就労継続支援の送迎費用の経費計上|社用車の私的利用は役員給与になる?税理士が解説
「送迎車を理事長が休みの日にも使っているけれど、私用の分だけ按分して経費から外せばいいですよね?」——就労継続支援A型・B型の事業所からよくいただく質問です。ところがこの考え方には、そのままでは通用しない落とし穴があります。結論として、法人に「家事按分」という制度はなく、私的に使った部分は経費を減らすのではなく「経済的な利益=給与」として扱われます。この記事では、送迎費用の勘定科目、私的利用があるときの正しい手当て、職員のマイカー送迎、税務調査に耐える記録の残し方までを整理します。
就労継続支援の送迎費用はどんな勘定科目で経費にできる?
送迎費用は、ガソリン代・保険料・税金など費用の性質ごとに勘定科目を分けて経費計上します。次の表が代表例です。勘定科目に唯一の正解はありませんが、一度決めた科目は毎期そろえて使う(継続性)ことが大切です。
| 費用の種類 | 主な勘定科目 | 備考 |
|---|---|---|
| ガソリン代 | 車両費または燃料費 | レシート・給油明細を保管 |
| 高速道路代・有料道路 | 車両費または旅費交通費 | ETC明細も保管 |
| 駐車場代 | 車両費または旅費交通費 | 送迎先での一時駐車など |
| 車検・整備費用 | 車両費 | 車検時にまとめて計上可 |
| 自動車保険料 | 損害保険料 | 年払いは原則として期間配分(国税庁 No.5300関連) |
| 自動車税 | 租税公課 | 賦課決定のあった事業年度に計上(国税庁 No.5300) |
| 車両の減価償却費 | 減価償却費 | 固定資産として登録が必要 |
科目がバラバラだと月次の比較がしにくくなります。事業所内で入力ルールをそろえておきましょう。
送迎費用の勘定科目や社用車の私的利用の扱いに迷う場合は、障害福祉専門の税理士にご相談ください。初回無料相談はこちら
送迎車を役員や職員が私用に使ったらどうなる?
結論として、私的に使った部分は「経済的な利益」として給与に含まれます(法人税法第34条第4項、法人税基本通達9-2-9)。経費から按分して外す、という処理にはなりません。誰が使ったかで結果が変わります。
| 使った人 | 法人側(法人税) | 本人側(所得税) |
|---|---|---|
| 役員 | 毎月おおむね一定の額なら定期同額給与として損金算入。金額が毎月変動すると定期同額給与に該当せず損金不算入 | 給与所得として課税(法人に源泉徴収義務) |
| 一般の職員 | 給与として損金に算入できる | 現物給与として課税(同上) |
| 役員の親族などの特殊関係使用人 | 不相当に高額な部分は損金不算入 | 給与所得として課税 |
この取り扱いは国税庁タックスアンサー「No.5202 役員等に対する経済的利益」で明示されています。役員の私的利用を放置すると、法人は損金不算入で法人税が増え、本人は給与課税を受け、さらに源泉所得税の追徴と不納付加算税・延滞税まで生じるおそれがあります。経費が減るだけで済む個人事業の家事按分とは、リスクの重さがまったく違います。役員まわりの論点は障害福祉事業の役員報酬はいくらが正解?節税と社保の最適バランスもあわせてご覧ください。
私的利用があるときはどう手当てすればいい?
結論として、「業務専用にする」か「適正な使用料を本人から徴収する」かの二択が基本です。
- 業務専用にする:社内規程で私的利用を禁止し、運行記録で裏づけます。全額を損金にでき、給与課税も生じません。最もシンプルで、送迎車の大半はこの形にできます。
- 使用料を徴収する:車両管理規程を作り、私的利用分の使用料(走行距離単価など)を本人から徴収します。通達が経済的利益とするのは「無償又は低い対価」で使わせた場合の差額なので、適正額を徴収していれば給与課税は生じません(法人税基本通達9-2-9(8))。
走行距離の比率は、ここでいう「使用料」や「経済的利益の額」を計算するために使います。必要経費を按分するためではない、という点が個人事業との決定的な違いです。
職員のマイカーで送迎する場合はどう処理する?
結論として、業務走行にかかった実費を精算する分は給与課税されませんが、走行距離と無関係な定額手当は給与になります。
所得税法第9条第1項第4号は、給与所得者が勤務する場所を離れて職務を遂行するために旅行をした場合に支給される金品のうち「通常必要であると認められるもの」を非課税としています。送迎業務でのガソリン代・有料道路代を、運行記録に基づいて実費精算する形であれば、この範囲で処理できます。
一方、「送迎担当だから月1万円」といった定額の車両手当は実費弁償の性質がないため、給与として課税され、社会保険料の算定基礎にも入ります。マイカー送迎を行うなら、走行距離単価を定めた規程と運行記録をセットで整えてください。なお通勤に使う分は通勤手当(所得税法第9条第1項第5号)の話で、非課税限度額が別に定められています。
送迎車両を買った費用は一括で経費にできる?(減価償却)
結論から言うと、一定額以上の車両は買った年に全額を経費にはできず、法定耐用年数に応じて毎年少しずつ「減価償却費」として経費にしていきます。耐用年数は車種によって決まっており、新車・中古でも扱いが変わります。
耐用年数の目安や仕訳例、少額減価償却の特例との線引きは、障害福祉事業所の減価償却|送迎車両・設備の正しい会計処理で解説しています。
送迎加算をもらうと消費税はかかる?経費との関係は?
