令和8年度の障害福祉報酬改定(2026年6月施行)|処遇改善加算の変更点5つを税理士が解説
「令和8年度の報酬改定で、うちの事業所は結局何が変わったの?」——障害福祉事業所の経営者・管理者の方から、こうしたご相談をよくいただきます。この記事では、すでに施行済みの令和8年度報酬改定について、変更点を5つに整理して解説します。結論として、今回の改定は令和8年(2026年)6月1日に施行された臨時応急的な見直しで、柱は処遇改善加算の拡充です。加えて、就労継続支援B型の基本報酬区分の見直しと、新規指定事業所への応急的な報酬単価の特例が入っています。
令和8年度の障害福祉報酬改定とは?|2026年6月1日施行の臨時応急的な見直し
令和8年度障害福祉サービス等報酬改定とは、3年ごとの大きな報酬改定(次回は令和9年度)の中間年に行われた臨時応急的な見直しであり、令和8年6月1日に施行されました。 厚生労働省とこども家庭庁の障害福祉サービス等報酬改定検討チームが令和8年2月18日に改定事項を示し、その後に告示・Q&Aが公表されています。
サービス全体を一新する改定ではなく、「人材確保と賃上げ」への対応を中心とした見直しである点が特徴です。変更点は次の5つに整理できます。
| # | 変更点 | 概要 | 施行 |
|---|---|---|---|
| (1) | 処遇改善加算の対象拡大 | 対象を「福祉・介護職員」から障害福祉従事者全体へ拡大し、加算率を引き上げ。幅広く月1.0万円(3.3%)の賃上げを実現する措置 | 令和8年6月 |
| (2) | 上乗せ加算区分の新設 | 生産性向上・協働化に取り組む事業者向けに加算Ⅰロ・Ⅱロを新設。福祉・介護職員について月0.3万円(1.0%)の上乗せ | 令和8年6月 |
| (3) | 相談支援への新設 | 計画相談支援・障害児相談支援・地域相談支援に処遇改善加算を新設(加算率5.1%) | 令和8年6月 |
| (4) | 算定要件の見直し | キャリアパス要件Ⅳの改善後賃金年額が460万円に。職場環境等要件は加算Ⅰ・Ⅱで全体から14以上に | 令和8年6月 |
| (5) | 就労継続支援B型と新規指定事業所の報酬 | B型の基本報酬区分の基準額を3千円引上げ。就労継続支援B型・共同生活援助・児童発達支援・放課後等デイでは新規指定事業所に応急的な報酬単価を適用 | 令和8年6月 |
出典:厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について」(令和8年2月18日 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム)。最終的な単位数・加算率は告示で確定するため、自所への適用は厚生労働省・こども家庭庁・指定権者(大阪府、または柏原市・東大阪市など)の告示および通知で必ずご確認ください。
変更点(1)(2)|処遇改善加算の対象拡大と上乗せ区分の新設で何が変わった?
令和8年6月から、福祉・介護職員等処遇改善加算(以下、処遇改善加算)の対象が「福祉・介護職員」から障害福祉従事者全体へ拡大され、あわせて生産性向上・協働化に取り組む事業者向けの上乗せ区分「加算Ⅰロ・Ⅱロ」が新設されました。
厚生労働省の改定事項によれば、対象拡大により幅広く月1.0万円(3.3%)の賃上げを実現する措置が講じられ、生産性向上や協働化に取り組む事業者の福祉・介護職員にはさらに月0.3万円(1.0%)の上乗せが行われます。定期昇給分0.6万円を含めると、福祉・介護職員については最大で月1.9万円(6.3%)の賃上げが実現する措置とされています。
実務上とくに大きいのが対象職員の拡大です。看護職員・相談支援専門員・サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者など、これまで加算の原資を配りにくかった職種にも賃上げの原資を配分しやすくなりました。配分のルールには事業所の裁量がありますが、賃金規程と一体で設計し直す必要があります。 誰にいくら配るかの考え方は「処遇改善加算の配分方法」で解説しています。
なお、処遇改善加算そのものの仕組み(令和6年6月の3加算一本化と区分Ⅰ〜Ⅳ)は「処遇改善加算の一本化で何が変わった?」をご覧ください。
変更点(3)|相談支援にも処遇改善加算が新設された?
