から3か月以内が目安
設立1期目の役員報酬は、定款で第1期を設立の日から始めると定めている通常の法人なら、設立日から3か月以内に金額を決め、その後は毎月同じ額を支給すると定期同額給与として損金になります(法人税法34条1項1号、法人税法施行令69条1項1号イ)。 3か月を過ぎてから決めたり、期の途中で金額を変えたりすると、損金にならない部分が出るおそれがあります。
障害福祉の法人は、指定を受けて報酬が入るまでの数か月は収入がほとんどありません。設立1期目は、生活に必要な額を確保しつつ低めに設定し、翌期の期首から3か月以内に見直す方法が現実的です。賞与のように特定の時期に決まった額を払う場合は、設立の日以後2か月を経過する日までに「事前確定届出給与に関する届出書」を出す必要があります(国税庁 No.5211)。役員報酬の水準の決め方は「障害福祉事業の役員報酬はいくらが正解?」で詳しく解説しています。
事業の開始が設立から大きく遅れる場合など、3か月の数え方に迷うケースは個別の判断が必要です。
指定申請や開業準備の費用とはどう関係する?
税務の届出は税務署・府・市町村に出す手続きで、障害福祉サービスの指定申請とは提出先も目的も別です。 指定申請の書類の作成・提出は、連携する行政書士が行います(行政書士法1条の3・1条の4・19条)。税理士は、指定申請に添える収支予算や資金計画の数字の確認、日本政策金融公庫などへの創業融資の事業計画づくりで関わります。
開業準備のために設立後に支出した費用は、開業費(繰延資産)として資産に計上し、好きな事業年度に償却できます(法人税法施行令14条1項2号・64条1項1号)。設立登記の登録免許税や定款認証の費用は創立費として同じように扱えます。開業時の内装工事や設備は開業費ではなく資産として減価償却するのが原則で、その区分は「事業所の改修・設備投資は修繕費?資本的支出?」で解説しています。1期目の赤字を大きくしすぎず、黒字になった年度に償却するといった調整ができるため、領収書は設立前のものも含めて保管しておきましょう。融資の準備は「障害福祉の融資・補助金・資金繰り支援」でも案内しています。
設立から3か月でやる5つの手順
- 設立日と事業年度を確認する:登記事項証明書で設立日を確認し、8つの届出の期限を一覧にする。
- 2か月以内に設立届を出す:税務署・府税事務所・市町村の3か所へ、定款の写しなどを添えて提出する。
- 役員報酬を決めて議事録を残す:設立日から3か月以内に金額を決め、株主総会などの議事録を作る。
- 青色申告の承認申請書を出す:3か月の期限より前に、ほかの届出と一緒に出してしまう。
- 給与の開始にあわせて源泉の届出を出す:給与支払事務所等の開設届出書と、職員10人未満なら納期の特例の申請書を出す。
設立1年目の法人は、最初の1月に償却資産申告・法定調書・給与支払報告書の提出も控えています。いずれも期限は1月31日(土日祝にあたるときは休日明けの日)で、開業準備で買った備品や内装も償却資産申告の対象になります。1月の手続きは「障害福祉事業所の1月の3つの手続き」で整理しています。
まとめ
- 設立後の届出は税務署・府税事務所・市町村の3か所に8つあり、提出先ごとに別々に出す必要があります。
- 期限は設立登記の日を起点に数え、土日祝・年末にあたるときは翌日に延びます。
- 青色申告の承認申請は設立の日以後3か月が目安で実質必須で、出し忘れると1期目の赤字の繰越しや少額減価償却資産の特例が使えません。
- 消費税は資本金1,000万円未満なら原則2年免税で、インボイス登録や課税事業者の選択は取引先と仕入れの状況で判断します。
- 役員報酬は設立日から3か月以内に決めて毎月同額にするのが基本で、指定申請の書類は連携する行政書士が作成・提出します。
設立日や事業年度、役員構成によって期限と判断は変わります。迷う場合は早めに専門家へご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 法人設立届出書はいつまでに出せばいいですか?
