就労継続支援A型の最低賃金と赤字経営|賃金は生産活動収益から払う原則を税理士が解説
就労継続支援A型(以下、A型)は、利用者と雇用契約を結ぶサービスです。だからこそ、B型にはない「最低賃金」という大きな経営課題があります。「報酬は入ってくるのに、利用者の賃金を払うと赤字になってしまう」――A型の経営者から、こうしたご相談を本当によくいただきます。
この記事では、A型の最低賃金規制と、「利用者の賃金は生産活動の収益から払う」という大原則、そして黒字化のポイントを、大阪・柏原市の障害福祉専門税理士が解説します。結論から言えば、A型経営の鍵は生産活動の収支を、利用者に支払う賃金の総額以上にできるかにあります。
就労継続支援A型とB型は何が違う?|雇用契約と最低賃金
就労継続支援A型とは、一般企業などでの就労が難しい障害のある方と「雇用契約」を結び、働く場を提供するサービスです。 ここがB型との決定的な違いになります。
- A型:雇用契約あり → 労働基準法・最低賃金法が適用 → 「賃金」を支払う
- B型:雇用契約なし → 最低賃金の縛りなし → 「工賃」を支払う
A型は利用者が「労働者」として働くため、最低賃金以上の賃金を支払う義務があります。そのぶん経営はB型より一段シビアになり、「働く場をつくる」だけでなく「賃金を生み出す事業をつくる」という視点が欠かせません。
A型の賃金は最低賃金以上が必須?|大阪府の最低賃金
結論として、A型の利用者に支払う賃金は、地域別最低賃金以上でなければなりません。 障害があることを理由に最低賃金を下回ることは、原則としてできません。
大阪府の地域別最低賃金は、2025年10月16日から時間額1,177円です(改定前は1,114円)。最低賃金は毎年秋に改定されるため、最新額は必ず大阪労働局の案内でご確認ください。
なお、生産性などの事情で最低賃金を一律に支払うことが難しい場合に備えて、「最低賃金の減額特例許可」という制度もありますが、これは都道府県労働局長の許可が必要な例外的な仕組みです。原則は「最低賃金以上」と考えておきましょう。
利用者の賃金はどこから払う?|生産活動の収益から払うのが大原則
ここがA型経営の核心です。指定基準(指定障害福祉サービス基準 第192条)では、生産活動に係る事業の収入から必要な経費を差し引いた額が、利用者に支払う賃金の総額以上となるようにしなければならないと定められています。
さらに重要なのが、利用者へ支払う賃金に、自立支援給付(訓練等給付費=国保連から入る報酬)を充てることは原則として認められていないという点です(災害などやむを得ない場合の例外を除きます)。
つまり、「報酬で賃金を埋め合わせる」ことは原則できず、賃金の原資は生産活動で稼ぎ出す必要があるのです。報酬は職員の人件費や事業所の運営に充てるもの、利用者の賃金は生産活動の収益から――この役割分担が、A型が赤字になりやすい最大の理由になっています。
生産活動が赤字だとどうなる?|経営改善計画書の提出義務
生産活動の収支(収入−経費)が利用者の賃金総額を下回った場合、事業所は「経営改善計画書」を作成し、指定権者へ提出する義務があります。 現状の分析、1年後の目標、改善策(販路拡大・営業強化・経費の見直しなど)を示すものです。
この状態が改善されないまま続くと、勧告・命令を経て、最終的には指定の取消・停止の対象にもなり得ます。また、次に説明する報酬のスコア評価でも不利になります。「赤字でも報酬で回ればいい」という考え方は、A型では通用しないと理解しておきましょう。
令和6年度の報酬改定で何が変わった?|スコア方式と生産活動収支の評価
A型の基本報酬は、令和6年度(2024年度)報酬改定で「スコア方式」が見直されました。スコア方式とは、次のような複数の評価項目の合計点で、1日あたりの報酬単価が決まる仕組みです。
- ① 1日の平均労働時間
- ② 生産活動(生産活動収支の状況)
- ③ 多様な働き方
- ④ 支援力向上
- ⑤ 地域連携活動
令和6年度の改定では、労働時間の長い事業所をより高く評価する方向と、生産活動の収支がプラスなら加点・マイナスなら減点という評価が強化されました。生産活動収支がマイナスの事業所は、報酬の面でも不利になる仕組みです。各項目の具体的な配点は改定や通知で変わるため、最新の資料でご確認ください。
