障害福祉事業所の年末調整で気をつける5つのこと|障害者控除・扶養控除・処遇改善手当を税理士が解説

障害福祉事業所の年末調整で気をつける5つのこと|障害者控除・扶養控除・処遇改善手当を税理士が解説

「処遇改善手当は年末調整でどう扱うの?」「職員のご家族に障害者手帳をお持ちの方がいるけれど、控除は?」——年末が近づくと、障害福祉事業所からこうしたご相談をよくいただきます。障害福祉は職員数が多く、パートや中途入社の方、障害のあるご家族を持つ職員も少なくないため、年末調整の論点が一般企業より複雑になりがちです。

この記事では、年末調整でつまずきやすい点を、処遇改善手当・障害者控除・扶養控除・パート職員の壁・提出書類の5つに整理します。結論として、処遇改善手当は「給与」として年末調整に含め、本人やご家族が障害者に当てはまる場合の障害者控除・扶養控除の適用もれを防ぐことが、最も気をつけるべき点です。

目次

障害福祉事業所の年末調整とは?|対象になる人・ならない人

年末調整とは、従業員の毎月の給与から天引き(源泉徴収)してきた所得税を、1年間の給与総額と各種控除にもとづいて正しい税額に精算する手続きです。 毎月の源泉徴収は概算のため、年末に生命保険料控除や扶養控除などを反映して過不足を精算し、多くの場合は払いすぎた税金が12月または1月の給与で還付されます。

対象になるのは、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出し、年末まで在籍している従業員です。正社員だけでなく、パート・アルバイトも要件を満たせば対象になります。一方、給与収入が2,000万円を超える人や、年の途中で退職して他社へ移った人などは原則対象外です。障害福祉事業所は常勤・非常勤・世話人など働き方が多様なため、まず「誰を年末調整するか」の線引きが最初の関門になります。

年末調整で障害者控除や扶養控除の適用もれが心配な場合は、障害福祉専門の税理士にご相談ください。初回無料相談はこちら

(1)処遇改善手当や各種手当は年末調整の対象?(非課税ではありません)

処遇改善加算を原資に支給する処遇改善手当は「給与」であり、他の手当と同じく所得税の課税対象として年末調整に含めます。 「加算」という名称から非課税と誤解されがちですが、給与・賞与・一時金として職員に支給した処遇改善手当は、通常の給与と同様に源泉徴収し、年末調整で1年分を精算します。

区分具体例年末調整での扱い
給与として課税基本給、処遇改善手当、資格手当、残業手当、深夜手当、賞与給与総額に含めて精算
一定額まで非課税通勤手当(公共交通機関で月15万円まで等)、出張旅費非課税分は総額から除く

処遇改善手当を一時金と毎月手当のどちらで配るかによる税・社会保険の扱いは処遇改善加算の配分方法(一時金と毎月手当の税務と社会保険)、制度全体の仕組みは処遇改善加算の一本化で何が変わった?で解説しています。処遇改善手当を賞与でまとめて支給している事業所は、賞与分の源泉徴収もれがないか年末調整前に確認しましょう。

なお、職員の方から「手当が出たのに手取りが増えていない」と言われたときの説明材料は、処遇改善手当は非課税?税金はいくら引かれる?に額面別の手取り早見表としてまとめてあります。支給前に配布資料として渡しておくと、年末調整の時期の問い合わせをかなり減らせます。

(2)従業員本人や家族が障害者なら「障害者控除」を忘れていませんか?

障害者控除とは、従業員本人・同一生計配偶者・扶養親族が所得税法上の障害者に当てはまるとき、1人につき所得から一定額を差し引ける控除です。 障害福祉の現場は、障害のあるご家族を介護しながら働く職員も多く、適用もれが起きやすい論点です。年末調整で従業員から申告があれば事業所側で適用します。

所得税の障害者控除の区分と控除額は次のとおりです(国税庁 No.1160)。

区分対象のめやす控除額(所得税)
障害者障害者手帳の交付を受けている等27万円
特別障害者重度の障害がある一定の人40万円
同居特別障害者特別障害者で本人・配偶者・親族と同居75万円

ここで挙げたのは所得税の控除額で、住民税の障害者控除額は別に定められています。従業員本人が障害者の場合も対象で、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の障害者欄に記入してもらえば年末調整に反映できます。なお、要件や金額の細部は改定で見直されることがあるため、最新の情報をご確認ください。

(3)扶養控除・配偶者控除の申告漏れが多いのはなぜ?

