グループホームの家賃収入は法人税でどう計上する?|収益計上と補足給付の処理を税理士が解説
「グループホームの家賃は消費税が非課税だと聞いたけれど、法人税はかかるの?」「補足給付で入ってくる分は売上に入れるの?」——障害者グループホーム(共同生活援助)を運営されている方から、こうしたご相談をよくいただきます。この記事では、家賃収入の法人税の扱いと収益計上の実務に絞って整理します。結論として、家賃収入は消費税が非課税であっても、法人税では収益(益金)として計上します。消費税の非課税と法人税の課税は、まったく別の制度です。
なお、家賃・食材費・光熱費が消費税の非課税になるか課税になるかという課否判定そのものは、「障害者グループホームに消費税はかかる?|家賃・食材費・光熱費の非課税と課税判定」で詳しく解説しています。本記事は法人税と収益計上に絞ります。
グループホームの家賃収入は法人税でどう扱う?|非課税でも収益に計上する
グループホームが利用者から受け取る家賃は、消費税では「住宅の貸付け」として非課税ですが(国税庁 No.6226)、法人税では事業の収益=益金として計上します。 消費税の非課税と法人税の課税は、まったく別の制度だからです。
家賃収入や補足給付の計上方法に迷う場合は、障害福祉専門の税理士にご相談ください。初回無料相談はこちら
「非課税」という言葉は消費税の用語であり、「税金がかからない収入」という意味ではありません。消費税を上乗せして請求しない収入であっても、受け取った家賃は売上(事業収益)として損益計算書に計上し、対応する費用(家主に支払う家賃・光熱費・修繕費など)と差し引きして利益を計算します。
ここを取り違えて「非課税だから帳簿に載せなくてよい」と処理してしまうと、売上の計上漏れとなり、税務調査で指摘を受けます。グループホームの収入は、給付費・家賃・実費徴収分のすべてを帳簿に載せるのが出発点です。
家賃収入はいつ・いくらで収益計上する?|発生主義で入金とのズレを埋める
家賃収入は、実際にお金を受け取った月ではなく、その家賃が対応する月に収益計上します(発生主義)。 国保連から入る介護給付費が「サービスを提供した月」に計上され、入金が約2か月後になるのと同じ考え方です。
グループホームの収入は入金経路がばらばらになりがちで、月ズレが起きやすい部分です。次のように整理してください。
| 収入の種類 | 収益計上する月 | 入金の時期 |
|---|---|---|
| 介護給付費(共同生活援助の報酬) | サービスを提供した月 | 国保連から約2か月後 |
| 利用者から受け取る家賃 | その家賃が対応する月 | 当月または翌月(徴収方法による) |
| 補足給付(特定障害者特別給付費) | その家賃が対応する月 | 市町村・代理受領の方式による |
| 食材費・光熱水費などの実費徴収 | その費用が対応する月 | 当月または翌月 |
とくに注意したいのが、概算で受け取っている光熱水費です。概算額と実費の差額を後日精算する場合、差額が返金対象になるのであれば、それは収益ではなく預り金として管理します。「受け取ったお金=売上」と機械的に処理しないことが、決算での修正を減らすコツです。
株式会社と社会福祉法人・NPO法人で法人税の扱いはどう違う?
株式会社・合同会社などの営利法人は原則としてすべての所得が法人税の課税対象です。社会福祉法人・NPO法人などの公益法人等は、法人税法施行令が限定列挙する34の収益事業から生じた所得にのみ課税されますが、障害福祉サービスは原則として収益事業である「医療保健業」または「請負業」に該当するため、社会福祉法人以外の公益法人等(NPO法人など)には法人税の納税義務が生じるのが原則です。
| 運営主体 | 法人税の課税範囲 | 家賃収入の扱い |
|---|---|---|
| 株式会社・合同会社(営利法人) | すべての所得が課税対象 | 家賃収入も当然に益金に含める |
| 社会福祉法人 | 収益事業から生じた所得のみ課税。ただし社会福祉法人が行う医療保健業は収益事業から除かれる(法人税法施行令第5条第1項第29号ロ) | 共同生活援助と一体で行う家賃収入は、原則として課税対象外 |
| NPO法人など上記以外の公益法人等 | 収益事業から生じた所得のみ課税。障害福祉サービスは原則として「医療保健業」または「請負業」に該当し、収益事業となる | 共同生活援助と一体で行う家賃収入も、原則として課税対象 |
国税庁の質疑応答事例では、NPO法人が障害者総合支援法に規定する障害福祉サービスを行う場合、原則として法人税法上の収益事業(医療保健業または請負業)に該当し、法人税の納税義務があるとされています。「本来の目的たる事業かどうか」「非営利かどうか」で判定するものではない点に注意が必要です。ただし、(1)実費弁償方式により行われ、あらかじめそのことについて税務署長の確認を受けている場合(法人税基本通達15-1-28)、または(2)そのサービスに従事する者の半数以上が身体障害者等であり、かつそのサービスが身体障害者等の生活の保護に寄与している場合(法人税法施行令第5条第2項第2号)は、収益事業に含まれず、法人税の納税義務は生じません。
ただし、共同生活援助と切り離した独立の不動産賃貸(一般向けアパートの貸付け、駐車場の外部貸しなど)を行っている場合は、収益事業(不動産貸付業・駐車場業など)に該当する可能性があります。 法人形態と事業の位置づけによって判断が分かれるため、境界にあたる収入は個別に確認してください。
補足給付(特定障害者特別給付費)はどう処理する?
