障害福祉の記録・書類の保管期間|実績記録票5年・帳簿7年を税理士が解説
「支援記録は5年でいいと聞いたけれど、領収書も5年で捨てていいの?」「実績記録票はいつから5年数えるの?」——障害福祉事業所の管理者の方から、こうしたご相談をよくいただきます。この記事では、障害福祉事業所で発生する書類の保管期間を、根拠となる法令ごとに一覧で整理します。結論として、福祉系の記録はサービスを提供した日から5年、税務の帳簿書類は7年(欠損金があれば10年)、労務の書類は5年(当分の間3年)と年数が異なり、一律に5年で処分すると税務上の問題が生じます。
障害福祉事業所の書類の保管期間は何年?|根拠法令別の一覧表
障害福祉事業所の書類の保管期間は「福祉系5年・税務系7年(欠損金があれば10年)・労務系5年(当分の間3年)」の3系統に分かれており、それぞれ根拠となる法令も起算日も異なります。 全体像は次のとおりです。
| 書類の系統 | 主な書類 | 保管期間 | 起算日 | 根拠 |
|---|---|---|---|---|
| 障害福祉サービス | 個別支援計画、サービス提供の記録(実績記録票)、市町村への通知に係る記録、身体拘束等の記録、苦情の内容等の記録、事故の状況・処置の記録 | 5年 | サービスを提供した日 | 障害者総合支援法に基づく指定基準(平成18年厚生労働省令第171号)/大阪府条例(権限移譲市の事業所は当該市の条例) |
| 障害児通所支援(放課後等デイ・児童発達支援) | 児童発達支援計画・放課後等デイサービス計画、提供の記録、市町村への通知に係る記録、身体拘束等の記録、苦情・事故の記録 | 5年 | サービスを提供した日 | 児童福祉法に基づく指定通所支援基準(平成24年厚生労働省令第15号) |
| 税務(法人) | 総勘定元帳・仕訳帳などの帳簿、請求書、領収書、契約書、棚卸表 | 7年 | 確定申告書の提出期限の翌日 | 法人税法(国税庁 No.5930) |
| 税務(欠損金がある年度) | 上記と同じ帳簿書類 | 10年 | 確定申告書の提出期限の翌日 | 法人税法(青色欠損金が生じた事業年度) |
| 労務 | 労働者名簿、賃金台帳、雇入れ・解雇・災害補償・賃金に関する重要書類、タイムカード | 5年(当分の間3年) | 書類ごとに異なる(下記参照) | 労働基準法第109条・附則(経過措置)/労働基準法施行規則第56条 |
| 社会福祉法人の法人運営 | 会計帳簿と事業に関する重要な資料 | 10年 | 会計帳簿の閉鎖の時 | 社会福祉法第45条の24第2項 |
| 社会福祉法人の法人運営 | 計算書類等(計算書類・事業報告・附属明細書・監査報告) | 5年(主たる事務所) | 定時評議員会の日の2週間前の日 | 社会福祉法第45条の32第1項 |
| 社会福祉法人の法人運営 | 理事会・評議員会の議事録 | 10年(主たる事務所) | 理事会・評議員会の日 | 社会福祉法第45条の15第1項・第45条の11第2項 |
書類を捨てるときは、必ずこの一覧で系統を確認してください。 同じ月に発生した書類でも、系統が違えば処分できる時期が違います。
この論点でお困りではありませんか?