扶養控除・配偶者控除は、生計を一にする家族の年齢や所得に応じて所得から差し引ける控除で、従業員の申告に頼るため申告もれが起こりやすい項目です。 申告書への書き忘れや、扶養親族の状況が年内に変わったことに気づかないと、控除がもれて税金を払いすぎます。配偶者や親、大学生の子などの状況を確認してもらいましょう。

所得税の扶養控除の区分と控除額は次のとおりです(国税庁 No.1180)。

区分年齢のめやす控除額(所得税)
一般の控除対象扶養親族16歳以上38万円
特定扶養親族19歳以上23歳未満63万円
老人扶養親族(同居老親等以外)70歳以上48万円
老人扶養親族(同居老親等)70歳以上・同居58万円

配偶者がいる場合は、配偶者控除(最高38万円)または配偶者特別控除の対象になることがあり、「給与所得者の配偶者控除等申告書」で判定します(可否は配偶者と本人の所得で変わります)。なお、扶養に入れる家族の所得要件(合計所得金額の基準)は令和7年分から引き上げられ、近年の税制改正で見直しが続いているため、最新の基準は国税庁の資料でご確認ください。

(4)中途入社の職員やパート職員は年末調整でどうする?

中途入社の職員は前職の源泉徴収票を回収し、前職分と自社分を合算して年末調整します。パート職員も扶養控除等申告書を出していれば対象です。 障害福祉は職員の入れ替わりや掛け持ち勤務が多く、この2点を押さえないと精算がずれます。中途入社の職員は前職給与も合算しないと正しい税額が出ないため、前職の源泉徴収票を必ず提出してもらいましょう。回収できないと自社では年末調整できず、本人が確定申告をすることになります。

パート職員は、いわゆる「収入の壁」に注意します。壁には性質の異なる2種類があります。

  • 税法上の壁:配偶者控除・扶養控除に入れるかどうかの所得基準。令和7年分から扶養親族等の合計所得金額の要件が引き上げられ、給与収入でいう壁の水準も上がりました。金額は改正が続いているため、国税庁の最新情報をご確認ください。
  • 社会保険の壁(106万円・130万円):一定の要件で社会保険の加入義務が生じる基準。税とは別のしくみで、税制改正では変わりません。

「扶養の範囲で働きたい」という希望がある職員には、税と社会保険で壁が違うことを整理して案内すると、シフト調整のトラブルを防げます。

(5)年末調整で従業員から集める書類は何?(提出期限に注意)

年末調整では、扶養控除等申告書・基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書・保険料控除申告書などを従業員から集め、11月中を目安に回収します。 書類がそろわないと控除を反映できないため、人数の多い障害福祉事業所は回収の期間を長めにとりましょう。

書類主な役割添付
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書扶養控除・障害者控除などの申告
基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書基礎控除・配偶者(特別)控除の判定
給与所得者の保険料控除申告書生命保険料・地震保険料・社会保険料等の控除控除証明書

障害者控除は扶養控除等申告書の障害者欄に、生命保険料控除などは保険料控除申告書に記入し、控除証明書を添付してもらいます。処遇改善手当を含む給与の会計処理は、処遇改善加算の勘定科目と仕訳もあわせてご確認ください。申告書の様式は毎年見直されるため、その年分の最新様式を国税庁から入手しましょう。

事業者が年末調整でまず何からやればいい?

明日からの実務を、順番に整理します。

  1. 対象者を確定:扶養控除等申告書を出し年末まで在籍する職員(パート含む)をリスト化する。
  2. 書類を回収:扶養控除等申告書・基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書・保険料控除申告書と、中途入社の職員の前職源泉徴収票を11月中に集める。
  3. 手当の課税もれを点検:処遇改善手当・資格手当・深夜手当・賞与を給与総額に含める。
  4. 障害者控除・扶養控除を確認:本人やご家族が障害者・扶養に当てはまらないか申告内容を確認する。
  5. 精算と書類作成:年税額を計算して還付・徴収し、源泉徴収票・法定調書を作成する。