令和8年6月から、これまで処遇改善加算の対象外だった計画相談支援・障害児相談支援・地域相談支援(地域移行支援・地域定着支援)に、処遇改善加算が新設されました。加算率はいずれも5.1%です(厚生労働省 改定事項)。
新たに対象となるこれらのサービスは、加算Ⅳの取得に準ずる要件(キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱおよび職場環境等要件)、または後述の令和8年度特例要件により算定できるとされています。加算Ⅳに準ずる要件については、令和8年度中に対応することを誓約すれば算定を開始でき、実績報告書で対応の実施を確認するという取扱いが設けられています。
相談支援事業を併設している法人は、これまで加算の対象外だった相談支援専門員にも賃上げの原資が配分できるようになります。併設事業所がある場合は、事業所ごとに計画書の作成と提出が必要になる点に注意してください。
変更点(4)|算定要件(年収460万円・職場環境等要件)はどう変わった?
令和8年度の改定で、キャリアパス要件Ⅳの基準が「改善後賃金年額460万円」に引き上げられました。 厚生労働省の改定事項では、加算Ⅰ・Ⅱの算定要件として「改善後賃金年額460万円(キャリアパス要件Ⅳ)」と記載されています。令和6年度改定時の440万円から引き上げられている点は、実務上とくに見落としやすいポイントです。
区分ごとの算定要件を整理すると次のようになります。
| 要件 | 加算Ⅳ | 加算Ⅲ | 加算Ⅱ | 加算Ⅰ |
|---|---|---|---|---|
| 賃金体系等の整備・研修の実施等(キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱ)/加算Ⅳ相当額の2分の1以上を月額賃金で配分 | 必要 | 必要 | 必要 | 必要 |
| 昇給の仕組み(キャリアパス要件Ⅲ) | — | 必要 | 必要 | 必要 |
| 改善後賃金年額460万円(キャリアパス要件Ⅳ) | — | — | 必要(※) | 必要(※) |
| 経験・技能のある介護職員(キャリアパス要件Ⅴ) | — | — | — | 必要 |
| 職場環境等要件 | 区分ごとに1つ以上(生産性向上は2つ以上)+全体から8以上 | 同左 | 区分ごとに2つ以上(生産性向上は3つ以上)+全体から14以上 | 同左 |
※加算Ⅰ・Ⅱでは、職場環境等要件の「全体から14以上」またはキャリアパス要件Ⅳのいずれかを満たしていればよいとされています。また、加算Ⅰ・Ⅱの職場環境等要件では、生産性向上の区分で選ぶ3つ以上の取組のうち「現場の課題の見える化」は必須とされています。
さらに、令和8年度に限った経過的な取扱いとして「令和8年度特例要件」が設けられています。内容は、(ア)職場環境等要件の生産性向上に関する取組を5つ以上行うこと(うち「現場の課題の見える化」と「業務支援ソフト・情報端末の導入」は必須)、または(イ)社会福祉連携推進法人に所属していること、のいずれかを満たし、あわせて(ウ)加算Ⅱロ相当の加算額の2分の1以上を月給賃金で配分すること、とされています。
これらの要件の多くは「令和8年度中に対応することの誓約」でも算定可能とされていますが、実績報告書で対応の実施が確認され、未対応が判明した場合には加算額の一部または全部を返還させることとされています。 誓約して算定を開始した事業所は、年度内に確実に要件を整備してください。3要件の全体像は「処遇改善加算の3要件をクリアするには?」で解説しています。
変更点(5)|就労継続支援B型と新規指定事業所の報酬はどうなった?
