最低賃金2026年10月改定|障害福祉の職員給与で確認する5つのポイントを税理士が解説
「時給のパート職員は上げたけれど、月給の職員は確認していない」「処遇改善の手当を足せば最低賃金を超えるが、それでよいのか」。毎年10月が近づくと、障害福祉事業所の経営者・管理者・経理担当の方からこうしたご相談をよくいただきます。
この記事では、令和8年度(2026年10月)の最低賃金改定について、大阪府の金額と発効日を確認したうえで、就労継続支援・放課後等デイサービス・グループホーム・生活介護などサービス種別を問わず共通する職員給与の確認ポイントを5つに整理します。
結論として、大阪府の最低賃金は2026年10月1日から時間額1,231円(54円引上げ)になり、時給者だけでなく月給者・固定残業代つきの職員・就労継続支援A型の利用者まで、10月1日以降の労働分から新しい金額を下回っていないかを確認する必要があります。
令和8年度の大阪府最低賃金はいくら?|2026年10月1日から時間額1,231円
大阪府の地域別最低賃金は、令和8年(2026年)10月1日から時間額1,231円です。改定前の1,177円から54円の引上げです(大阪労働局)。
地域別最低賃金とは、最低賃金法にもとづいて都道府県ごとに定められる賃金の最低額で、雇用形態に関係なくその都道府県内の事業場で働くすべての労働者に適用されるものです。 パート・アルバイト・嘱託といった呼び方は問いません。
使用者は最低賃金額以上の賃金を支払わなければならず、最低賃金に達しない賃金を定めた労働契約はその部分が無効となり、最低賃金と同じ定めをしたものとみなされます(最低賃金法4条1項・2項)。地域別最低賃金額以上を支払わない場合は50万円以下の罰金の定めがあり(同法40条)、行為者だけでなく法人にも罰金刑が科されます(同法42条)。
令和8年度の大阪府と全国加重平均は次のとおりです。事業所が複数の府県にまたがる法人は、事業場ごとに所在地の最低賃金が適用されます。
| 区分 | 令和8年度の時間額 | 改定前 | 引上げ額 | 発効日 |
|---|---|---|---|---|
| 大阪府 | 1,231円 | 1,177円 | 54円 | 令和8年10月1日 |
| 全国加重平均 | 1,177円 | 1,121円 | 56円 | ―(都道府県ごとに異なる) |
(出典:大阪労働局「大阪府の最低賃金のお知らせ」、厚生労働省「令和8年度 地域別最低賃金額答申状況」。2026年9月19日時点の情報です)
近隣府県の額と発効予定日は厚生労働省の答申状況で確認できます。大阪府以外の発効日は答申時点の予定のため、最新の金額と発効日は各労働局の案内でご確認ください。
この論点でお困りではありませんか?
最低賃金の改定にともなう職員給与の見直しと人件費の試算に迷う場合は、障害福祉専門の税理士にご相談ください。
ポイント(1)月給者の時間単価は最低賃金を上回っている?
月給制の職員は、「最低賃金の対象となる賃金の月額 ÷ 1か月平均所定労働時間」で時間単価に換算し、大阪府なら1,231円以上かどうかを確認します(最低賃金法施行規則2条1項3号)。 時給のパート職員だけを見直して、月給の常勤職員の確認を飛ばしてしまうのが、最低賃金の改定時にもっとも起きやすい見落としです。
換算するときは、支給総額から次の賃金を除きます。最低賃金の対象は「毎月支払われる基本的な賃金」に限られるためです(厚生労働省「最低賃金の対象となる賃金」)。
| 最低賃金の計算に含めない賃金 | 根拠 |
|---|---|
| 臨時に支払われる賃金(結婚手当など) | 最低賃金法4条3項1号・施行規則1条1項 |
| 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など) | 同上 |
| 時間外労働・休日労働に対する賃金 | 最低賃金法4条3項2号・施行規則1条2項1号・2号 |
| 深夜労働の割増部分 | 施行規則1条2項3号 |
| 精皆勤手当・通勤手当・家族手当 | 最低賃金法4条3項3号(各最低賃金で算入しないと定められている賃金) |
資格手当・職務手当・役職手当のように毎月決まって支払われる手当は、除外されず計算に含まれます。
計算例で確認します。年間所定労働日数250日・1日8時間の事業所では、1か月平均所定労働時間は 250日 × 8時間 ÷ 12か月 ≒ 166.7時間です。基本給190,000円・資格手当10,000円・通勤手当8,000円の職員の場合、通勤手当を除いた200,000円が対象となり、200,000円 × 12か月 ÷ 2,000時間 = 1,200円 です。改定前の1,177円は満たしていますが、改定後の1,231円は下回ります。去年の確認では問題がなかった月給者が、今年は最低賃金を割り込む典型例です。この所定労働時間の事業所では、対象となる賃金が月額205,167円(1,231円 × 2,000時間 ÷ 12か月を切上げ)を下回ると大阪府の最低賃金に届かないため、この職員は月額で5,167円以上の引上げが必要です。
年間休日が少ない事業所ほど1か月平均所定労働時間が長くなり、同じ月給でも時間単価は下がります。就業規則やシフトの所定労働時間を先に確定させてから計算してください。
ポイント(2)固定残業代を含む月給はどこを見る?