A. 株式会社・合同会社の法人設立届出書は、設立の日(設立登記の日)以後2か月以内に、本店所在地の税務署へ定款の写しを添えて提出します(法人税法148条)。大阪府の法人設立等申告書も設立の日から2か月以内が期限で、市町村への設立届も別に必要です。期限の日が土日祝にあたるときは翌日が期限になります。
Q. 設立1期目の青色申告の承認申請書の期限はいつですか?
A. 設立1期目の青色申告の承認申請書の期限は、設立の日以後3か月を経過した日と第1期の事業年度終了の日のいずれか早い日の前日です(法人税法122条2項1号)。たとえば4月1日設立・3月決算の法人なら6月30日が期限です。期限を過ぎるとその事業年度は青色申告になりません。
Q. 職員を雇う前でも給与支払事務所等の開設届出書は必要ですか?
A. 職員を雇う前でも、代表者に役員報酬を支払う法人は給与支払事務所等の開設届出書が必要です。役員報酬も源泉徴収の対象となる給与にあたるため、給与の支払事務を扱う事務所を開設した日から1か月以内に税務署へ提出します(所得税法230条)。
Q. 障害福祉の法人は設立したら消費税の届出が必要ですか?
A. 資本金1,000万円未満で設立した障害福祉の法人は、消費税の届出をしなくても設立1期目と2期目は原則として免税事業者です。障害福祉サービスの報酬の多くは非課税のため、インボイス登録や課税事業者の選択が必要になるのは、生産活動の売上で取引先からインボイスを求められる場合などに限られます。
Q. 設立後の届出は税理士に任せられますか?
A. 法人設立届出書・青色申告の承認申請書・給与支払事務所等の開設届出書などの税務の届出は、税理士に作成と提出を任せられます。Hands On会計事務所では、期限の一覧づくりから役員報酬の設計、消費税の判断まで対応しています。指定申請の書類の作成・提出は、連携する行政書士が行います。
参考資料
- 国税庁|No.5100 新設法人の届出書類
- 国税庁|No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例
- 国税庁|[手続名]給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出
- 大阪府|Q1回答(法人府民税、法人事業税)
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Hands On会計事務所は、大阪府柏原市を拠点に、障害福祉事業者(就労継続支援A型・B型、放課後等デイサービス、児童発達支援、グループホームなど)を専門にサポートしている税理士事務所です。法人設立届出書・青色申告の承認申請書・給与支払事務所等の開設届出書・源泉所得税の納期の特例の作成と提出、期限の一覧づくり、設立1期目の役員報酬の設計、消費税・インボイス登録の判断、日本政策金融公庫の創業融資に向けた事業計画づくりまで、現場を知る税理士が一気通貫でお手伝いします。支援員としての現場経験をもとに、専門用語をかみくだいてご説明しますので、税務が苦手な方もご安心ください。個別支援計画AIや予約管理システムといったITツールは顧問先に無償でご提供しており、事務負担の軽減にもつながります。柏原市・八尾市・東大阪市・藤井寺市・羽曳野市・松原市・大阪市・堺市をはじめ大阪府全域に訪問とオンラインで、大阪府外の事業所さまにも全国オンラインで対応しています。初回相談は無料です。まずはお気軽にお問い合わせください。
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執筆・監修:税理士 栗谷川 雄介(登録番号 第157826号)/Hands On会計事務所(税理士事務所・大阪府柏原市/認定経営革新等支援機関 ID:109927003701)
障害福祉事業者(就労継続支援A型・B型、放課後等デイサービス、児童発達支援、グループホームなど)の税務・会計・加算を専門に支援する税理士事務所です。国の認定を受けた認定経営革新等支援機関として、事業計画の策定や融資・補助金の申請支援にも対応しています。最終更新日:2026年10月19日
