障害福祉の助成金・補助金は税金がかかる?会計処理と消費税の扱いを税理士が解説

障害福祉の助成金・補助金は税金がかかる?会計処理と消費税の扱いを税理士が解説

「キャリアアップ助成金が振り込まれたけれど、これって税金がかかるの?」「補助金は返さなくていいお金だから、収入に入れなくていいと思っていた」——障害福祉事業を運営していると、こうしたご相談をよくいただきます。助成金・補助金は融資(借入金)と違って返済不要なぶん、税務上の扱いを勘違いしたまま決算を迎えてしまうケースが少なくありません。

この記事では、障害福祉事業がもらう助成金・補助金について、①法人税・所得税で課税されるのか ②いつ収入に計上するのか(計上時期)③勘定科目と仕訳 ④消費税の扱い(不課税と特定収入の調整)⑤処遇改善加算との違い——を、順を追って解説します。

結論を先にお伝えすると、助成金・補助金は「返さなくてよいお金」であっても、法人税・所得税では原則として課税対象(益金・収入)となり、消費税では不課税(対価性がないため)ですが、公共・公益法人等では特定収入に係る仕入税額控除の調整が必要になる場合があります。

目次

助成金・補助金とは?|返済不要で受け取る公的な資金

助成金・補助金とは、国や地方公共団体などが政策目的を実現するために、事業者へ交付する返済不要の公的資金です。 融資(借入金)が「後で返すお金=負債」であるのに対し、助成金・補助金は「返さなくてよいお金」である点が最大の違いです。

障害福祉事業者がよく利用する代表的な助成金には、厚生労働省が所管する次のようなものがあります。

名称主な目的(概要)所管
キャリアアップ助成金非正規職員の正社員化・処遇改善に取り組む事業主を助成厚生労働省
特定求職者雇用開発助成金障害者や高年齢者など就職困難者を継続雇用した事業主を助成厚生労働省
業務改善助成金設備投資等で生産性を上げつつ事業場内最低賃金を引き上げた中小企業を助成厚生労働省

※各助成金の要件・金額・コース内容は年度ごとに見直されます。実際の申請にあたっては、厚生労働省・大阪労働局の最新の案内で必ずご確認ください。「返さなくてよいお金」という点では融資(借入金)と似ていますが、借入金は負債で収入(益金)にならないのに対し、助成金・補助金は原則として収入(益金)に計上する点が決定的に異なります。

障害福祉事業がもらう助成金・補助金に税金はかかる?

障害福祉事業がもらう助成金・補助金は、法人税・所得税では原則として課税対象(益金・収入)です。 返済不要のお金であっても、事業に関連して受け取った経済的利益は益金(法人)または収入(個人)を構成するため、そのぶん所得(もうけ)が増え、法人税・所得税の課税対象になります。「補助金だから非課税」という理解は誤りです。たとえばキャリアアップ助成金50万円を受け取れば、対応する人件費などの経費と差し引きして所得を計算しますが、受け取った助成金はいったん収入に計上します。

一方、固定資産の取得・改良に充てるための国庫補助金等には、一定の要件と確定申告書への記載を条件に、補助金相当額を総収入金額に算入しない「圧縮記帳」という特例があります(国税庁 タックスアンサー No.2202)。これは課税の「免除」ではなく、資産の取得価額を補助金相当額だけ減らして課税のタイミングを将来へ繰り延べるしくみです。雇用関係の助成金(キャリアアップ助成金など)は経費補填の性格が強く、圧縮記帳になじまないのが一般的です。使えるかどうかは補助金の種類ごとに判断が分かれるため、最新の要綱と国税庁の資料でご確認ください。

助成金・補助金はいつ収入に計上する?|入金日ではありません

助成金・補助金は、原則として「交付決定通知を受けた日(支給額が具体的に確定した日)」の属する事業年度に収入計上します。実際に入金された日で計上するのではない点に注意が必要です。 申請から入金までは数か月かかることが多く、「申請した年度」「決定通知が届いた年度」「入金された年度」がずれることがあります。

たとえば3月決算の法人が3月に交付決定通知を受け取り、入金は翌期6月だった場合、原則として通知を受けた3月の属する事業年度(=当期)に収入計上します。入金が翌期だからと翌期の収入にしてしまうと、計上時期の誤りとして税務調査で指摘される可能性があります。

ただし、助成金の種類や交付要綱によって、「支給要件を満たした日」「支給額が確定した日」など計上時期の判断は個別に異なります。決算をまたぐ助成金があるときは、交付決定通知書の日付と入金予定を早めに確認しましょう。細かい取扱いは制度・通達で見直されることがあるため、最新の情報をご確認ください。

助成金・補助金の勘定科目と仕訳は?