固定残業代(みなし残業代)は、時間外労働の対価として基本給と明確に区分されているかぎり時間外労働に対する賃金なので、最低賃金の計算では月給から除いて判定します。 最低賃金法施行規則1条2項1号は「所定労働時間をこえる時間の労働に対して支払われる賃金」を算入しない賃金と定めており、厚生労働省も残業代や休日手当は含めずに計算する必要があると案内しています。
たとえば「月給236,000円(固定残業代30,000円・通勤手当8,000円を含む)」の職員は、総額では余裕があるように見えても、判定に使うのは198,000円です。ポイント(1)と同じ所定労働時間なら時間単価は1,188円となり、改定前の1,177円は満たしていても、大阪府の改定後の1,231円を下回ります。
固定残業代つきの月給を見直すときは、次の2点を同時に確認します。
- 基本給と手当(固定残業代を除く)だけで、時間単価が1,231円以上(大阪府の場合)になっているか
- 基本給を引き上げた結果、割増賃金の基礎となる単価も上がり、現在の固定残業代の金額では設定した時間数分をまかなえなくなっていないか
割増賃金の計算方法そのものは「障害福祉の割増賃金・深夜手当の計算方法」で解説しています。雇用契約書や賃金規程の変更が必要になる場合は、社会保険労務士と連携して進めるのが安全です。
ポイント(3)発効日が給与計算期間の途中に来たらどうする?
最低賃金の発効日が賃金計算期間の途中にある場合でも、発効日以降の労働分には改定後の最低賃金額以上を支払う必要があります。「次の給与計算期間から引き上げる」は認められません(厚生労働省 最低賃金特設サイト「よくあるご質問」)。
大阪府の令和8年度の発効日は10月1日です。締め日ごとの扱いは次のように整理できます。
| 給与の締め日 | 10月1日をまたぐ計算期間 | 対応 |
|---|---|---|
| 末日締め | またがない(10月1日〜31日分が最初) | 10月分の給与から新しい単価で計算 |
| 15日締め | 9月16日〜10月15日 | 10月1日以降の労働時間は1,231円以上で計算 |
| 20日締め | 9月21日〜10月20日 | 同上 |
| 25日締め | 9月26日〜10月25日 | 同上 |
時給者は、9月30日までの時間数と10月1日以降の時間数を分けて集計するか、計算期間の初日から新しい時給に切り替えます。月給者は期間の途中で単価を分けると計算が煩雑になるため、発効日を含む計算期間の初日から新しい月給にそろえる方法が簡便です。給与ソフトの単価マスタは、締め日より前に更新しておきましょう。
なお、改定に気づかず最低賃金未満の賃金を支払っていた場合は、差額を速やかに支払わなければなりません(同サイト)。
ポイント(4)処遇改善加算の手当は最低賃金の計算に含められる?