令和8年6月から、就労継続支援B型の基本報酬区分の基準額がそれぞれ3千円引き上げられました。また、就労継続支援B型・共同生活援助(介護サービス包括型・日中サービス支援型)・児童発達支援・放課後等デイサービスでは、令和8年6月1日以降に新規指定された事業所に限り、基本報酬に応急的な報酬単価が適用されます。
就労継続支援B型の基本報酬区分の見直しは、平均工賃月額の算定方式が令和6年度改定で変わったことにより平均工賃月額が約6千円上昇し、想定以上に高い報酬区分の事業所が増えたことへの対応です。基準額の引上げ幅は上昇幅の2分の1にあたる3千円に留められ、次の配慮措置が講じられています。
- 令和6年度改定の前後で区分が上がっていない事業所は、見直しの適用対象外
- 今回の見直しで区分が下がる事業所は、基本報酬の減少額が3%程度に収まるよう中間的な区分を新設
- 令和6年度改定で単価を引き下げた区分の一部は据え置き
応急的な報酬単価の特例は、収支差率が高く事業所数が急増しているサービスについて、制度の持続可能性を確保する観点から、新規事業所に限り、令和9年度報酬改定までの間、一定程度引き下げた基本報酬を適用するものです。
| 対象サービス | 応急的な報酬単価 |
|---|---|
| 就労継続支援B型 | 所定単位数の1000分の984 |
| 共同生活援助(介護サービス包括型・日中サービス支援型) | 所定単位数の1000分の972 |
| 児童発達支援 | 所定単位数の1000分の988 |
| 放課後等デイサービス | 所定単位数の1000分の982 |
対象は令和8年6月1日以降に新規指定された事業所のみで、既存事業所は従前どおりです。 合併・分割・事業譲渡に伴う指定で、その前後に事業所が実質的に継続して運営されると認められる場合は、既存事業所と同様に扱われます。また、重症心身障害児を主として通わせる事業所の基本報酬や医療的ケア区分に係る基本報酬、離島・中山間地域の事業所などには従前の単価が適用される配慮措置があります。
これから新規開設を検討している方は、収支計画を作る段階でこの特例を織り込んでください。
放課後等デイサービス・児童発達支援への影響は?
放課後等デイサービス・児童発達支援も、令和8年6月施行の処遇改善加算の見直しの対象です。児童発達支援管理責任者や指導員など、現場を支える職員の賃上げにつながる原資が拡大しました。 厚生労働省の改定事項に示された加算率(令和8年6月から)は次のとおりです。
| サービス区分 | 加算Ⅰイ | 加算Ⅰロ | 加算Ⅱイ | 加算Ⅱロ | 加算Ⅲ | 加算Ⅳ |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 放課後等デイサービス | 15.5% | 16.1% | 15.2% | 15.8% | 14.2% | 11.9% |
| 児童発達支援 | 15.2% | 15.8% | 14.9% | 15.5% | 13.9% | 11.7% |
| 就労継続支援A型 | 10.8% | 11.2% | 10.6% | 11.0% | 9.1% | 7.5% |
| 就労継続支援B型 | 10.5% | 10.9% | 10.3% | 10.7% | 8.8% | 7.4% |
| 生活介護 | 9.3% | 9.7% | 9.2% | 9.6% | 7.9% | 6.7% |
| 共同生活援助(介護サービス包括型・日中サービス支援型) | 16.3% | 16.9% | 16.0% | 16.6% | 14.4% | 12.1% |
| 計画相談支援・障害児相談支援・地域相談支援(新設) | 5.1% | 5.1% | 5.1% | 5.1% | 5.1% | 5.1% |
※共同生活援助(外部サービス利用型)は上表とは別区分で、加算Ⅰイ22.7%・Ⅰロ23.3%・Ⅱイ22.4%・Ⅱロ23.0%・Ⅲ20.8%・Ⅳ16.8%です。
加算率は、処遇改善加算を除く加減算後の総報酬単位数に乗じて計算します。加算率はサービスごとの常勤換算職員数に基づいて設定されているため、上表は改定事項に示された区分ごとの率です。自所に適用される正確な数値は、必ずこども家庭庁・厚生労働省の告示および指定権者の通知でご確認ください。 誤った加算率で請求すると、後の実地指導で返還を求められるリスクがあります。
事業者が今やるべき準備は?