まとめ

  1. 処遇改善手当は非課税ではなく給与:処遇改善手当・各種手当・賞与はすべて給与総額に含めて精算します。
  2. 障害者控除の適用もれに注意:本人・配偶者・扶養親族が障害者なら、所得税で27万円・40万円・75万円の控除があります(住民税は別)。
  3. 扶養控除・配偶者控除は従業員の申告次第:家族の年齢・所得に応じた控除を申告書で確実に反映します。
  4. 中途入社は前職源泉徴収票、パートは壁に注意:前職分を合算し、税の壁と社会保険の壁を分けて案内します。
  5. 書類は11月中に回収:申告書と控除証明書を早めに集め、期限内に精算します。

判断に迷う点は、国税庁の資料や所轄税務署でご確認ください。

よくある質問(FAQ)

Q. 処遇改善手当は年末調整で非課税になりますか?

A. 処遇改善手当は非課税になりません。処遇改善加算を原資に職員へ支給する処遇改善手当は税法上の「給与」に当たり、他の手当や賞与と同じく所得税の課税対象として、給与総額に含めて年末調整で精算します。「加算」の名称から非課税と誤解しないよう注意が必要です。

Q. 従業員の家族に障害者がいる場合、障害者控除は年末調整でできますか?

A. 従業員の同一生計配偶者や扶養親族が所得税法上の障害者に当てはまる場合、障害者控除は年末調整で適用できます。従業員が「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の障害者欄に記入して申告すれば、事業所側で反映します。所得税の控除額は障害者27万円・特別障害者40万円・同居特別障害者75万円です(国税庁No.1160)。

Q. 中途入社した職員の年末調整はどうすればいいですか?

A. 中途入社した職員は、その年に前職で受け取った給与と自社の給与を合算して年末調整します。前職の源泉徴収票を必ず提出してもらってください。源泉徴収票が回収できない場合は自社で年末調整できないため、その職員は自分で確定申告を行うことになります。


参考資料


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Hands On会計事務所は、大阪府柏原市を拠点に、障害福祉事業者(就労継続支援A型・B型、放課後等デイサービス、児童発達支援、グループホームなど)を専門にサポートしている税理士事務所です。毎月の給与計算と源泉徴収、処遇改善手当・各種手当の給与への正しい反映、年末調整(障害者控除・扶養控除・配偶者控除の適用もれチェック)、源泉徴収票や法定調書の作成まで、現場を知る税理士が一気通貫でお手伝いします。支援員としての現場経験をもとに、専門用語をかみくだいてご説明しますので、税務が苦手な方もご安心ください。個別支援計画AIや予約管理システムといったITツールは顧問先に無償でご提供しており、事務負担の軽減にもつながります。柏原市・八尾市・東大阪市・藤井寺市・羽曳野市・松原市・大阪市・堺市をはじめ大阪府全域に対応し、初回相談は無料です。まずはお気軽にお問い合わせください。

お電話でも承ります:080-1439-1087(平日10:00〜18:00)


執筆・監修:税理士 栗谷川 雄介(登録番号 第157826号)/Hands On会計事務所(税理士事務所・大阪府柏原市)

障害福祉事業者(就労継続支援A型・B型、放課後等デイサービス、児童発達支援、グループホームなど)の税務・会計・加算を専門に支援する税理士事務所です。最終更新日:2026年7月6日

執筆者:税理士 栗谷川 雄介(登録番号 第157826号)/Hands On会計事務所

障害福祉に携わって通算10年。障害福祉を専門とする税理士法人で6年間、事業所の税務・会計を担当したのち、就労継続支援B型・生活介護の多機能型事業所に4年間勤務しました。目標工賃達成指導員として支援記録の整備・国保連への請求・実地指導対応・経理を担当し、見守り支援や利用者の送迎にも携わっています。2025年10月にHands On会計事務所を開業しました。

国保連への請求が現場でどう回っているのか、実地指導の当日までに何が起きるのか、経営者や職員がどう動いているのか——税務を担当していたときには見えなかったことを、内側から4年間経験しています。制度の解説だけでなく、現場で実際に何が起きているかを踏まえてお答えできるのが強みです。

大阪府柏原市を拠点に、就労継続支援・放課後等デイサービス・児童発達支援・グループホームの税務・会計・加算を専門に支援しています。大阪府全域対応/初回相談は無料です。障害福祉専門の税理士事務所についてご相談はこちら

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