処遇改善加算を給与で支給するときの税務|源泉徴収・年末調整・売上計上の注意点を税理士が解説

処遇改善加算を給与で支給するときの税務|源泉徴収・年末調整・売上計上の注意点を税理士が解説

「処遇改善加算を職員の給与に上乗せしたいけれど、源泉徴収は必要なの?」「加算分だから非課税で処理していいの?」といったご相談を、障害福祉事業の経営者・管理者の方からよくいただきます。この記事では、事業所が処遇改善加算を”給与”として支給するときの会社側の税務処理を、源泉徴収・年末調整・売上計上の3点にしぼって解説します。結論として、処遇改善加算から支払う給与も通常の給与とまったく同じく源泉徴収・年末調整の対象であり、加算収入は入金された月ではなくサービスを提供した月に発生主義で売上計上します。

目次

処遇改善加算とは?|令和6年に一本化された賃金改善の仕組み

処遇改善加算とは、障害福祉サービスや介護の職員の賃金を引き上げるために、国が報酬(給付費)に上乗せして事業所へ支給する加算です。 事業所が受け取った加算額は、職員の賃金改善に充てることが法令で義務づけられています。

令和6年6月に、旧「処遇改善加算」「特定処遇改善加算」「ベースアップ等支援加算」の3つが「福祉・介護職員等処遇改善加算」に一本化され、区分Ⅰ〜Ⅳに整理されました。さらに令和8年6月施行の報酬改定で対象が広がるとされていますが、区分や要件の細部は改定で見直されるため、最新の内容は厚生労働省の資料でご確認ください。

制度全体の仕組みは、処遇改善加算の一本化をまとめた解説記事で詳しく説明しています。

処遇改善加算を給与で支給すると税金はかかる?

処遇改善加算を原資にして支払う給与・手当・一時金も、職員にとっては通常の「給与所得」であり、所得税・住民税の課税対象です。 「加算から出したお金だから非課税」という取扱いは一切ありません。

そのため、通常の給与と同じように源泉所得税を天引きし、事業所は源泉徴収義務者として毎月納付する必要があります(国税庁 No.2110「事業主がしなければならない源泉徴収」)。給与明細にも加算相当分を含めて記載し、後述する年末調整の対象に含めてください。

なお、職員一人ひとりの手取りが所得税・社会保険料でどのくらい変わるかは、処遇改善加算は所得税・社会保険でどう引かれる?の解説記事で詳しく扱っています。

毎月の上乗せと一時金(賞与)で源泉徴収はどう違う?

処遇改善加算を毎月の給与に上乗せする場合は「給与」として月々の源泉徴収税額表で天引きし、まとめて一時金で支給する場合は「賞与」として賞与用の算出率の表で源泉徴収します。 支給方法によって使う税額表と手続きが変わる点に注意しましょう。

支給方法使う税額表主な手続き
毎月の給与に上乗せ給与所得の源泉徴収税額表(月額表)毎月の源泉徴収・納付。月額が大きく変われば月額変更届の対象になる場合も
一時金(賞与)でまとめて支給賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(国税庁 No.2523)源泉徴収に加え、賞与支払届を年金事務所へ提出

賞与としてまとめて支給するときは源泉徴収税額の計算方法が毎月の給与と異なり、賞与支払届の提出を忘れると後から漏れを指摘されることがあるため注意してください。また、毎月の上乗せ・一時金のいずれも健康保険・厚生年金・雇用保険の算定基礎に含まれ、上乗せ額が大きいと標準報酬月額の等級が変わることがある点も押さえておきましょう。

処遇改善加算の給与は年末調整でどう扱う?

処遇改善加算から支払った給与・手当・一時金は、その年に支払った他の給与と合算して年末調整で精算します。 加算分だけを別枠で処理したり、年末調整から除外したりする必要はありません。

年末調整は、毎月の源泉徴収額の合計と、その人が1年間に納めるべき所得税額との差額を精算する手続きです(国税庁 No.2665「年末調整の対象となる人」)。処遇改善加算を原資とする支給も、通常の給与所得として1年分の給与総額に含めて計算すれば問題なく、加算分を特別扱いする必要はないと考えてよいでしょう。

会社の売上計上はいつ?入金月ではなくサービス提供月(発生主義)

処遇改善加算を含む障害福祉サービスの報酬(給付費)は、国保連から入金された月ではなく、サービスを提供した月に売上計上します(発生主義)。 ここは会計処理でとくに間違いやすいポイントです。

障害福祉サービス費や処遇改善加算の請求は、サービス提供の翌月に国保連へ行い、入金は実際のサービス提供月からおよそ2か月遅れます。この入金のタイミングで売上を立てる「入金主義」で処理するのは誤りです。売上はサービスを提供した月に計上し、まだ入金されていない金額は「未収入金(未収金)」として資産計上します。

たとえば4月に提供したサービスの加算は、実際の入金が6月ごろでも4月の売上として計上します。この考え方は決算期をまたぐときにとくに重要で、3月提供分は入金が5月であっても、3月末決算なら当期の売上に含めます。

加算収入をどの勘定科目で受け、どう仕訳するかは、処遇改善加算の勘定科目と仕訳の解説記事で具体的にまとめています。

加算収入と人件費は対応している?実績報告への備え

処遇改善加算は「受け取った加算額を、きちんと職員の賃金改善に充てたか」を年度ごとに実績報告する必要があり、帳簿上の加算収入と賃金改善額を突合できる状態にしておくことが重要です。 数字がずれると行政の確認で説明を求められることがあります。