結論として、送迎加算は障害福祉サービスの給付費(訓練等給付費)の一部として国保連から支払われるため、消費税は非課税(非課税売上)です。課税売上ではありませんので、消費税の計算で混同しないよう注意してください(国税庁 No.6201「非課税となる取引」)。
送迎は「収入側(送迎加算)=非課税の報酬」「費用側(ガソリン代・車両費など)=経費」の二本立てで考えると整理できます。
なお送迎加算には片道ごとの加算や同一敷地内送迎の減算などがあり、単位数・要件はサービス種別や報酬改定で変わります。本記事では数値を断定しません。最新の単位数・要件は告示・通知でご確認ください。仕組みの全体像は放課後等デイサービスの送迎加算(令和6年改定)も参考になります(サービス種別が異なる点はご留意ください)。報酬と消費税の関係は障害福祉サービスの報酬は消費税非課税?で詳しく解説しています。
税務調査で送迎費用を否認されない3つの備え
否認や給与認定を防ぐポイントは、「証憑(レシート等)」と「使用記録」をセットで残すことです。次の3つを習慣化すると、経費の実在性と業務利用の事実をまとめて説明できます。
- 法人カード・ETCカードを送迎用に分ける:給油・高速の明細がそのまま証憑になり、私用との混在も避けられます。
- 走行記録(運行日報)をつける:日付・走行距離・行き先・運転者・業務/私用の区分がわかれば十分です。送迎の支援記録(乗降場所・時刻・利用者名)と兼ねれば加算の要件整備にも役立ちます。
- 車両管理規程を整える:私的利用の可否、使用料の計算方法、鍵の管理と持ち帰りのルールを文書化します。規程と記録がそろっていれば、給与認定の指摘に正面から反論できます。
手間に見えますが、役員が使う車がある事業所ほど効果が大きい備えです。記録と規程の有無で税務調査の結論が変わります。
まとめ
送迎費用は正しく処理すれば確実に損金になります。一方で、私的利用の扱いを個人事業と同じ感覚で考えると、思わぬ追徴につながります。
- 勘定科目は費用の性質ごとに分け、事業所内で統一して使う
- 就労継続支援は法人しか指定を受けられないため、「家事按分」は使えない(所得税法第45条・同施行令第96条は個人の規定)
- 送迎車の私的利用分は経済的な利益=給与になり、役員の場合は定期同額給与に該当しないと損金不算入(国税庁 No.5202)
- 対処は業務専用にする/適正な使用料を徴収するが基本。走行距離比は使用料や給与額の計算に使う
- 職員のマイカー送迎は実費精算なら非課税、定額手当なら給与課税(所得税法第9条第1項第4号)
役員が送迎車を使っている、マイカー送迎に手当を出している、といった事業所は一度整理をおすすめします。個別の事情で結論が変わりますので、迷ったときは早めに専門家へご相談ください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 送迎車の私用分は「家事按分」して経費から外せばよいのでは?
A. 家事按分は所得税(個人事業主)の制度で、条文の主語も「居住者」です。就労継続支援は法人でなければ指定を受けられないため使えません。法人では、私用分は経費の按分ではなく「経済的な利益=給与」として処理します。
Q. 理事長が送迎車を私用に使っています。どうなりますか?
A. 私的利用相当額が役員給与とみなされます。毎月おおむね一定なら定期同額給与として損金算入できますが、金額が変動すると損金不算入となり、本人にも給与所得として課税されます(国税庁 No.5202)。
Q. 給与課税されないようにする方法はありますか?
A. 社内規程で私的利用を禁止して業務専用にするか、私的利用分の使用料を本人から徴収する方法があります。適正な対価を徴収していれば、経済的な利益は生じません(法人税基本通達9-2-9(8))。
Q. 職員が自分の車で送迎した場合のガソリン代は課税されますか?
A. 運行記録に基づく実費精算であれば、通常必要と認められる範囲で非課税です(所得税法第9条第1項第4号)。走行距離と無関係な定額の車両手当は給与として課税されます。
Q. 自動車保険料を年払いしました。いつの経費になりますか?
A. 原則は期間に応じて配分します。ただし支払日から1年以内に役務提供を受ける前払費用を継続して支払時の損金としている場合は、その処理が認められます(法人税基本通達2-2-14の短期前払費用)。
参考資料
- 国税庁|No.5202 役員等に対する経済的利益
- 国税庁|法人税基本通達 第9章第2節第2款 経済的な利益の供与(9-2-9〜9-2-11)
- e-Gov法令検索|所得税法施行令 第96条(家事関連費)
- 国税庁|No.6201 非課税となる取引
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Hands On会計事務所は、大阪府柏原市を拠点に、障害福祉事業者(就労継続支援A型・B型、放課後等デイサービス、児童発達支援、グループホームなど)を専門にサポートしている税理士事務所です。ガソリン代・車両費・保険料の勘定科目の設計、送迎車を役員や職員が使う場合の車両管理規程と使用料の設定、マイカー送迎の実費精算ルール、車両の減価償却と中古車の耐用年数、送迎加算と会計処理の整合まで、現場を知る税理士が一気通貫でお手伝いします。支援員としての現場経験をもとに、専門用語をかみくだいてご説明しますので、税務が苦手な方もご安心ください。個別支援計画AIや予約管理システムといったITツールは顧問先に無償でご提供しており、事務負担の軽減にもつながります。柏原市・八尾市・東大阪市・藤井寺市・羽曳野市・松原市・大阪市・堺市をはじめ大阪府全域に対応し、初回相談は無料です。まずはお気軽にお問い合わせください。
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執筆・監修:税理士 栗谷川 雄介(登録番号 第157826号)/Hands On会計事務所(税理士事務所・大阪府柏原市)
障害福祉事業者(就労継続支援A型・B型、放課後等デイサービス、児童発達支援、グループホームなど)の税務・会計・加算を専門に支援する税理士事務所です。最終更新日:2026年7月30日