どの書類を何年残すのかを、実地指導と税務調査の両方に耐える形で一覧に落とし込みます。処分してよい書類と、電子化してよい書類の線引きもあわせて整理できます。
実績記録票の保管期間は何年?|サービスを提供した日から5年
実績記録票の保管期間は、サービスを提供した日から5年間です。 根拠は、障害者総合支援法に基づく指定基準(平成18年厚生労働省令第171号)と、これを受けた各自治体の条例です。
実績記録票とは、いつ・誰に・どのサービスを提供したかを日ごとに記録し、国保連への請求根拠となる書類です。 大阪府の場合、「大阪府指定障害福祉サービス事業者の指定並びに指定障害福祉サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準を定める条例」に、各サービスの「記録等の整備」として「当該指定〜を行った日から五年間保存しなければならない」と定められています。放課後等デイサービス・児童発達支援も、児童福祉法に基づく指定通所支援基準(平成24年厚生労働省令第15号)で「提供した日から五年間」とされています。
実績記録票のほかに、同じ5年間の保存対象となるのは次のような記録です。
- 個別支援計画(児童発達支援計画・放課後等デイサービス計画)
- サービス提供の記録
- 市町村への通知に係る記録
- 身体拘束等を行った場合の記録
- 苦情の内容等の記録
- 事故の状況および事故に際して採った処置についての記録
- 従業者、設備、備品および会計に関する諸記録
なお、「完結の日から5年」と説明されることがありますが、これは介護保険分野などで用いられる言い回しで、障害福祉サービスの国の基準は「提供した日から5年」です。自治体の条例で保管期間や起算日を上乗せしている場合もあるため、必ず指定権者(大阪府、または柏原市・東大阪市など権限移譲を受けた市)の条例と手引きで確認してください。
税務の帳簿書類は何年保管する?|原則7年・欠損金があると10年
法人が保管する帳簿書類は、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間の保存が必要です。青色申告書を提出した事業年度で欠損金額が生じた場合は、10年間に延長されます(国税庁 No.5930 帳簿書類等の保存期間)。
起算日が「提供した日」ではなく「確定申告書の提出期限の翌日」である点に注意してください。3月決算の法人であれば申告期限は原則5月末なので、その事業年度の帳簿書類は約7年2か月保管することになります。
障害福祉事業所でとくに混同しやすいのが、国保連への請求関係書類です。請求の根拠となるサービス提供記録は福祉系(5年)ですが、給付費の入金を記録した会計帳簿や、経費の領収書・請求書は税務系(7年)です。同じ月の書類でも、系統が違えば処分できる時期が違うと覚えてください。
開業初期に赤字(欠損金)が出ている事業所は、その事業年度の帳簿書類が10年保存になります。障害福祉事業は開業から入金までのタイムラグで初年度が赤字になりやすいため、該当するケースは少なくありません。決算まわりの確認事項は「障害福祉事業所の決算で税理士がチェックする5つのポイント」もあわせてご覧ください。
社会福祉法人の書類は何年保管する?|法人運営の書類は最長10年
社会福祉法人であっても、サービスの記録は5年、税務の帳簿書類は7年(欠損金があれば10年)で、株式会社やNPO法人と変わりません。ただし社会福祉法人には、社会福祉法に基づく法人運営書類の保存義務が別に上乗せされます。 「社会福祉法人だから書類はすべて5年」という理解は誤りです。
社会福祉法が定める主な保存・備置きの年数は次のとおりです。
| 書類 | 年数 | 起算日・備置き場所 | 条文 |
|---|---|---|---|
| 会計帳簿および事業に関する重要な資料 | 10年間保存 | 会計帳簿の閉鎖の時から | 社会福祉法第45条の24第2項 |
| 計算書類等(計算書類・事業報告・これらの附属明細書・監査報告) | 5年間備置き(主たる事務所) | 定時評議員会の日の2週間前の日から | 社会福祉法第45条の32第1項 |
| 計算書類等の写し | 3年間備置き(従たる事務所) | 同上 | 社会福祉法第45条の32第2項 |
| 理事会の議事録等 | 10年間備置き(主たる事務所) | 理事会の日から | 社会福祉法第45条の15第1項 |
| 評議員会の議事録 | 10年間備置き(主たる事務所) | 評議員会の日から | 社会福祉法第45条の11第2項 |
とくに注意したいのが会計帳簿の10年保存です。法人税法の7年(欠損金があれば10年)とは根拠も起算日も異なり、社会福祉法では「会計帳簿の閉鎖の時から10年間」と定められています。社会福祉法人は、税務の7年が過ぎても会計帳簿を処分できません。