福祉・介護職員等処遇改善加算(以下、処遇改善加算)を原資とする手当は、毎月決まって支払われているものなら最低賃金の計算に含まれ、賞与や一時金として支払われているものは含まれません。 厚生労働省・こども家庭庁の「福祉・介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」(令和8年4月9日事務連絡)問1-6は、次のように整理しています。
- 処遇改善加算の加算額が、臨時に支払われる賃金や賞与等としてではなく、予定し得る通常の賃金として毎月労働者に支払われている場合は、最低賃金額と比較する賃金に含めることとなる
- ただし、処遇改善加算の目的等を踏まえ、最低賃金を満たしたうえで賃金の引上げを行うことが望ましい
つまり、毎月の処遇改善手当を足してようやく1,231円を超える設計は、最低賃金法の計算上は違反になりませんが、国が望ましいとする姿ではありません。処遇改善加算は職員の賃金を上乗せして改善するための加算だからです。
| 処遇改善加算の支給方法 | 最低賃金の計算 |
|---|---|
| 毎月定額の処遇改善手当 | 含める(ただし手当を除いても最低賃金を満たす設計が望ましい) |
| 基本給への組み込み | 含める |
| 賞与・一時金(年2回、年度末の精算など) | 含めない |
年度末の一時金で配分している事業所は、処遇改善加算をいくら支給していても最低賃金の判定には使えない点に注意してください。配分方法を変える場合は、処遇改善計画書や賃金規程との整合も確認が必要です。処遇改善加算を支給する事業所側の源泉徴収と会計処理は「処遇改善加算を支給する事業所の経理」で解説しています。
ポイント(5)就労継続支援A型の利用者とB型の工賃に最低賃金は適用される?
就労継続支援A型で雇用契約を結んでいる利用者は労働者なので、最低賃金が適用されます。就労継続支援B型の工賃は雇用契約にもとづく賃金ではないため、最低賃金は適用されません。
A型事業所は、職員だけでなく利用者の賃金も10月1日以降の労働分から1,231円以上にする必要があります。利用者の賃金は生産活動の収益から支払うのが原則のため、54円の引上げは生産活動収支に直接響きます。
例外として、精神または身体の障害により著しく労働能力の低い方については、使用者が都道府県労働局長の許可を受けた場合に限り、最低賃金を減額できる特例があります(最低賃金法7条1号)。許可は労働者ごとの個別の判断で、事業所の経営状況を理由に一律に使える制度ではありません。
A型の利用者賃金と生産活動収支の管理は「就労継続支援A型の最低賃金と赤字経営」、B型の工賃の会計処理は「就労継続支援B型の工賃は経費になる?」で詳しく解説しています。
人件費の増加は月次と資金繰りにどう織り込む?
最低賃金の引上げによる人件費の増加は、10月以降の月次の予算と資金繰り表に、社会保険料の事業主負担を含めた金額で先に織り込みます。 障害福祉サービスの報酬単価は最低賃金に連動して上がるわけではないため、何もしなければ人件費比率が上がり、利益と手元資金がその分だけ減ります。
増加額は、最低賃金を下回る職員の引上げ分だけでなく、最低賃金に近い職員とのバランスを保つための引上げ分と、社会保険料・労働保険料の事業主負担の増加分まで含めて年額で把握します。時給を54円引き上げると、月120時間勤務のパート職員1人あたり月6,480円、10人なら月64,800円・年777,600円の増加です(法定福利費を除く)。
人件費比率の目安と改善の考え方は「障害福祉事業所の人件費比率」、毎月の数字の締め方は「障害福祉事業所の月次決算の組み方」をご覧ください。
賃上げの支援策としては、厚生労働省の業務改善助成金があります。生産性向上に資する設備投資等を行い、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合に、費用の一部が助成される制度です。申請期限は地域別最低賃金の発効日の前日までとされる年度があり(令和8年度の大阪府の事業場は令和8年9月30日)、要件・助成率・上限額も年度ごとに変わるため、厚生労働省の業務改善助成金の案内と大阪労働局雇用環境・均等部で確認してください。
発効日までにやっておく5つのこと
最低賃金の改定への対応は、発効日(大阪府は10月1日)を含む給与計算期間が始まる前に、所定労働時間の確定・全職員の時間単価の一覧化・給与ソフトの更新・資金繰り表への反映まで終えておくのが基本です。 次の順に進めます。
- 所定労働時間を確定する:年間所定労働日数と1日の所定労働時間から、1か月平均所定労働時間を出す