A型を黒字化する3つのポイント
A型を安定経営につなげるために、税理士の視点で押さえておきたいのは次の3つです。
- 生産活動の収益を、賃金総額以上に引き上げる — 受託作業の単価交渉、自主製品の販路拡大など。利用者賃金の原資は、ここでしか生み出せません。
- 職員の人件費率を管理する — 報酬は職員人件費と運営に充てる原資です。配置は基準を満たしつつ、過剰にならないよう管理することが黒字化の鍵になります。
- 就労支援事業会計で区分経理する — 生産活動と福祉事業を区分して把握し、どの作業が利益を生んでいるかを「見える化」します。製造に従事した利用者の賃金は製造原価、販売に従事した分は販管費、というように区分して採算を管理します。
まとめ
- A型は雇用契約を結ぶため、利用者に最低賃金以上の賃金を支払う義務がある(大阪府は2025年10月16日から時間額1,177円。最新額は要確認)。
- 利用者の賃金は生産活動の収益から払うのが大原則。自立支援給付(報酬)を賃金に充てることは原則できない(指定基準第192条)。
- 生産活動の収支が賃金総額を下回ると、経営改善計画書の提出義務。改善されないと指定取消などのリスクもある。
- 令和6年度改定のスコア方式では、生産活動収支のプラス・マイナスが報酬に影響する。
- 黒字化の鍵は、生産活動収益を賃金総額以上に引き上げ、人件費を管理し、区分経理で採算を見える化すること。
よくある質問(FAQ)
Q. 就労継続支援A型とB型の一番の違いは何ですか?
A. 雇用契約の有無です。A型は雇用契約を結ぶため労働基準法・最低賃金法が適用され、最低賃金以上の「賃金」を支払います。B型は雇用契約がなく、最低賃金の縛りのない「工賃」を支払います。
Q. A型の利用者の賃金は、報酬(国保連からの入金)から払ってもよいですか?
A. 原則として認められていません。指定基準上、利用者の賃金は生産活動の収益から支払うのが原則で、自立支援給付(訓練等給付費)を賃金に充てることはできません(災害などやむを得ない場合の例外を除きます)。
Q. 大阪府の最低賃金はいくらですか?
A. 2025年10月16日から時間額1,177円です(改定前は1,114円)。最低賃金は毎年秋に改定されるため、最新額は大阪労働局の案内で必ずご確認ください。
Q. 生産活動が赤字になったらどうなりますか?
A. 生産活動の収支が利用者賃金の総額を下回ると、経営改善計画書を作成・提出する義務が生じます。改善されない状態が続くと、勧告・命令を経て指定の取消・停止の対象になり得ます。
Q. A型を黒字にするにはどうすればよいですか?
A. 生産活動の収益を賃金総額以上に引き上げること、職員の人件費率を管理すること、就労支援事業会計で区分経理して採算を見える化することの3つが基本です。
参考資料
就労継続支援A型の経営・賃金管理なら、専門の税理士にご相談ください
Hands On会計事務所は、大阪府柏原市を拠点に、障害福祉事業者(就労継続支援A型・B型、放課後等デイサービス、児童発達支援、グループホームなど)を専門にサポートしている税理士事務所です。A型でいちばん難しい「生産活動の収支と利用者賃金のバランス」を、就労支援事業会計の区分経理から月次でチェックし、生産活動が赤字に傾く前に手を打てるよう伴走します。経営改善計画書の作成、人件費率の管理、報酬スコアを踏まえた事業設計まで、現場を知る税理士がサポートします。支援員としての現場経験をもとに専門用語をかみくだいてご説明し、個別支援計画AIや予約管理システムといったITツールは顧問先に無償でご提供しています。柏原市・八尾市・東大阪市・藤井寺市・羽曳野市・松原市・大阪市・堺市をはじめ大阪府全域に対応し、初回相談は無料です。まずはお気軽にお問い合わせください。
執筆・監修:Hands On会計事務所(税理士事務所/大阪府柏原市)
障害福祉事業者(就労継続支援A型・B型、放課後等デイサービス、児童発達支援、グループホームなど)の税務・会計・加算を専門に支援する税理士事務所です。最終更新日:2026年6月22日