補足給付とは、グループホームを利用する生活保護世帯または低所得世帯の方の家賃負担を軽くするために市町村から支給される「特定障害者特別給付費」であり、家賃について利用者1人あたり月額1万円を上限に支給されます(厚生労働省)。 家賃が1万円未満なら実費、1万円以上なら1万円が上限となります。
会計処理で押さえるポイントは次の3つです。
- 事業者から見れば、最終的に受け取る家賃収入の一部です。利用者本人が受け取ってから事業者へ支払う形でも、事業者が代理受領する形でも、収益の性質は家賃収入です。
- 収益計上する月は、その補足給付が対応する家賃の月です。市町村からの入金が数か月遅れることがありますが、入金月に計上すると月ズレが生じます。
- 消費税の区分は家賃と同じく非課税収入として集計します。区分経理の際に「補足給付」を別の勘定に散らさないようにしてください。
上限額や対象範囲は市町村ごとに運用差があり、独自の上乗せ助成を行っている自治体もあります。必ずお住まいの市町村と厚生労働省の資料で最新の内容をご確認ください。
家賃・共益費・食費はなぜ区分経理が必要?
利用者から一括で徴収していても、家賃・共益費・食材費・光熱水費は帳簿上で分けて管理する必要があります。理由は、法人税の収益と預り金の区別、消費税の課税・非課税の区分、そして実地指導での実費徴収の説明という3つの目的が同時にかかっているためです。
| 目的 | 分けないと起きること |
|---|---|
| 法人税(収益計上) | 精算して返金すべき預り金を売上に含めてしまい、利益が過大になる |
| 消費税(課税・非課税の区分) | 課税事業者になった際に区分ができず、申告の集計をやり直すことになる |
| 実地指導(実費徴収の根拠) | 家賃と実費の内訳を説明できず、徴収根拠が不明確と指摘される |
実務上は、利用者への請求書の項目と、会計ソフトの勘定科目を1対1で対応させるのが最も確実です。請求書に「家賃」「共益費」「食材費」「光熱水費」「日用品費」と項目を分けて記載し、同じ区分で仕訳を切ります。
利用者からお金を預かって管理している場合の注意点は「グループホームの利用者預り金管理」で、消費税の課否判定の詳細は前述の「障害者グループホームに消費税はかかる?」で解説しています。
決算前に確認したい3つのポイント
グループホームの決算では、次の3点を確認してください。
- 家賃収入と補足給付が、対応する月に漏れなく計上されているか:入金月ベースで処理していないか、通帳と請求書の突合で確認します。
- 概算で受け取った光熱水費の精算が済んでいるか:返金すべき差額が売上に残っていないか、預り金残高を確認します。
- 家主に支払う家賃と、利用者から受け取る家賃の対応が取れているか:借上げ物件で空室が出ている場合、支払家賃だけが先行して費用計上されます。空室期間の損失を把握しておくと、次年度の収支計画に活かせます。
収益側だけでなく、費用側で決算に効いてくるのが夜勤・宿直の人件費です。宿直として処理していた勤務が実態は夜勤だったと判断されると、未払賃金の遡及払いが期をまたいで発生します。区分の考え方と割増賃金の計算はグループホームの給与計算|世話人・生活支援員の夜勤と宿直の違いをご覧ください。
決算全体のチェック項目は「障害福祉事業所の決算で税理士がチェックする5つのポイント」もご覧ください。法人形態による課税範囲の判断に迷う場合は、障害福祉に強い税理士にご相談ください。
まとめ
グループホームの家賃収入と法人税のポイントは、次の5点です。
- 家賃収入は消費税が非課税でも、法人税では収益(益金)に計上します。非課税は「帳簿に載せなくてよい」という意味ではありません。
- 収益計上は発生主義で行い、入金月ではなくその家賃が対応する月に計上します。
- 株式会社などの営利法人は全所得が課税対象、社会福祉法人は「社会福祉法人が行う医療保健業」が収益事業から除かれるため原則非課税ですが、NPO法人が行う障害福祉サービスは原則として収益事業にあたり課税対象です。
- 補足給付(特定障害者特別給付費)は月額1万円を上限とする家賃助成で、事業者から見れば家賃収入の一部として整理します。
- 家賃・共益費・食材費・光熱水費は区分経理が必須で、請求書の項目と勘定科目を対応させます。
法人形態や契約内容によって判断が変わる部分があります。境界にあたる収入がある場合は、決算を締める前にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q. グループホームの家賃収入に法人税はかかりますか?
