グループホームの利用者預り金管理|税務調査で指摘されやすいポイント

グループホームの利用者預り金管理|税務調査で指摘されやすいポイント

グループホーム(共同生活援助)では、利用者の年金や工賃を事業所が管理する「預り金」業務が発生することがあります。預り金は事業者の財産ではなく、利用者個人の財産を預かっているだけです。この境界線を曖昧にすると、実地指導・税務調査で大きな指摘につながります。この記事では、預り金管理の実務ポイントを解説します。

目次

利用者預り金とは

グループホーム入居者の中には、自身で金銭管理が難しい方もいます。本人または家族の同意のもと、事業所が以下のような金銭を預かるケースがあります。

  • 年金(国民年金・障害基礎年金等)
  • 工賃・賃金(A型・B型事業所からの支払)
  • 一時的な小遣い・生活費
  • 医療費の立替分

これらは事業者の収入ではなく、利用者の財産を一時的に預かっているものです。

預り金管理で押さえるべき4つのポイント

① 利用者ごとに口座・通帳を分ける

最も基本のルールです。利用者ごとの預り金は、専用口座または利用者名義の口座で管理します。事業所の運営口座と混在させてはいけません。

望ましい管理NG例
利用者本人名義口座を事業所が管理事業所運営口座に入金
利用者ごとに通帳・印鑑を分ける全員分を1冊で管理
出納簿を利用者ごとに作成一覧表でまとめて記載

② 出納簿の整備

利用者ごとに「金銭出納簿」を作成し、すべての入出金を記録します。

記録項目:

  • 日付
  • 入出金額
  • 摘要(用途)
  • 残高
  • 取扱者の署名・押印

③ 領収書・支払証明書の保管

預り金から支払った医療費・買い物代金などは、必ず領収書を保管します。領収書が取れない少額支出(自販機等)は、購入品リストとして記録に残します。

④ 定期的な残高照合

月1回は通帳残高と出納簿残高を照合し、家族・後見人への定期報告を行うのが望ましい運用です。年に1回の残高証明書も発行できると、信頼性が高まります。

税務調査で指摘されやすいポイント

① 預り金口座と事業所口座の混在

事業所の運営収入と利用者預り金が同じ口座で動いていると、税務調査では「収入の一部を簿外にしている」と疑われます。事業者の売上にすべきものを預り金で処理している、と判断されるリスクもあります。

② 預り金を運営費に流用

緊急時に預り金を一時的に運営費に使う「立替」は厳禁です。仮に立替えても、即時の補填と帳簿記載が必要です。

③ 預り金収入の課税ミス

預り金そのものは事業者の収入ではないため、消費税・法人税の課税対象外です。事業者が預り金管理手数料として利用者から受け取る金銭は課税売上になります。

受領するお金課税区分
預り金(年金等)不課税(事業者収入ではない)
預り金管理手数料課税売上
グループホーム利用料(給付費・家賃・共益費)非課税売上
食材料費・日用品費の実費非課税売上
光熱水費の実費(専有部分・家賃と別建て)取扱いが分かれる(個別に確認が必要)

食材料費・日用品費の実費徴収は、共同生活援助という社会福祉事業として提供される便宜に要する費用にあたり、非課税として整理します。 一方、専有部分の光熱水費を家賃と別建てで受け取る場合は、非課税とする整理と課税とする整理の両方が成り立つため、どちらを採ったかを根拠とともに説明できる状態にしておくことが大切です。区分の根拠と判断のしかたは「障害者グループホームの消費税」で詳しく解説していますので、預り金の帳簿を整えるときはあわせてご確認ください。

実地指導で確認されるポイント

実地指導では、特に以下が確認されます。

  • 預り金管理規程の整備有無
  • 利用者・家族との同意書
  • 預り金口座の通帳の現物
  • 出納簿の記載状況
  • 通帳と出納簿の残高照合履歴
  • 年1回の残高証明書発行記録

これらが整備されていないと、運営上の指摘事項となり、改善報告書の提出を求められます。

適切な預り金管理体制を構築するための実務ステップ

  1. 預り金管理規程の作成:管理対象・取扱手順・責任者を明文化
  2. 同意書の取得:本人または家族の同意を書面で保存
  3. 口座開設:利用者本人名義の口座を作成し、通帳を分ける
  4. 出納簿フォーマットの統一:エクセル・専用ソフトで標準化
  5. 複数人によるチェック体制:取扱者と確認者を分ける
  6. 定期的な家族報告:月次または四半期ごとに報告

まとめ

利用者預り金は、事業者の財産ではなく利用者個人の財産です。事業所の運営費と分離して管理することが基本中の基本です。

実地指導・税務調査ではここを必ず見られます。「うちは小規模だから大丈夫」ではなく、規模に関わらずきちんとした管理体制を構築しましょう。預り金管理に不安がある場合は、専門家にご相談ください。

参考資料


障害福祉事業の税務・会計でお困りの方へ Hands On会計事務所では、初回相談を無料で承っております。 大阪府全域の障がい福祉事業者様からのご相談をお待ちしております。


執筆・監修:税理士 栗谷川 雄介(登録番号 第157826号)/Hands On会計事務所(税理士事務所・大阪府柏原市)

障害福祉事業者(就労継続支援A型・B型、放課後等デイサービス、児童発達支援、グループホームなど)の税務・会計・加算を専門に支援する税理士事務所です。最終更新日:2026年8月16日

執筆者:税理士 栗谷川 雄介(登録番号 第157826号)/Hands On会計事務所

障害福祉に携わって通算10年。障害福祉を専門とする税理士法人で6年間、事業所の税務・会計を担当したのち、就労継続支援B型・生活介護の多機能型事業所に4年間勤務しました。目標工賃達成指導員として支援記録の整備・国保連への請求・実地指導対応・経理を担当し、見守り支援や利用者の送迎にも携わっています。2025年10月にHands On会計事務所を開業しました。

国保連への請求が現場でどう回っているのか、実地指導の当日までに何が起きるのか、経営者や職員がどう動いているのか——税務を担当していたときには見えなかったことを、内側から4年間経験しています。制度の解説だけでなく、現場で実際に何が起きているかを踏まえてお答えできるのが強みです。

大阪府柏原市を拠点に、就労継続支援・放課後等デイサービス・児童発達支援・グループホームの税務・会計・加算を専門に支援しています。大阪府全域対応/初回相談は無料です。障害福祉専門の税理士事務所についてご相談はこちら

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