障害福祉事業所が銀行融資を受けるための財務改善ポイント
「新しい事業所を開きたいけど、銀行に融資を断られた」「運転資金を借りたいのに審査が通らない」——こうしたお悩みは、障害福祉事業の経営者様からよくいただくご相談のひとつです。
この記事では、銀行が融資審査で何を見ているのか、そして融資を受けやすくするために今から取り組める財務改善のポイントを、障害福祉事業専門の税理士がわかりやすくお伝えします。
銀行は決算書のどこを見ているのか
まず、銀行が融資審査で重視するポイントを押さえておきましょう。「何を改善すればいいか」は、「何を見られているか」を知ることで明確になります。
①営業利益が黒字かどうか
銀行が最も重視するのは「本業で利益が出ているかどうか」です。障害福祉事業であれば、訓練等給付費や介護給付費といった報酬から人件費・家賃などの経費を差し引いた営業利益がプラスかどうかが見られます。
補助金や助成金で一時的に黒字になっていても、営業利益が赤字であれば「本業の収益力が弱い」と判断されてしまいます。
②債務超過になっていないか
債務超過とは、負債の総額が資産の総額を上回っている状態です。簡単に言えば「いま会社をたたんでも借金が返せない」という状態のこと。この状態では融資のハードルが非常に高くなります。
③借入金の返済能力があるか
銀行は「貸したお金がちゃんと返ってくるか」を見ています。具体的には、年間の返済額が「税引後利益+減価償却費」の範囲に収まっているかがチェックされます。この範囲を超えていると「返済能力に不安がある」と判断されやすくなります。
今日からできる5つの財務改善ポイント
銀行の視点を理解したところで、具体的な改善策を見ていきましょう。
ポイント①:利用率を上げて売上を安定させる
障害福祉事業の売上の大部分は、利用者の通所日数や利用日数に連動します。定員に対する利用率が80%を下回っている場合は、まず利用率の改善が最優先です。
利用者の欠席が多い場合は、送迎サービスの見直しや就労系であれば仕事内容の充実、工賃の向上など、「通いたくなる魅力的な事業所づくり」を意識してみてください。利用率が安定すれば、売上の見通しが立ちやすくなり、銀行からの評価も上がります。
ポイント②:加算を漏れなく取得する
障害福祉サービスには多くの加算があります。福祉専門職配置等加算・目標工賃達成指導員加算・重度障害者支援など、要件を満たしているのに届出をしていないケースは少なくありません。
加算をしっかり取得することで売上が増え、利益率が改善します。「うちの事業所で取れる加算はすべて取れているか」を一度見直してみることをおすすめします。
ポイント③:人件費率を適正範囲に保つ
障害福祉事業は人件費の割合が高い業種です。一般的に売上に対する人件費率は60〜70%が目安とされています。
人件費率が75%を超えている場合は、シフトの最適化や常勤・非常勤のバランスの見直しを検討しましょう。もちろん、人員配置基準を下回ると指定取消のリスクがありますので、基準を守りながらの調整が大切です。
ポイント④:役員貸付金・仮払金を整理する
決算書に「役員貸付金」や「仮払金」が多額に計上されていると、銀行の印象は一気に悪くなります。「会社のお金を私的に使っているのでは?」と疑われてしまうからです。
心当たりがある場合は、役員報酬との相殺や計画的な返済によって、決算期までに残高を減らすようにしましょう。
ポイント⑤:試算表を毎月つくる習慣をつける
融資の申込時には、直近の試算表(月次決算書)を求められることがほとんどです。半年以上前の数字しか出せないと、「経営管理ができていない事業所」と見なされてしまいます。
毎月きちんと帳簿を締めて試算表を作成していれば、銀行に対して「数字をしっかり把握している経営者」という信頼感を与えられます。クラウド会計を活用すれば、日々の記帳も大幅に効率化できます。
融資を受ける前に準備しておきたい書類
実際に融資を申し込む際は、以下の書類が求められます。事前に準備しておくとスムーズです。
- 直近2〜3期分の決算書(税務申告書一式)
- 直近の試算表
- 資金繰り表(今後1年間の見通し)
- 事業計画書(新規開設の場合は必須)
- 障害福祉サービスの指定通知書
特に事業計画書は、利用者数の見込みや人員計画を具体的な数字で示すことが重要です。「なんとなく利用者が増える予定」ではなく、「○月までに定員の80%を目指し、売上は月○○万円を見込む」といった具体性が求められます。
確度の高い見込みの利用者や、支援学校やクリニックなど利用者紹介のルートが複数あるなら利用者獲得のための強いアピールポイントになります。
まとめ
障害福祉事業所が銀行融資を受けやすくするためには、「銀行が何を見ているか」を理解したうえで、日々の財務管理を改善していくことが大切です。
利用率の向上、加算の取得漏れチェック、人件費率の管理、不明瞭な勘定科目の整理、毎月の試算表作成——どれも特別なことではありませんが、コツコツ取り組むことで決算書の「見え方」は大きく変わります。
「うちの決算書で融資は通るだろうか?」と不安に感じたら、融資を申し込む前に一度、専門家に決算書を見てもらうことをおすすめします。
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