- 全職員の時間単価を一覧にする:時給者・月給者・固定残業代つきの職員を、除外する手当を引いたうえで時間単価に換算する
- 処遇改善手当を除いた単価も並べる:毎月の処遇改善手当を除いても最低賃金(大阪府は1,231円)以上かを確認する
- 給与ソフトと雇用契約書を更新する:発効日を含む計算期間から新しい単価が反映されるようにし、変更後の賃金を職員に説明する(賃金規程の改定は社会保険労務士と連携)
- 人件費の増加額を資金繰り表に入れる:引上げ額(時給者は引上げ額 × 月間の労働時間、月給者は月額の差額)に、バランス調整の引上げ分と社会保険料・労働保険料の事業主負担の増加分を加え、月額に12を掛けた年額で月次の予算と資金繰り表に反映する
まとめ
- 大阪府の最低賃金は令和8年(2026年)10月1日から時間額1,231円で、改定前の1,177円から54円の引上げです。
- 月給者は「対象となる賃金 ÷ 1か月平均所定労働時間」で時間単価に換算し、通勤手当・家族手当・精皆勤手当・時間外手当・賞与は除いて判定します。
- 固定残業代は最低賃金の計算に含めません。基本給を上げたら、固定残業代が設定時間数分をまかなえているかも確認します。
- 発効日が給与計算期間の途中でも、10月1日以降の労働分から1,231円以上が必要です。
- 毎月支払う処遇改善手当は最低賃金の計算に含まれますが、手当を除いても最低賃金を満たす設計が望ましいとされています。就労継続支援A型の利用者には最低賃金が適用され、B型の工賃には適用されません。
最低賃金の判定は、所定労働時間や手当の設計によって結論が変わります。人件費の増加が資金繰りに与える影響とあわせて、早めに専門家へご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 大阪府の最低賃金は2026年10月からいくらになりますか?
A. 大阪府の地域別最低賃金は、令和8年(2026年)10月1日から時間額1,231円です。改定前の1,177円から54円の引上げで、大阪府内の事業場で働くすべての労働者に雇用形態を問わず適用されます。金額は毎年改定されるため、最新の額は大阪労働局の案内でご確認ください。
Q. 就労継続支援A型の利用者にも最低賃金は適用されますか?
A. 就労継続支援A型で雇用契約を結んでいる利用者には、最低賃金が適用されます。例外は、都道府県労働局長の許可を受けた場合の減額の特例(最低賃金法7条)だけです。就労継続支援B型の工賃は雇用契約にもとづく賃金ではないため、最低賃金の適用はありません。
Q. 処遇改善加算の手当を足して最低賃金を超えていれば問題ありませんか?
A. 処遇改善加算を原資とする手当が毎月決まって支払われている場合、その手当は最低賃金と比較する賃金に含まれます。ただし厚生労働省・こども家庭庁のQ&Aは、処遇改善加算の目的を踏まえ、最低賃金を満たしたうえで賃金の引上げを行うことが望ましいとしています。賞与や一時金で支給している処遇改善加算は、最低賃金の計算に含められません。
Q. 通勤手当や固定残業代を含めれば最低賃金を超える場合は大丈夫ですか?
A. 通勤手当や固定残業代を含めて最低賃金を超えていても、適法とはいえません。最低賃金の対象は毎月支払われる基本的な賃金に限られ、通勤手当・家族手当・精皆勤手当・時間外や休日労働の賃金・深夜割増・賞与は除いて計算します。これらを除いた月額を1か月平均所定労働時間で割った時間単価で判定してください。
Q. 最低賃金の改定による人件費の増加は税理士に相談できますか?
A. 最低賃金の改定による人件費の増加額の試算、月次予算や資金繰り表への反映、加算の取得や稼働率を踏まえた収支の見直しは、税理士に相談できます。就業規則や賃金規程の作成・変更、労働局への許可申請などの手続は社会保険労務士の業務にあたるため、労務の手続は社会保険労務士と連携して進めることをおすすめします。
参考資料
- 大阪労働局|大阪府の最低賃金のお知らせ
- 厚生労働省|全ての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました(令和8年度)
- 厚生労働省|最低賃金の対象となる賃金
- 厚生労働省・こども家庭庁|福祉・介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)(令和8年4月9日事務連絡・福井県掲載)
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