一般社団法人・NPO法人など他の法人形態では、それぞれの根拠法で保存義務の内容が異なります。所轄庁の指導内容とあわせて、法人形態ごとに確認してください。
労務の書類は何年保管する?|労働基準法は5年(当分の間3年)
労働者名簿、賃金台帳、雇入れ・解雇・災害補償・賃金その他労働関係に関する重要な書類は、労働基準法第109条により5年間の保存が義務づけられていますが、経過措置により当分の間は3年間とされています。
2020年4月の法改正で「3年」から「5年」に延長されましたが、附則の経過措置により当分の間は3年でよいという扱いが続いています。ただし、将来的に5年へ移行する前提の経過措置であり、未払い残業代の時効も延長されている以上、実務上は最初から5年で保管しておくのが安全です。
起算日は書類ごとに異なり、労働基準法施行規則第56条で次のように定められています。
| 書類 | 起算日 |
|---|---|
| 労働者名簿 | 労働者の死亡、退職または解雇の日 |
| 賃金台帳 | 最後の記入をした日 |
| 雇入れまたは退職に関する書類 | 労働者の退職または死亡の日 |
| 災害補償に関する書類 | 災害補償を終わった日 |
| 賃金その他労働関係に関する重要な書類 | その完結の日 |
なお、賃金台帳と賃金その他労働関係に関する重要な書類は、その記録に係る賃金の支払期日が上記の日より遅い場合、支払期日が起算日になります(同条第2項)。「完結の日から」という起算日は労務の書類にはありますが、障害福祉サービスの記録にはないという違いに注意してください。
障害福祉事業所では、夜勤・宿直を含むシフトの記録やタイムカードが労務トラブルの証拠になります。タイムカードも「賃金その他労働関係に関する重要な書類」に含まれるため、給与計算の元データとして5年分は残しておきましょう。
現場から見ると|実地指導の前に必ず見返す書類
支援員として実地指導の対応を担当していたころ、指導の前に必ず見返していたのは、支援記録・実績記録票・勤務体制一覧表・車両運行表・工賃明細の5点でした。指摘を受けずに済んだのは、この5点を日常的にそろえていたからだと思っています。
現場の実感として、保管年数を意識している職員はほとんどいません。5年を過ぎても捨てることはまずなく、書類は増える一方です。また、電子化が進んでいる印象を持たれるかもしれませんが、実際には紙で保管している事業所が圧倒的多数です。勤務していた自治体の実地指導も紙で確認する運用でした。年数を正しく知ることは、捨てるためというより「どこまでを確実に残すか」を決めるために役立ちます。
記録は電子化してよい?|運営基準の電磁的記録と電子帳簿保存法
障害福祉サービスの記録も税務の帳簿書類も電子化できますが、根拠となる法令が違うため、満たすべき要件も別々です。 それぞれ次のように整理します。
| 対象 | 電子化の根拠 | 主な要件 |
|---|---|---|
| 障害福祉サービスの記録 | 指定基準の電磁的記録・電磁的方法に関する規定(令和3年度報酬改定で整備) | 必要に応じて出力できること、改ざん防止措置を講じること、電磁的方法で記録すること |
| 国税関係帳簿・書類 | 電子帳簿保存法(電子帳簿等保存・スキャナ保存) | 訂正・削除履歴の保存、検索機能、スキャナ保存は解像度・タイムスタンプ等の要件 |
| 電子取引データ(メールで受け取った請求書など) | 電子帳簿保存法(電子取引) | 電子データのまま保存が義務(紙に印刷して保存する方法は認められない) |
とくに注意が必要なのが、電子取引データの保存義務です。メールで受領した請求書や、クラウド経由で発行された領収書は、印刷して紙で保管する方法が認められません(国税庁 電子帳簿等保存制度特設サイト)。売上高が一定額以下の事業者は検索要件が緩和されるなどの措置がありますが、「データはデータのまま残す」という原則は全事業者に適用されます。
支援記録のクラウドソフトは多くが改ざん防止と出力の要件を満たしていますが、「導入しているから自動的に基準を満たす」わけではありません。運用ルール(誰が入力し、誰が確認し、修正履歴をどう残すか)まで決めて初めて要件を満たします。実地指導で指摘されやすい書類の論点は「障害福祉事業所の実地指導で指摘される書類ミスTOP5」で解説しています。
電子化を進める5つのステップ
紙と電子が併存している状態は、探す手間が二重にかかる最も非効率な形です。次の順番で移行してください。
- 書類を系統ごとに棚卸しする:福祉系(5年)・税務系(7年/10年)・労務系(5年)・法人運営系(社会福祉法人は最長10年)に分類し、それぞれの起算日を一覧にします。