A. 株式会社・合同会社などの営利法人が運営している場合は、家賃収入も含めてすべての所得が法人税の課税対象です。社会福祉法人の場合は、社会福祉法人が行う医療保健業が収益事業から除かれるため(法人税法施行令第5条第1項第29号ロ)、共同生活援助と一体で行う家賃収入は原則として課税されません。一方、NPO法人が行う障害福祉サービスは、国税庁の質疑応答事例により原則として収益事業に該当し、法人税の納税義務があります。
Q. 家賃収入は消費税が非課税なのに、なぜ法人税はかかるのですか?
A. 消費税の非課税と法人税の課税は別の制度だからです。消費税の非課税は「利用者に消費税を上乗せして請求しない」という意味であり、受け取った家賃が事業の収益であることに変わりはありません。法人税の計算では、家賃収入を益金に含めたうえで、対応する費用を差し引いて所得を計算します。
Q. 補足給付(家賃助成)はいくらもらえますか?
A. 生活保護世帯または低所得世帯の利用者を対象に、家賃について利用者1人あたり月額1万円を上限に支給されます。家賃が1万円未満なら実費、1万円以上なら1万円が上限です。自治体によって独自の上乗せ助成がある場合もあるため、市町村の案内でご確認ください。
Q. 補足給付は売上に計上するのですか?
A. 計上します。補足給付は事業者から見れば受け取る家賃収入の一部であり、その補足給付が対応する家賃の月に収益計上します。市町村からの入金が遅れても、入金月ではなく対応する月に計上してください。
Q. 家賃と食費をまとめて徴収していますが、分ける必要はありますか?
A. 分ける必要があります。法人税では返金すべき預り金と収益を区別するため、消費税では課税・非課税を区分するため、実地指導では実費徴収の根拠を示すために、それぞれ内訳が必要です。利用者への請求書の項目と会計ソフトの勘定科目を対応させて管理してください。
参考資料
- 国税庁|No.6226 住宅の貸付け
- 国税庁|質疑応答事例 NPO法人が障害者総合支援法に規定する障害福祉サービスを行う場合の法人税の納税義務について
- 厚生労働省|障害者の利用者負担(補足給付・特定障害者特別給付費)
- 厚生労働省|グループホーム・ケアホーム利用の際の家賃助成に係るQ&A(PDF)
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Hands On会計事務所は、大阪府柏原市を拠点に、障害福祉事業者(就労継続支援A型・B型、放課後等デイサービス、児童発達支援、グループホームなど)を専門にサポートしている税理士事務所です。家賃収入・補足給付の収益計上、家賃と実費徴収分の区分経理、預り金の管理、法人形態(株式会社・社会福祉法人・NPO法人)による課税範囲の整理、決算・申告まで、現場を知る税理士が一気通貫でお手伝いします。支援員としての現場経験をもとに、専門用語をかみくだいてご説明しますので、税務が苦手な方もご安心ください。個別支援計画AIや予約管理システムといったITツールは顧問先に無償でご提供しており、事務負担の軽減にもつながります。柏原市・八尾市・東大阪市・藤井寺市・羽曳野市・松原市・大阪市・堺市をはじめ大阪府全域に対応し、初回相談は無料です。まずはお気軽にお問い合わせください。
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執筆・監修:税理士 栗谷川 雄介(登録番号 第157826号)/Hands On会計事務所(税理士事務所・大阪府柏原市)
障害福祉事業者(就労継続支援A型・B型、放課後等デイサービス、児童発達支援、グループホームなど)の税務・会計・加算を専門に支援する税理士事務所です。最終更新日:2026年7月25日