助成金・補助金を受け取ったときの勘定科目は、本業の売上(給付費や生産活動収入)とは分けて「雑収入」で処理するのが一般的です。 本業の役務提供の対価ではないため、売上高に混ぜず、営業外収益の雑収入として区分しておくと、決算書上も助成金の内訳が把握しやすくなります。

仕訳のイメージは次のとおりです(金額は例)。

場面借方貸方
交付決定通知を受けた(入金前)未収入金 500,000雑収入 500,000
後日入金された普通預金 500,000未収入金 500,000
通知と入金が同時のとき普通預金 500,000雑収入 500,000

上の表のように、交付決定と入金の時期がずれるときは、いったん「未収入金」を立てて収入計上し、入金時に消し込みます。消費税の課税事業者の場合は、この雑収入をどの区分(不課税・特定収入)で経理するかも重要です。障害福祉事業の区分経理の考え方は、障害福祉事業の消費税申告のしかた(簡易課税・特定収入・区分経理)もあわせてご覧ください。

助成金・補助金に消費税はかかる?|不課税と特定収入の調整

助成金・補助金は、消費税では不課税です。 これは、助成金・補助金が「モノやサービスを提供した対価」ではなく、対価性のない資金の給付だからです。国税庁のタックスアンサー No.6157(課税の対象とならないもの(不課税)の具体例)でも、国または地方公共団体からの補助金や助成金等は「一般的に対価を得て行う取引ではない」ため課税対象にならないと示されています。

ただし、ここで終わらないのが消費税の難しいところです。社会福祉法人・NPO法人などの公共・公益法人等が、簡易課税制度を適用せず一般課税で申告する場合で、対価性のない収入(特定収入)の割合が5%を超えるときは、仕入税額控除の一部を減額する「特定収入に係る仕入控除税額の調整」が必要になります(国税庁 タックスアンサー No.6495)。助成金・補助金はこの「特定収入」に該当することが多く、調整を忘れると消費税の納税額を過少に計算してしまうおそれがあります。

一方、株式会社・合同会社といった一般の営利法人には、この特定収入の調整は原則として適用されません。また公共・公益法人等でも、簡易課税を選択している場合や特定収入割合が5%以下の場合は調整不要です。判断が難しい論点ですので、具体的な計算は一次資料と税理士でご確認ください。

処遇改善加算と助成金・補助金は何が違う?

処遇改善加算は障害福祉サービスの「報酬(給付費)の一部」であり、返済不要の公的資金である「助成金・補助金」とは税務上の性質が異なります。 名前が似ているため混同されがちですが、区別が必要です。

福祉・介護職員等処遇改善加算は、国保連から支払われる報酬(給付費)に上乗せされるものです。したがって消費税では報酬本体と同じく非課税として扱われるのが原則で、助成金・補助金のような「不課税・特定収入」とは経理区分が変わります。つまり同じ「もらえるお金」でも、報酬に上乗せされる処遇改善加算(非課税)と、雇用や設備投資に対して交付される助成金・補助金(不課税)とでは、消費税の区分も勘定科目の考え方も違うため、決算・申告では混ぜないことが大切です。令和6年6月に旧3加算が一本化された経緯や税務・社会保険での扱いは、処遇改善加算の一本化で何が変わった?で詳しく解説しています。

事業者が今やるべきことは?

助成金・補助金を受け取った(受け取る予定の)障害福祉事業者が、実務として押さえておきたいことを整理します。

  1. 交付決定通知書を保管する:計上時期の判断根拠になります。日付と金額を確認しておきましょう。
  2. 決算をまたぐ助成金を洗い出す:交付決定が今期、入金が翌期のものは、計上時期のずれに注意します。
  3. 助成金は「雑収入」で区分する:本業の売上と混ぜず、内訳がわかるように経理します。
  4. 消費税の課税方式を確認する:一般課税で申告する公共・公益法人等は、特定収入の調整が必要かをチェックします。
  5. 処遇改善加算と助成金を分けて考える:報酬(非課税)と助成金(不課税)は経理区分が違います。
  6. 実績報告と会計処理を一致させる:助成金の実績報告で提出した金額と、帳簿上の収入・経費がずれないようにします。