施行済みの改定であるため、まだ対応していない事業所は次の順番で進めてください。
- 処遇改善計画書を作り直して提出する:拡大された対象職員(看護職員・相談支援専門員・サービス管理責任者など)を踏まえ、配分計画を組み直します。相談支援事業を併設している場合は、その事業所分も作成します。
- 算定する加算区分を決める:加算Ⅰロ・Ⅱロを狙うなら、生産性向上・協働化の取組が要件を満たせるかを確認します。令和8年度特例要件で誓約により算定を開始する場合は、年度内に必ず実施してください。
- 賃金規程・就業規則との整合を確認する:加算の配分実態と規程の文言が食い違っていないかを点検します。
- 会計処理を区分する:加算収入と賃金支出の対応関係が帳簿上で追えるようにします。仕訳の考え方は「処遇改善加算の勘定科目と仕訳」をご覧ください。
- 職員へ手取りへの影響を説明する:手当が増えても、社会保険料と所得税でおよそ2割が引かれます。「処遇改善手当から税金はいくら引かれる?」の早見表をそのまま説明資料に使えます。
処遇改善加算は「受け取った額をきちんと賃金に充てたか」を後から確認される加算です。会計上、加算収入と人件費の対応関係を明確にしておくことが、実績報告と実地指導の両方への備えになります。加算と会計をまとめて相談したい場合は、障害福祉に強い税理士にご相談ください。
まとめ
令和8年度の障害福祉報酬改定のポイントは、次の5点です。
- 令和8年(2026年)6月1日に施行済みの、中間年の臨時応急的な見直しです。
- 処遇改善加算の対象が障害福祉従事者全体へ拡大し、幅広く月1.0万円(3.3%)の賃上げを実現する措置が講じられました。
- 生産性向上・協働化に取り組む事業者向けに加算Ⅰロ・Ⅱロを新設し、計画相談支援・障害児相談支援・地域相談支援にも加算率5.1%で新設されました。
- キャリアパス要件Ⅳの改善後賃金年額は460万円に引き上げられ、職場環境等要件は加算Ⅰ・Ⅱで全体から14以上となりました。令和8年度特例要件は誓約でも算定可能ですが、未対応なら返還の対象です。
- 就労継続支援B型の基本報酬区分の基準額を3千円引上げ、就労継続支援B型・共同生活援助・児童発達支援・放課後等デイでは令和8年6月1日以降の新規指定事業所に応急的な報酬単価が適用されます。
加算率・単位数・要件はYMYL(お金と制度)の論点です。最終的な判断は、厚生労働省・こども家庭庁・指定権者の公的資料を基準にしてください。
よくある質問(FAQ)
Q. 令和8年度の障害福祉報酬改定はいつから施行されましたか?
A. 令和8年(2026年)6月1日に施行されました。3年ごとの大きな改定(次回は令和9年度)とは別に、中間の年に処遇改善加算などを見直した臨時応急的な改定です。就労移行支援体制加算の見直しのみ令和8年4月施行とされています。
Q. 令和8年度の改定で処遇改善加算は何が変わりましたか?
A. 主な変更は3点です。対象を「福祉・介護職員」から障害福祉従事者全体へ拡大して加算率を引き上げたこと、生産性向上・協働化に取り組む事業者向けに加算Ⅰロ・Ⅱロを新設したこと、計画相談支援・障害児相談支援・地域相談支援に処遇改善加算を新設したこと(加算率5.1%)です。
Q. キャリアパス要件Ⅳの年収基準はいくらですか?
A. 令和8年度の改定により、改善後賃金年額460万円に引き上げられました。令和6年度改定時の440万円から変更されている点にご注意ください。なお加算Ⅰ・Ⅱでは、職場環境等要件を全体から14以上満たすことでも代替できるとされています。
Q. 放課後等デイサービスの処遇改善加算の加算率は何%ですか?
A. 厚生労働省の改定事項によれば、令和8年6月からの放課後等デイサービスの加算率は、加算Ⅰイ15.5%、加算Ⅰロ16.1%、加算Ⅱイ15.2%、加算Ⅱロ15.8%、加算Ⅲ14.2%、加算Ⅳ11.9%です。加算率は処遇改善加算を除く加減算後の総報酬単位数に乗じます。自所への適用はこども家庭庁・指定権者の告示でご確認ください。
Q. 令和8年6月以降に新規開設すると報酬が下がるのですか?
A. 就労継続支援B型・共同生活援助(介護サービス包括型・日中サービス支援型)・児童発達支援・放課後等デイサービスの4サービスについては、令和8年6月1日以降に新規指定された事業所に限り、令和9年度報酬改定までの間、基本報酬に応急的な報酬単価(就労継続支援B型は所定単位数の1000分の984、放課後等デイサービスは1000分の982など)が適用されます。既存事業所は従前どおりです。
参考資料
- 厚生労働省|令和8年度障害福祉サービス等報酬改定について
- 厚生労働省|令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について(PDF)
- こども家庭庁|令和8年度障害福祉サービス等報酬改定について
- 厚生労働省|福祉・介護職員の処遇改善
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執筆・監修:税理士 栗谷川 雄介(登録番号 第157826号)/Hands On会計事務所(税理士事務所・大阪府柏原市)
障害福祉事業者(就労継続支援A型・B型、放課後等デイサービス、児童発達支援、グループホームなど)の税務・会計・加算を専門に支援する税理士事務所です。最終更新日:2026年7月25日