ずれが起きやすい原因として、次のようなケースがよく見られます。

  • 加算収入を専用の勘定科目で分けていない(他の報酬に混ざり突合しづらい)
  • 賃金改善額に法定福利費(事業主負担の社会保険料)を含めるかどうかの認識違い
  • 支給時期と会計上の計上時期のずれ(例:3月提供分を翌年度の一時金で支給した場合の期ずれ)

こうしたずれを防ぐには、加算収入は「処遇改善加算収入」などの専用勘定で管理し、加算の入金と職員への支給を月ごとに一覧できる管理表を作っておくのがおすすめです。当事務所の顧問先には、こうした管理を簡単に行えるテンプレートをお渡ししています。

事業者が今やるべきことは?

明日から着手できる実務のステップを整理します。

  1. 加算から支払う給与・手当・一時金を給与明細と給与台帳に反映し、源泉徴収の対象に含める。
  2. 毎月の上乗せか一時金かを整理し、一時金なら賞与支払届の提出フローを確認する。
  3. 加算収入を発生主義(サービス提供月)で売上計上し、入金までは未収入金で管理する。
  4. 加算収入を専用の勘定科目に分け、賃金改善額との突合表を用意して実績報告に備える。
  5. 就業規則・賃金規程に加算の配分方法と支給時期を明記する(一時金の損金性の裏づけにもなります)。

処遇改善加算の給与処理や届出でお困りのときは、障害福祉に強い税理士を選ぶと、源泉徴収から実績報告まで安心して進められます。

まとめ

処遇改善加算を給与で支給するときの税務のポイントを整理します。

  1. 処遇改善加算から支払う給与も課税対象で、通常の給与と同じく源泉徴収が必要(非課税ではありません)。
  2. 毎月の上乗せは月額表、一時金は賞与用の算出率の表で源泉徴収し、一時金は賞与支払届も必要。
  3. 年末調整は他の給与と合算して精算すればよく、加算分を別枠にする必要はありません。
  4. 加算収入の売上計上はサービス提供月に発生主義で行い、国保連入金は約2か月遅れる(入金月に計上するのは誤り)。
  5. 加算収入と賃金改善額を突合できる管理体制を整え、実績報告に備える。

処遇改善加算は職員の待遇改善のための大切な制度ですが、税務・会計の処理を誤ると税務調査や実績報告で思わぬ指摘につながります。「うちの処理で合っているか不安」という方は、お気軽にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

Q. 処遇改善手当は非課税ですか?

A. 処遇改善手当は非課税ではありません。処遇改善加算を原資に支払う手当も職員にとっては給与所得であり、通常の給与と同じく所得税・住民税の課税対象で、事業所は源泉所得税を天引きして納付する必要があります。

Q. 処遇改善加算を給与で支給すると、職員の手取りはどのくらい引かれますか?

A. 処遇改善加算を給与で支給すると、所得税・住民税と社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険)が差し引かれます。手取りが減る具体的な金額は本人の給与額や扶養状況で変わるため、詳しくは処遇改善加算は所得税・社会保険でどう引かれるかの解説記事をご覧ください。

Q. 処遇改善加算は事業所の売上に計上しますか?

A. 処遇改善加算は事業所の売上(収益)として計上します。計上する月は国保連から入金された月ではなく、サービスを提供した月です(発生主義)。国保連の入金は約2か月遅れるため、未入金分は未収入金として管理します。

Q. 処遇改善加算を賞与でまとめて支給するとき、必要な届出はありますか?

A. 処遇改善加算を賞与(一時金)でまとめて支給するときは、賞与に対する源泉徴収を行ったうえで、賞与支払届を年金事務所へ提出する必要があります。届出を忘れると後から修正が生じることがあるため、支給のたびに提出を確認してください。


参考資料


処遇改善加算の給与処理や売上計上でお悩みなら、専門の税理士にご相談ください

Hands On会計事務所は、大阪府柏原市を拠点に、障害福祉事業者(就労継続支援A型・B型、放課後等デイサービス、児童発達支援、グループホームなど)を専門にサポートしている税理士事務所です。処遇改善加算を原資とする給与・一時金の源泉徴収、賞与支払届などの手続き、年末調整、加算収入の発生主義での売上計上、加算収入と賃金改善額の突合・実績報告への備えまで、現場を知る税理士が一気通貫でお手伝いします。支援員としての現場経験をもとに、専門用語をかみくだいてご説明しますので、税務が苦手な方もご安心ください。個別支援計画AIや予約管理システムといったITツールは顧問先に無償でご提供しており、事務負担の軽減にもつながります。柏原市・八尾市・東大阪市・藤井寺市・羽曳野市・松原市・大阪市・堺市をはじめ大阪府全域に対応し、初回相談は無料です。まずはお気軽にお問い合わせください。


執筆・監修:税理士 栗谷川 雄介(登録番号 第157826号)/Hands On会計事務所(税理士事務所・大阪府柏原市)

障害福祉事業者(就労継続支援A型・B型、放課後等デイサービス、児童発達支援、グループホームなど)の税務・会計・加算を専門に支援する税理士事務所です。最終更新日:2026年7月6日

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