- 保管期限が切れた書類を処分する:一覧に基づいて処分できるものを確定し、個人情報を含む書類は溶解処理など安全な方法で廃棄します。
- 福祉系はクラウド支援記録ソフトへ移行する:改ざん防止・出力機能・修正履歴の有無を導入前に確認します。
- 税務系は電子帳簿保存法対応の会計ソフトに統一する:とくにメール・クラウドで受け取った請求書と領収書は、受領した時点でデータのまま保存する運用にします。
- 社内ルールを文書化して研修する:ファイル名の付け方、保存先、確認者、修正時の記録方法を書面にし、スタッフ全員に共有します。
書類管理は、実地指導だけでなく税務調査でも見られる部分です。どの書類を何年残すべきか判断に迷う場合は、障害福祉に強い税理士に相談しながら整理すると確実です。
まとめ
障害福祉事業所の書類の保管期間のポイントは、次の5点です。
- 実績記録票を含む福祉系の記録は、サービスを提供した日から5年です(厚生労働省令第171号・大阪府条例)。放課後等デイサービス・児童発達支援も同じく5年です(厚生労働省令第15号)。
- 税務の帳簿書類は7年、欠損金が生じた事業年度は10年で、起算日は確定申告書の提出期限の翌日です。
- 社会福祉法人は会計帳簿を10年、理事会・評議員会の議事録を10年保存・備置きする義務が社会福祉法で別に定められています。
- 労務の書類は労働基準法で5年(当分の間3年)ですが、実務上は最初から5年で運用するのが安全です。
- 電子取引データは紙に印刷しての保存が認められず、データのまま保存が義務です。
年数と起算日は書類の系統によって違います。処分の判断に迷う場合は、廃棄する前に専門家へご確認ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 実績記録票の保管期間は何年ですか?
A. 実績記録票の保管期間は、サービスを提供した日から5年間です。障害者総合支援法に基づく指定基準(平成18年厚生労働省令第171号)と各自治体の条例で、サービス提供の記録は5年間保存すると定められています。放課後等デイサービス・児童発達支援も児童福祉法に基づく基準で同じく5年間です。
Q. 障害福祉の書類は「完結の日から5年」ですか、「提供した日から5年」ですか?
A. 障害福祉サービスの国の基準は「提供した日から5年」です。「完結の日から」という表現は介護保険分野などで用いられるもので、障害福祉サービスの指定基準および大阪府条例は「行った日(提供した日)から五年間」と定めています。ただし自治体が条例で上乗せしている場合があるため、指定権者の条例で最終確認してください。
Q. 社会福祉法人の書類の保管期間は何年ですか?
A. 社会福祉法人の書類は、サービスの記録が5年、税務の帳簿書類が7年(欠損金があれば10年)で他の法人形態と同じですが、これに加えて社会福祉法による保存義務があります。会計帳簿および事業に関する重要な資料は閉鎖の時から10年間(第45条の24第2項)、計算書類等は主たる事務所で5年間(第45条の32第1項)、理事会・評議員会の議事録は10年間(第45条の15第1項・第45条の11第2項)です。
Q. 領収書は5年で処分してもよいですか?
A. 領収書は5年で処分できません。領収書は税務の帳簿書類にあたるため、確定申告書の提出期限の翌日から7年間(青色申告で欠損金額が生じた事業年度は10年間)の保存が必要です(国税庁 No.5930)。福祉系の5年と混同しないようご注意ください。
Q. メールで届いた請求書は印刷して保管してよいですか?
A. メールで届いた請求書は印刷しての保管が認められません。メールやクラウド経由で受け取った請求書・領収書は電子取引データにあたり、電子帳簿保存法により電子データのまま保存することが義務づけられています。詳細な保存要件は国税庁の電子帳簿等保存制度特設サイトでご確認ください。
参考資料
- 厚生労働省|障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)
- 大阪府|大阪府指定障害福祉サービス事業者の指定並びに指定障害福祉サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準を定める条例
- e-Gov法令検索|児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成24年厚生労働省令第15号)
- e-Gov法令検索|社会福祉法(第45条の24・第45条の32)
- e-Gov法令検索|労働基準法施行規則(第56条 記録の保存期間の起算日)
- 国税庁|No.5930 帳簿書類等の保存期間
- 国税庁|電子帳簿等保存制度特設サイト
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