補助金申請とセットで事業計画を見直したい場合は、障害福祉事業所の経営改善計画書(融資・補助金申請)も参考になります。

まとめ

  1. 助成金・補助金は法人税・所得税で原則 課税対象(益金・収入):返済不要のお金でも、そのぶん所得が増えて課税されます。固定資産向けの国庫補助金等は圧縮記帳で繰り延べできる場合があります。
  2. 計上時期は交付決定を受けた事業年度が原則:入金日ではなく、支給額が確定した日を基準に考えます。決算をまたぐものは要注意です。
  3. 勘定科目は「雑収入」で本業の売上と区分:交付決定と入金がずれるときは未収入金を立てて収入計上します。
  4. 消費税は不課税、ただし特定収入の調整に注意:公共・公益法人等が一般課税で特定収入割合5%超のときは仕入税額控除の調整が必要です。
  5. 処遇改善加算と助成金は別物:加算は報酬の一部(非課税)、助成金は返済不要の公的資金(不課税)で、経理区分が異なります。

よくある質問(FAQ)

Q. キャリアアップ助成金は税金がかかりますか?

A. キャリアアップ助成金は、法人税・所得税では原則として課税対象(益金・収入)です。雇用や処遇改善に対して交付される助成金は、返済不要のお金であっても収入に計上する必要があり、そのぶん所得が増えて課税されます。消費税では不課税ですが、公共・公益法人等では特定収入の調整が必要になる場合があります。

Q. 補助金・助成金はいつ収入に計上しますか?

A. 補助金・助成金は、原則として交付決定通知を受けた日(支給額が具体的に確定した日)の属する事業年度に収入計上します。実際の入金日で計上するのではないため、交付決定が今期・入金が翌期という場合は、未収入金を立てて今期の収入とするのが基本です。助成金の種類により判断が分かれるため、最新の要綱と一次資料でご確認ください。

Q. 助成金・補助金に消費税はかかりますか?

A. 助成金・補助金は、消費税では不課税です。モノやサービスの提供の対価ではなく対価性がないため、消費税の課税対象になりません(国税庁 No.6157)。ただし、社会福祉法人・NPO法人などの公共・公益法人等が一般課税で申告し、特定収入割合が5%を超える場合は、仕入税額控除の調整が別途必要になります。

Q. 助成金・補助金の勘定科目は何を使いますか?

A. 助成金・補助金の勘定科目は、本業の給付費や生産活動収入とは分けて「雑収入」で処理するのが一般的です。営業外収益の雑収入として区分することで、決算書上も助成金の内訳を把握しやすくなります。交付決定と入金の時期がずれる場合は、いったん未収入金を計上してから入金時に消し込みます。

Q. 処遇改善加算と助成金は同じ扱いですか?

A. 処遇改善加算と助成金は同じ扱いではありません。福祉・介護職員等処遇改善加算は障害福祉サービスの報酬(給付費)の一部で、消費税は非課税として扱われるのが原則です。一方、キャリアアップ助成金などの助成金・補助金は返済不要の公的資金で、消費税は不課税です。経理区分が異なるため、決算では混同しないことが大切です。


参考資料


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Hands On会計事務所は、大阪府柏原市を拠点に、障害福祉事業者(就労継続支援A型・B型、放課後等デイサービス、児童発達支援、グループホームなど)を専門にサポートしている税理士事務所です。キャリアアップ助成金や特定求職者雇用開発助成金などの会計処理、交付決定と入金がずれる場合の収入計上時期、勘定科目(雑収入)と圧縮記帳の判断、消費税の不課税・特定収入に係る仕入税額控除の調整、助成金の実績報告と帳簿の整合まで、現場を知る税理士が一気通貫でお手伝いします。支援員としての現場経験をもとに、専門用語をかみくだいてご説明しますので、税務が苦手な方もご安心ください。個別支援計画AIや予約管理システムといったITツールは顧問先に無償でご提供しており、事務負担の軽減にもつながります。柏原市・八尾市・東大阪市・藤井寺市・羽曳野市・松原市・大阪市・堺市をはじめ大阪府全域に対応し、初回相談は無料です。まずはお気軽にお問い合わせください。


執筆・監修:税理士 栗谷川 雄介(登録番号 第157826号)/Hands On会計事務所(税理士事務所・大阪府柏原市)

障害福祉事業者(就労継続支援A型・B型、放課後等デイサービス、児童発達支援、グループホームなど)の税務・会計・加算を専門に支援する税理士事務所です。最終更新日:2026年7月6日

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